形は変わっても「変わらない」もの
そうなると、この歌で「水」は何を意味しているのか?ということになりますね。
作詞の甲本さんや真島さんをはじめとするザ・クロマニヨンズのメンバーです。
つまり、彼らがたどってきた軌跡のことを例えているのだろうと考察できます。
THE BLUE HEARTSからザ・クロマニヨンズまで
ご存知のように、ザ・クロマニヨンズのルーツはTHE BLUE HEARTSにまでさかのぼることができます。
THE BLUE HEARTSが正式に解散したのが1995年。
同バンドの主要メンバーが中心になって↑THE HIGH-LOWS↓を結成します。
そして、↑THE HIGH-LOWS↓が活動休止を発表した後にザ・クロマニヨンズが結成されました。
THE BLUE HEARTS、↑THE HIGH-LOWS↓、そしてザ・クロマニヨンズ。
「形」は変わったけど…
THE BLUE HEARTSから↑THE HIGH-LOWS↓を経てザ・クロマニヨンズへ。
バンドの名前も、甲本さんや真島さんたち以外のメンバーも変わりました。
THE BLUE HEARTSの歌に多く見られたメッセージ性もバンドが変わるごとに変化してきたのです。
これらが、変わっていった「形」なのかも知れません。
そして楽曲では彼らの変化そのもを「水」として表現しているのではないでしょうか。
まさに変幻自在で彼らの音楽表現するもの、これが今回の楽曲のテーマと重なります。
甲本ヒロトの「形」
あれはカモメか 翼の上か
そのまま長い堤防か
形は変わる 自分のままで
あのとき僕は ああだった
出典: タリホ―/作詞:甲本ヒロト 作曲:甲本ヒロト
ここで改めて歌詞を見てみると、作詞の甲本さんが自分を客観的に見ていることが分かります。
3、4行目の部分は、基本的な「自分」は維持しつつもそれぞれのバンドに合わせて多少の変化をしていた。
そんな事実を述べているようにも受け取れます。
前述したように、歌詞に込められたメッセージ性などの変化は顕著に分かるレベルだったようです。
甲本さん自身もまた、バンドという「形」に合わせて変化を遂げていったのです。
2行目の「堤防」から連想できるのは、波が堤防を越えていく様子やぶつかって海に戻る様子です。
堤防を壁と捉えることもできそうですね。
高くそびえ立つ堤防は、大抵の波では越えることはできません。
でも形を変え、蒸発して気体となればその堤防だって越えることができるのです。
このあたりの気持ちが前述した「流れに身を任せ」につながってくるのではないでしょうか。
ザ・クロマニヨンズが『タリホー』に込めた意味
軌跡への思い
甲本さん自身はTHE BLUE HEARTS以前にも別の人たちと別のバンドをやってきました。
その時代からの変化ももちろんあったと考えられます。
また、それぞれのバンドにおいてもいろいろな迷いや葛藤、対立はあったでしょう。
前の2つのバンドはどちらも約10年間続けて、活動休止からほぼ自動的に解散という形になりました。
それらの経験やその時の心境が、『タリホー』の後半の歌詞に表れているようです。
変わることにまつわる苦悩
ほんとうのとき 教える時計
おもいをはかる 温度計
涙の記憶 消えたりしない
漂っている 赤道か
出典: タリホ―/作詞:甲本ヒロト 作曲:甲本ヒロト