ここからいよいよ「夏の恋人」の歌詞をご紹介していきます。
SHISHAMOはボーカル&ギターの宮崎朝子が、ほとんどの楽曲の作詞・作曲を担っています。
今回ピックアップしている「夏の恋人」も宮崎の手による作品です。
独自解釈と一緒に、宮崎の世界観も詳しくみていきましょう!
汗は心と体にじんわりとまとわりつく
今日も目が覚めて聞こえるのは
蝉の声とあなたの寝息
こんな関係いつまでも きっとしょうもないよね
だけど夏が終わるまで
きっとあなたもそう思ってるんでしょう?
出典: https://twitter.com/Faith_nico_38/status/890175522038202370
じめじめする部屋の中
いつまでもここにいたいけど
ねえ、だめなんでしょう?
出典: https://twitter.com/Faith_nico_38/status/890175522038202370
だから今
夏の恋人に手を振って 私からさよならするよ
季節が巡って また夏が来たとしても
そこに二人はいないでしょう
きっと泣くのは私の方だけど 私からさよならするよ
だめね、私
出典: https://twitter.com/Faith_nico_38/status/890175522038202370
この曲は前半と後半に分けて考えた方が流れがつかみやすいと思います。
まずは前半部分、曲の主人公はおそらく学生ではないでしょうか(夏に連続して“しょうもない”時間を過ごせることから)。
じめじめした部屋で、蝉の声がうるさくなるような時間に起きてくる生活…これは結構“ダメな感じ”が漂っています。
しかも“こんな関係”という言葉が歌詞には使われています。
もし誰かとの関係が他の人にも誇れるような建設的なものなら、その関係に対して“こんな”という言葉は使わないでしょう。
ただ彼女はこの関係について“こんな”とか“しょうもない”なんて言いつつ、なぜか自分で“これはきっぱりしなきゃ!”となかなか強く思えていないようです。
もし本当に自分が(相手の意志に関係なく)この関係はあまり良いものではないな、と強く感じているなら、こんなに揺れることはく、彼と離れられるでしょう。
それができないのは、しょうもないとわかりつつも、彼のことが好きだからなんでしょうね。
しょうもないことが愛しい毎日なんだけど
潰れかけたコンビニで 小銭だけを持ち寄ってアイスを買う
あなたはいっつも一番安いシャーベット
公園では夏休みの子供達 それを眺めながら
またあのじめじめした部屋に帰る
大人になんてなりたくないなぁ
出典: https://twitter.com/Faith_nico_38/status/890175522038202370
楽曲の後半は展開がいくつかあるので、細かく見ていきましょう。
まずは彼との日常が描かれている部分。
潰れかけたコンビニで一番安いシャーベットで済ます日々。
これは“気の置けない関係だからできること”と言えば聞こえはいいですが、ちょっとうがった見方をしましょう。
そうすると、彼にとって彼女は“潰れかけのコンビニのアイスで済ませてもいい相手”ということにはならないでしょうか。
もちろん長く付き合うなら、毎日スペシャルなデートやランチ・ディナーなんてできません。
それでもだからと言って、毎日潰れかけのコンビニで買う一番安いシャーベットが許される関係って恋人同士ならちょっと寂しくないでしょうか。
ここから考えられるのは、おそらく彼は彼女のことを“そんなに大切には思っていない”ということなんです。
しかも彼の部屋はジメジメした部屋=冷暖房無し=きっと安いアパートと思われるんですよね。
彼女も自分たちがこうした“安い関係”であるのはわかっているんでしょう。
しかし彼女も実はこの生活に甘んじているところがあって、大人の世界(相手をリスペクトして、関係をはっきりさせて、正しい生活を送る)には行きたくないようです。
いつまでも子供でいたいけど
ねえ、だめなんでしょう?
だから今
出典: https://twitter.com/Faith_nico_38/status/890175571719630848
よく女性は男性より精神年齢が高いと言われますが、ここで彼女は彼との関係に終止符を打とうとします。
ただこれは、彼との関係だけではなく、自分の中の甘さや子供じみた部分をも切り離したいと思っている気がします。
もう一人の私が私を引き止める声がする
「このままでもいいじゃない
この夏に閉じ込められて
一生大人になれなくても」
出典: https://twitter.com/Rabi_cherr/status/938006240168251393
甘くゆるい場所って、人間にとっては誘惑の多い場所な気がします。
特に頑張ることもなく、ダラダラと間延びした時間を過ごすこと……これは本当に暇な時間を持て余す夏休みの小学生のようです。
彼との関係を絶とうと決意した彼女にも、正直な部分ではこうした“まだ行かなくていいんじゃない?”の気持ちはあるわけです。
夏の恋人に手を振って 私からさよならするよ
幸せな二人だけど あなたも私もきっと
このままじゃどこにもいけないから
きっと泣くのは私の方だけど さよならするよ
だめね、私
出典: https://twitter.com/_yuki__SHISHAMO/status/922458867052589056
建設的ではない、恋人とも言い切れないあいまいな関係。
女性の方は相手に好意をもっていたけど、相手は多分自分のことを、居心地の良い都合の良い人くらいにしか思っていない…。
こんな関係じゃ、確かに別れを告げて泣くのは女性の方だけでしょうね。
相手の男性はおそらくしばらくの間は成長することなく、同じような関係をもてる新しい女性をすぐ見つけるのでしょう。
そんな未来がどこかで垣間見えたからこそ、彼女は“夏の恋人”という期間を設けて、彼に別れを告げることを決心したのです。
ただ、こんな自分じゃダメだ、こんな関係は止めなきゃ!という気持ちを十分理解していながらも、彼との別れに涙する弱い自分も否定しきれない……。
歌詞にいくどか出てくる“だめね、私”は、最後が一番気持ち的に重いように感じますね。
でも、ここで“こんな関係”を彼女が本当に止められたら、きっと彼女はこの先良い恋愛ができる気がしませんか?