私立恵比寿中学の「ジャンプ」を解説
若手バンドの起用が多くみられる今回のアルバムから「ジャンプ」をピックアップしてみます。
本楽曲は菅田将暉の「さよならエレジー」を手がけた石崎ひゅーいが担当しました。
アコースティックギターを力強くかき鳴らすイメージが強い彼の曲は誰が歌ってもパワフルな印象になるのが特徴です。
ポップな印象が強い私立恵比寿中学がさまざまな色に染まっている今回のアルバム。
ですが、ジャンプではしっかりとひゅーい色に染まっています。
石崎ひゅーいと私立恵比寿中学、どちらにも違ったパワフルさがあり、パワフル対決となっている1曲です。
早速1番から歌詞をみていきましょう。
希望と退屈が交差する1番
中学生を意識したあどけなさ
世界は楽しいってさ 真っ暗闇じゃなってさ
どんな未来がみえるか わめき散らしてジャンプしよう
新しい時代の風が僕たちを呼んでいるんだ
桜吹雪が燃えている あと何度告白できる?
出典: ジャンプ/作詞:石崎ひゅーい 作曲:石崎ひゅーい
「〜だってさ」を使用して自分も当事者なのに、SNSやウワサ話のような人ごと感がうかがえます。
友達から「へーそうなんだ」というようなあまり興味がなさそうな返事が返ってきそうな世間話のよう。
2行目の歌詞の中には、女子中学生や女子高生特有のキャッキャしたあどけなさを感じます。
それと同時にそんな未来のことよりも今を楽しみたい!という刹那的なものを感じませんか。
中学生の頃思い描いていた大人になれているかと聞かれると、どうかわかりませんね。
どんなに細かく思い描いていても未来は良くも悪くも変わっていくもの。
全くの想像通りだった、という方も中にはいるかもしれませんが大体はずれてしまうのです。
どんなに思い描いても思い通りにならないのなら、精一杯今を楽しんではしゃいでおこう。
そんな意味がみえてきます。
希望に満ち溢れている若者たち
3行目の出だしは新元号に変わったこともあり、たくさんの曲の中で使われてきた言葉ですね。
ゆとり世代、さとり世代、ときて次は何世代が来るのか楽しみです。
ここで初めて「僕たち」という人物が出てきましたね。
てっきり女子中学生や女子高生だと思っていましたが、男子中学生でしょうか。
中学・高校時代は男女問わずキャッキャしていているもの。
確かに、男子の方が「わめく」という表現がしっくりきます。
ここからは男子学生の言葉だと考えてみていきましょう。
同じような悩みを持つであろう同世代の男子たちの声を代弁したように聞こえます。
4行目では新学期を連想させ、新たな始まりの区切りを表現しているようです。
最後のフレーズは、残り僅かな学生生活であることと、主人公には思いを寄せる相手がいるような表現です。
まだまだ希望に満ちている、刹那的で若さがみえてきます。
将来を考えはじめたら少し切なくなった
頬杖ついてため息まじりの胡座をかいた東京の夜空
期待通りで思い通りの人生じゃつまらない
非常階段を登ったらビルの屋上には一番星 手を伸ばしたら届きそうでさ
出典: ジャンプ/作詞:石崎ひゅーい 作曲:石崎ひゅーい
どんな進路に進むのか、両親と話し合ったあとでしょうか。
特に学生の頃は「レールの敷かれた人生を歩むのはうんざりだ」と反抗したくなるものです。
この「僕」もレールのある人生なんか歩みたくないと思っている少年なのでしょうか。
2行目から、まっさらな道をゆくタイプの人間ではなさそうなことが分かりますね。
毎日毎日将来の話をされ、うんざりしているのかもしれません。
気晴らしに向かった屋上でふと空を見上げてみると、そこにはキラキラ輝く星が。
掴めそうなほどはっきりと輝くその星を、うらやましいとさえ思ったのかもしれません。
実は自分が進みたいと思う夢があっても、頭ごなしに否定され続けているのかもしれませんね。
1人になれる場所が秘密基地や公園などではないことから、「僕」は幼い子供ではないのが分かります。
本当に伝えたいのは誰?
だから愛を込めて 鳴らすよ 鳴らすよ
本当に大切なことなんか つきとめたりはしないで
がむしゃらに愛を込めて 鳴らすよ 鳴らすよ
馬鹿にしてくれたっていいぜ あなたが笑ってくれるなら
もう一度愛を込めて wow もう一度愛を込めて wow
出典: ジャンプ/作詞:石崎ひゅーい 作曲:石崎ひゅーい
こちらがサビの歌詞になりますが、Aメロ、Bメロとは違い男らしさが増したようです。
ここで改めて主人公は「僕」であり、「僕」は男性なのだと分かります。
愛を込めたい相手はAメロで出てきた告白したい相手ですが、ここでも相手はいないと解釈できそうです。
愛を込めたい相手、「馬鹿にしてくれたっていい」相手、共に自分自身と捉えることもできます。
3行目の「あなた」は未来の自分であるとするならどうでしょう。
今現在の自分の努力を馬鹿だったなあと振り返っても構わない、そんな想いではないでしょうか。
無駄だったと後悔してもいいから将来笑っていたいという願望がみえてきます。
泣いていたり辛い思いをするために今の行動をするのではありません。
未来の自分に笑っていてほしいから辛くても努力をするのです。
1行目は「間違っているかもしれないなんて思わずにがむしゃらに人生を歩んでほしい」という意味に感じます。
つまりこれは未来の自分へのエールであると解釈できるのです。
人ごとのように話していたAメロでの「僕」、Bメロでは将来を悩む「僕」でした。
しかしサビで何かが吹っ切れたようにやってやるぞ! というような気持ちになった「僕」。
1番の中でかなり成長がみられました。
とにかく今はがむしゃらにジャンプ! そんな決意が感じ取れます。