心も体もたくさん殴られた。呆れる程に痛いけどここに居たい
潰したトマトが印刷されたビニール袋を頭に被った人物が映し出されている、
斬新でインパクトが強いジャケットにまず目がいきます。
被写体として写っているのは尾崎世界観本人というのも衝撃的ですよね。
このジャケットは、映画の冒頭の姉妹の喧嘩シーンのオマージュになっています。
実家から追い出され居場所を失い、
初めてのアルバイト、初めての一人暮らし。
いつも行っていた百円ショップでアルバイトを始め、
帰宅途中に見つけた小さなボクシングジム。
そこでスパークリングをしていた男に心惹かれ、ボクシングにも目覚め始め、
自堕落なニートがどんどん人間らしくになっていく。
映画館で鑑賞して、「百八円の恋」がエンドロールで流れた時、
物語では伝えきれなかった部分を、彼女自身の言葉で描かれているように聞こえてきました。
映像に負けないくらい印象的で、
真っ白い文字だけが映るスクリーンをいろんなシーンと重ね合わせて
眺めていました。
作品に真っ向勝負を挑んだ心に突き刺さる歌詞を、
映画を見て感じたことを織り交ぜながら紐解いていきます!
映画の余韻をより濃く焼き付ける始まりのエンドロール
もうすぐこの映画も終わる こんなあたしの事は忘れてね
これから始まる毎日は 映画になんかならなくても普通の毎日で良いから
出典: 百八円の恋/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
イントロ部分です。
このような歌詞がど頭から歌われる主題歌ってなかなか無いですよね。
お金が絡んでるような独り歩きのタイアップ曲では無いのに、
お金の事を題材に使っているのも面白いところです。
そこでも勝負を挑むことを忘れていない、
勝負曲ということを思い起こしてくれる気がします。
見てくださった観客に対しての、
”こんなあたし”の照れ隠しのようにも聞こえてきます。
これからは普通の毎日でいいから、これまでの私の話を最後に聞いて欲しい!
どうぞお付き合いください。という挨拶のような。
百円の恋の主人公が伝えたい私のこと【生活面】
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
でも
居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい
居たい居たい居たい居たい居たい居たい
もう見ての通り立ってるだけでやっとで
思い通りにならない事ばかりで
ぼやけた視界に微かに見えるのは
取って付けたみたいなやっと見つけた居場所
出典: 百八円の恋/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
彼女の鼓動のように聞こえてくるバスドラムの2カウントから、
突き抜けるような前奏部分から放れた、
1番のAメロ〜Bメロ部分です。
自堕落な自分からの脱却の一つの手段として始めたボクシング。
いつのまにか彼女はライセンス取得を目指し、リングの上に立っていた。
ライセンス取り立ての新人が勝てる相手ではなかった。
何発も殴られ顔は腫れ上がり視界もどんどんぼやけていく。
痛い。本当に痛い。
呆れる程に痛い。
でもここがやっと見つけた私の居場所だから。
居たい。ここにずっと居たい。
自分でも呆れる程にずっとここに居たい。
という気持ちが現れているなと思いました。
終わったのは始まったから
負けたのは戦ってたから
別れたのは出会えたから
ってわかってるけど
涙なんて邪魔になるだけで
大事なものが見えなくなるから
要らないのに出てくるから
余計に悲しくなる
出典: 百八円の恋/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
1番のサビ部分です。
リングの上に立つ前と立った後の心情を
逆の意味を持つ言葉の繰り返しで表されています。
当たり前のことを言っているだけのように思われますが
このような気持ちって誰でも思っていることだと思います。
こんな自分のことを認めたくて、消化したくて、不安になっている気持ちを強引に納得させているように感じます。
百円の恋の主人公が伝えたい自分のこと【恋愛面】
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい
居たい居たい居たい居たい居たい居たい
出典: 百八円の恋/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
2番のAメロ部分です。
ここでの繰り返される言葉の意味が、
1番ではボクシングのことがメインのように感じていましたが、
2番では恋愛がメインになっているように捉えることができます。
出会ってしまった引退ボクサーとの関係。体と体の関係。
恋人なのかどうかもわからない相手への気持ちに翻弄されている様が
込められている気がします。
日に日に大きくなるのは相手の気持ちばかり。
痛い。本当に心が痛い。
呆れる程に気持ちが大きくて痛い。
どんな関係でもあの人と居たい。
本当に居たい。呆れる程に一緒に居たい。
という気持ちが現れているなと思いました。
誰かを好きになる事にも
消費税がかかっていて
百円の恋に八円の愛ってわかってるけど
涙なんて邪魔になるだけで
大事なものが見えなくなるから
要らないのに出てくるから
余計に悔しくなる
出典: 百八円の恋/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
2番のサビ部分です。
今まで恋愛もろくにしてこなかった処女の女性が感じた
初めての恋愛というものを、お金に見立てて描かれています。
時価百円のあたしの恋なんてそんなもんだから。