遂に心は半額 いつまでも売れ残って
テレビを眺めて空想 ニュースは希望のバーゲン
出典: 風を食む/作詞:n-buna 作曲:n-buna
祈るような気持ちで出勤してきた主人公ですが、昨日値下げしたはずの商品は売れていませんでした。
さらに値段を下げられ、もはや価値すらも半減したかのようなその商品。
年を重ねていくうちに、主人公も輝いていたあの頃とは価値が半減したかのように思えてきます。
すぐ横に出来立ての商品があれば、売れ残りを選ぶ人はいないでしょう。
それと同じで、隣に可愛くて何でもできる子がいたならば、主人公を選ぶ人はいないのです。
自分と同じような人はいないかと辺りを見渡してみても、誰もが誰かと手を取り合って生きています。
たった1人でくすぶっているのは、自分だけなのかもしれない……。
そんな悲しい考えが頭の中を埋め尽くしてしまいます。
ふとテレビをつければ、誰かと誰かが結婚したなどというおめでたい話題で持ち切りでした。
他人の幸せを心から祝うことのできない主人公は、さらに自分のことが嫌いになっていきます。
儚い希望を胸に
貴方は今日も買ってる 足りないものしか無くて
俯く手元で購入 空は高いのかな
出典: 風を食む/作詞:n-buna 作曲:n-buna
そんな中現れた、主人公の意中の彼。
彼もまた、生活のために必要な物を求めにやってきたのです。
「ああ、彼も他の人と同じ人間だったのだ」
淡い期待が崩れ去った今、主人公は顔を上げることすらできません。
あの日、彼と見上げたはずの空は、今も同じ顔をしてそこに広がっています。
しかし自分はというと、今日も選ばれずにくすぶった人生を送っているだけです。
誰もが満たされるために物を求めるこの世界で、ただ売れ残りにも目を向けてほしい……。
そんな主人公の切なる願いは、言葉にもならず誰にも届かないままなのです。
主人公にとっての希望
売れ残りの心こそが美しい
貴方だけ 貴方だけ
この希望をわからないんだ
売れ残りの心でいい
僕にとっては美しい
出典: 風を食む/作詞:n-buna 作曲:n-buna
絶望しかないと思っていた主人公の世界ですが、ある日転機が訪れます。
それはなんと、想っていた彼が主人公を「買って」いった瞬間でもありました。
ずっと待ち望んでいた居場所を、ようやく手に入れることのできた主人公。
この喜びや幸せは、他の誰にも分からないほど満ち足りたものであったはずです。
誰にも相手にされなかった自分を卑下し、こんな自分ではだめだと落ち込んでいた毎日。
しかし彼は、そんな主人公だから選んだのだといってみせたのです。
ずっと去りゆく商品を見つめてきたからこそ、主人公には周りを見る力が備わっているはず。
売れ残りの商品すらも大切にできる、温かい心をもっているはずなのです。
そんな一生懸命な主人公に魅力を感じ、寄り添うことを選んだ彼。
売れ残った経験があったからこそ、今の奇跡があるのです。
決して消費されないもの
春が先 花ぐわし
桜の散りぬるを眺む
出典: 風を食む/作詞:n-buna 作曲:n-buna
人は誰でも、何かを買い、それを消費することで生きています。
しかしそんな中でも、風や花のように常にそこにあり続けるものが存在するのも確かなこと。
春という季節は、消費のループから抜け出して自然に心を馳せることのできる季節でもあります。
桜が舞い落ちるのを見て、彼との間に「消費」されない強い繋がりを感じることのできた主人公。
使い古されることはあっても、決してなくなることのない強い絆がそこにあったのです。
身の回りで失われていく物を眺めながら、なくならない物を大切に育てていく……。
そんな生き方ができるのも、主人公が歩んできた日々があったからこそです。
貴方を必要としている人がきっといる
自分に寄り添えるのは
貴方しか 貴方しか
貴方の傷はわからないんだ
口を開けて歌い出す
今、貴方は風を食む
出典: 風を食む/作詞:n-buna 作曲:n-buna
主人公の愛する「彼」、そして今という世界に生きる全ての人に投げかけている歌詞。
自分の想いは、自分が一番理解できるように……。
苦しんでいる時、もっともその悲しみに寄り添えるのも自分なのです。
独りぼっちで寂しい日々が続いているのならば、今はただ大声で想いを吐き出してしまいましょう。
大きく息を吸って風を口に含み、その味を全身に感じましょう。
普段は気にしていないけれど、風はいつだって私達のそばにあります。
それと同じように、貴方を大切に想う誰かも、案外身近にいるものなのです。
ならばその人に想いが伝わるように、大声で歌声を届けることができたら……。
もう、貴方は1人ではありません。