そして主人公が「誰にも言えない」と悩んでいることは、斎藤の気持ちで表せば「本当はもっと違う音楽がやりたい」といったところでしょう。
しかしデビューしたばかりの新人が周りの大人にそれを言ったとして通じるわけがありません。
従うしかないとわかっているから、不満をもらしても意味がないこともわかっている。
しかし自分の中にその苛立ちはフツフツと煮えたぎっている。
まさに「どうすりゃいいの?」と言いたくなるような状況ですね。
雲の表現もひょっとすると「雲はあんなに自由に泳いでいるのに、自分は縛られている」という気持ちの表れなのでしょうか。
売れることは理想ではない
急ぐ人にあやつられ 右も左も同じ顔
寄り道なんかしてたら 置いてかれるよ すぐに
出典: 歩いて帰ろう/作詞:斉藤和義 作曲:斉藤和義
「急ぐ人」というのは、ここで言うなら早くヒットさせなければと急ぐ大人たちのことでしょう。
そんな大人たちの意向に従った音楽は、流行りしか意識していない似たり寄ったりの曲ばかり。
自分にはもっとやりたい音楽があるのに、こんなところで寄り道をしていたら、いつまでたっても理想には辿り着けない。
そんな想いが表現されているように感じます。
メジャーデビューするということはそれだけでもすごいことですが、そこも通過点だと捉えていた斎藤も彷彿とさせますね。
当時から高い理想を描いていたから、今の人気にも繋がっているのでしょう。
アーティストにとっては永遠の課題?
嘘でごまかして 過ごしてしまえば
たのみもしないのに 同じ様な朝が来る
出典: 歩いて帰ろう/作詞:斉藤和義 作曲:斉藤和義
本当はやりたくないジャンルでも、デビューしたての新人では納得しているように見せてやるしかない。
逆に言えばそういう風にしていれば、大人たちがいかようにもしてくれる…といったところでしょうか。
しかしそんなことは頼んでもないし、それで売れたとして面白くもない。
そんな気持ちが表されているように映ります。
アーティストとしては、売れることは何より大切なこと。
それは自分の楽曲が評価されているのと同義だからです。
しかし自分のやりたくない音楽で売れても面白くないのだとしたら、売れなくてもいいと考えるのか、それとも仕事と割り切るのか。
こういうことってアーティストにとって、きっと永遠の課題なのでしょうね。
歌われていたのは1人の時間の大切さ
走る街を見下ろして のんびり雲が泳いでく
だから歩いて帰ろう 今日は歩いて帰ろう
出典: 歩いて帰ろう/作詞:斉藤和義 作曲:斉藤和義
タイトルになっている「歩いて帰ろう」という言葉がここで登場しますね。
主人公が歩いて帰ろうと思ったのは、きっと物思いにふける時間を作るためです。
納得がいかないとイライラしていたことでも、自分1人で考えて気持ちの整理がつくということはあります。
誰にも言えないから、1人で気持ちを整理しなければいけない。
そして気持ちの整理をつけるためには、1人で考える時間が必要です。
だから主人公は歩いて帰ることにしたのですね。
景色を見ながら歩いて帰れば気分も変わる!
以降は同じような内容の歌詞が繰り返されます。
要はこの曲は1人の時間の大切さを歌った曲なのですね。
歩いて帰ることはその一例。1人の時間の作り方は人それぞれにあって然りでしょう。
しかし身体を動かすことは、部屋でじっとしているより脳の活性化に繋がるということもあります。
そう考えるとわざわざ運動に出るわけではなく、家路につく次いででできる「歩いて帰ること」というのは効率的ですね。
景色を見ながら歩いていればまた、気分も変わってくるというものです。
歌詞にも不満がしたためられていたように、ストレス発散にも運動がいいと言いますよね!
最もそんなことを考えながら作られた曲ではないのでしょうけど。(笑)
聴くなら「WONDERFUL FISH」がオススメ!
「歩いて帰ろう」は言わずと知れた斉藤和義の代表曲なので、ベストアルバムなどにも当然収録されています。
しかしどうせ聴くなら、当時のオリジナルアルバムがオススメです!
収録されているオリジナルアルバムは1995年2月1日リリースの「WONDERFUL FISH」。
是非この作品から、「歩いて帰ろう」という楽曲が生まれた当時の斉藤を感じてみてください。
このアルバムぐらいの頃から、フォークシンガー的なイメージも払拭されていったようですね。
やはり「歩いて帰ろう」はいろんな意味できっかけとなった1曲なのではないでしょうか。
忙しい現代では、自分のペースも見失ってしまいがち
今回は斉藤和義の「歩いて帰ろう」を紹介しました。
この曲で歌われていた1人の時間の大切さというのは、忙しい現代に過ごしていると忘れがちなことなのではないでしょうか。
情報過多の現代では意識していなくても、頭は「容量オーバーだよー!」ときっと訴えかけてきています。
周りに気を取られていると、自分のことをないがしろにしてしまいがちです。
そんなとき、たまにはボーっと考えごとでもしながら歩いて帰ってみたり…なんかもいいのでは?
大人への不満を訴えつつも、そんな自分のペースを取り戻させてくれる意味もこの曲には込められていましたね。