[OH FREEDOM]
そんな響きが似合うNEW LIFEが欲しいと願い
憂うばかりのマイウェイ 混沌と迷いが渦を巻く
繰り返し叩き続ける扉
開くまでどのくらい?
あとどのくらい?
出典: HOWL/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
いよいよ主題が登場しました。
誰しもが自由であることを願っているのですが、道は容易には拓けません。
自分の暮らしを変えることくらいしか、私たちにできることはないです。
しかしそれだけで本当に自由になれるかというと難しい問題になります。
何かしらの社会変革が伴わないと本当の自由など手に入れられないからです。
新生活、新しい人生、そうした個人の努力で手に入れられるものだけで自由になるのは難しいでしょう。
主人公も散々に足掻き続けています。
しかしドアを叩いてみても開いてはくれません。
開くまでどのくらい?
あとどのくらい?
出典: HOWL/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
桜井和寿の巻き舌で歌われるこの箇所は「Don’t Cry」と聴こえます。
ドアが開くまでどのくらい掛かるかわからないけれど、泣きわめくなというダブル・ミーニングです。
弱音を吐いてはいますが泣きわめいても事態はよくなりません。
理不尽なことへの怒り
風に吹かれてみよう
プライドと格闘した日々なんて今では縁遠いが
年2、3回制御不能の怒りに震えるよ
日曜、何の用意もなくただバイクを走らすよ
頭に浮かぶ良し悪しごとを風が振り払うまで
出典: HOWL/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
職場の上下関係に気遣いして頭を下げる毎日が続きます。
頭を下げることへの抵抗感を私たちは社会人になるときに捨て去りました。
それは大事なプライドであったはずですが、自尊心でご飯は食べられないのです。
こうした不条理を甘んじて受け入れて日々を暮らしています。
しかし、主人公は半年に1回くらい、自分でも抑えられない感情の発露に見舞われるのです。
突き上がってくる感情の正体はもっぱら怒りだといいます。
人間が一番コントロールに困る感情はおそらく悲しみと怒りのどちらかでしょう。
怒りを感じられるということは、まだ自分自身が人間として感情が鈍麻していない証拠です。
こころが健康であるから理不尽なことに関しては怒りが湧くのでしょう。
そんな日は何も準備することなく趣味に打ち込んでみると歌います。
主人公にとってその趣味とはバイクでのツーリング。
頭を冷やすかのように風に吹かれてみる。
やがて様々な雑念が身から剥がれ落ちてゆくのを感じられる。
アルコールに依存するよりは、よほど健康的な習慣ですので少し安心します。
自分を肯定する力
過去の夢が褪せても
輝いて見えたモノはガラス玉だったとある日
気付いたとしたって宝物には変わりない
違いない
出典: HOWL/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
美しいラインです。
こうした言葉があるからこそMr.Childrenは力強く支持されるのだと改めて思います。
夢を追い続けてみたものの、手にしてみると小さなものであったこと。
生きて、成長してゆく限り、幼い日の憧憬がやがて陳腐化するのは仕方がないことです。
それでも一度は夢見たものなのですから、心の奥に大切に仕舞っておきたい。
自由を望んで生きてきたこれまでの生涯も、叶わない夢を追い続けてきた日々の積み重ねです。
そうした日々が無意味だったと誰がいうでしょうか。
他人にとってはささいな人生でも、当人にとっては代えがたい自分の生涯です。
生活や生涯の優劣というものは成功だけがものさしではないはず。
自分の価値観を大切に守り抜いた先に「生き抜く」という使命があるのです。
人生の過程で獲たものは大事にしましょう。
自分自身を肯定する力になります。
主人公が覚醒する!
虚飾の自由に満足しない
みんな「フリ」して
分かってて気付かぬ「フリ」して暮らしてんじゃないの!?
夢見なくちゃつまんねぇ 淡々と死んでいきたくはない
振り返りながらも目指す未来
少し痛いとしてもダイブ!
そしてバタフライ
出典: HOWL/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
社会の中で私たちは虚飾の自由を享受しています。
誰もが生活の息苦しさに気付いているのに、自覚がないふりをして楽しそうに暮らすのです。
しかし自分の心は騙せません。
偽りを演じきることに疲れ切ってしまうときが訪れます。
ストレスの正体は無理して生きていることの歪みです。
これは望んでいる自由ではないなと思いながらあっぷあっぷしている毎日。
桜井和寿はそうした偽りをよしとしません。
私たちが抱えた夢というものは、私たち自身の生活や人生の指針や羅針盤にすべきものでしょう。
人間にとってこれがなければ生きていけないもの。
それは夢や希望というものです。
希望なき人生なんて考えられません。
がむしゃらに夢を追うのではなく、ときに自分のこれまでの軌跡を振り返りながら未来へ。
夢を追うことには代償があるでしょうが、自分が信じた道を突き進みたい。
アルコールに依存していた主人公は後半になって目を醒ますのです。
「バタアシ金魚」のように前へ前へ。
全身を使っての水面上での跳躍。
来世にチャンスを遺すことを考えるよりも、今の人生をいかに豊かに生きるかを考えたほうがいい。
熱情が高まる歌詞になっています。
ロック・ミュージックの力がここに結晶しているのです。