今陽子のボーカルが恋心とともに切なく燃え上がるサビのパートです。
一番声を響かせるところから恋が終わった現実へ引き戻されるように最後に音が下がって次の歌詞に続きます。
”燃えた~”と”死ぬ~”をつなぐ部分で、彼女の歌の上手さがよく分かる一番の聴きどころです。
恋に燃えた彼女の心が染める空の色はもちろん炎のような赤なのでしょうね。
別れた彼が着ていたシャツの青とは対照的です。
私に熱く恋を語っていたのは嘘だったの?
そんな彼女の恨むような気持ちがだんだんと下がっていくメロディーラインに乗って悲しげです。
歌詞とメロディーが一体になって感情を表しているパートを歌いこなす今陽子の歌唱力が凄いなと思います。
曲のタイトルになっている”恋の季節”というセリフを彼女にささやいた彼はどんな人だったのでしょうか。
口説き文句だとすればキザに格好をつけていたのか、お洒落でロマンチックな人だったのか…。
ここで”云う”という古い表現を使った岩谷時子の意図はよく分かりません。
ただ、文字を見ると直接彼女にだけ伝えたという意味で使ったように思えるのですがどうでしょう。
エレキギターが奏でる間奏の部分は少し投げやりになった気持ちを連想させるようです。
続くコーラスもこの曲のここしかないという部分に入っていて、目立たないけれど効いています。
エレキ、コーラスと続いて次はボーカルだなと期待させるつくりになっているのです。
ピンキーとキラーズはあくまでグループなのだと主張しているようにも思えます。
”恋の季節”の意味とは?
彼女には早すぎる恋だった?
恋は 私の恋は
空を染めて 燃えたよ
夜明けのコーヒー ふたりで飲もうと
あの人が云った 恋の季節よ
出典: 恋の季節/作詞:岩谷時子 作曲:いずみたく
繰り返すサビのメロディーは彼女の恋心がどんなに熱かったかを強調しているように感じます。
空を赤く染めてしまうくらい燃えたからこそ今の彼女は深い悲しみに沈んでいるのです。
一夜をともに過ごしたあとに飲むコーヒーは大人の恋を表しているのでしょう。
恋人とロマンチックな夜を何度も過ごしたのか、それともふたりでコーヒーを飲むことはなかったのか。
もし一度も飲んでいないのであれば彼は甘い言葉をささやいていただけなのかもしれません。
大人の彼が年下の彼女を本気で相手にしていなかったとすれば、彼女にとっては辛い思い出です。
ピンキーとキラーズが年下の女性と大人の男性の組み合わせですから、そんなことも想像してしまいます。
彼は彼女に「君は僕に恋をしているみたいだけどまだ早すぎるよ」と教えていたのでしょうか。
彼女の早すぎる恋を熱に浮かされた”恋の季節”のようなものだと例えているのかもしれませんね。
作詞作曲は岩谷時子といずみたく
出会いが生みだすヒット曲
岩谷時子は遅咲きの人でした。
宝塚歌劇団に入社したことでその後シャンソン歌手になる越路吹雪と知り合い彼女のマネージャーへ。
作詞を担当した加山雄三の「君といつまでも」がヒットした時は49歳、「恋の季節」はその3年後のことです。
才能ある歌手と出会い、一緒に仕事をして人生経験を積んだことが作詞家としてプラスになったのでしょう。
1939年に神戸女学院大学部英文科を卒業後に、宝塚歌劇団出版部に就職。宝塚歌劇団の機関誌である『歌劇』の編集長を務めた。そうした中、偶然宝塚歌劇団編集部にやってきた8歳下の当時タカラジェンヌで15歳の越路吹雪と出会う。2人は意気投合し、越路の相談相手となる。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/岩谷時子
いずみたくは1963年にヒットした坂本九の「見上げてごらん夜の星を」などで知られています。
岩谷時子とはミュージカルの仕事を一緒にしたことがあって、「恋の季節」の前から縁があったのです。
60年代から活躍してきた作曲家と遅咲きの作詞家のコンビが生み出した曲は爆発的なヒットを記録しました。
歌手・作詞家・作曲家、そしてレコード会社の制作者たち。
いろいろな人生がある時ある所で出会ってヒット曲が生まれるのでしょうね。
歌謡曲黄金時代を彩る名曲
短い曲に詰め込まれた世界
「恋の季節」はわずか3分余りの短い曲です。
この当時の歌謡曲や洋楽ポップスは大体そうだったのですが、もちろん短いからダメということではありません。
むしろその短い時間で聴く人たちを惹きつける魅力があったのが凄いことなのです。
この曲の歌詞はリピートの部分を除くと本当に短くて、その中に岩谷時子のセンスが詰め込まれていました。
詞先か曲先か(歌詞が先にあって後から曲を付けたのか、或いはその逆か)は分かりません。
どちらにせよ魅力ある作品を作り上げたのはプロの才能で、さらに今陽子の歌唱力が色を添えたのです。
岩谷時子といずみたくが手掛けたヒット曲
「君といつまでも」
岩谷時子の作品のなかで最も有名な曲のひとつかもしれません。
”若大将”こと加山雄三の大ヒット曲「君といつまでも」の記事をご紹介します。
普通は恥ずかしくてなかなか言えないセリフも加山雄三になり切ったら堂々と言えそうです。
映画『若大将』シリーズの紹介や岩谷時子との出会いなど楽しめる内容なので是非読んでみてくださいね。