前作のデッドストック
アルバムイメージを重視
この「つよがり」は、この曲が収められている「Q」の前作、1999年2月3日にリリース「DISCOVERY」のデッドストックです。
「DISCOVERY」のアルバムイメージと合わないということで、次のアルバム「Q」に収録されることになったのですが、これだけの曲がデッドストックとして存在する。
これがMr.Childrenの凄いところですね。
ファンのとても多い曲で、シングルカットはされていないものの、21周年のファンクラブ限定ツアーでは「会員がもっともライブで聴きた聴きたい曲」の14位に選ばれています。
ピアノの伴奏での独唱から始まるこの美しい曲は、繊細で微妙な男の恋心を歌ったものです。
古傷を持つ女性のつよがり
笑っていてもわかるよ
凛と構えたその姿勢には古傷が見え
重い荷物を持つ手にもつよがりを知る
笑っていても僕にはわかってるんだよ
見えない壁が君のハートに立ちはだかっているのを
出典: つよがり/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
新しい曲を聴く時は、いつもその歌い出しの歌詞にワクワクしてしまうものですよね。
特にイントロが好みのチューンだとその想いは一層強くなります。
一体、何を語り掛けてくれるんだろう?
何を言いたいのだろう?一体どんな気持ちなの?
そんな想いがいっぱいになります。
この歌の場合、やはり、「つよがり」とはどういう意味なんだろう?
一体、誰がつよがっているんだろう?と考えてしまいます。
ピアノの静かなイントロから語り掛けてくる桜井和寿のボーカル。
あっという間にMr.Childrenの世界に引き込まれてしまうと、語る相手は、おそらく恋に古傷を持った女性であることがわかります。
「見えない壁」が心にあって、でも凛と構えている女性。
つよがっているのは彼女なのですね。
「笑っていても僕にはわかる」と、その心を優しく労わる気遣いを見せるのが僕なんです。
わかってもらえない切なさ
本音の言葉
それに対して、僕はどう言うのでしょう?
「僕がここにいるよ」「僕が包んであげるよ」
そういう包容力の言葉を期待してしまうんですが、この歌は全然違うんですね。
この後、このように続きます。
蚊の泣くような頼りない声で
君の名前を呼んでみた
孤独な夜を超えて 真直ぐに
向き合ってよ 抱き合ってよ 早く
出典: つよがり/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
「蚊の泣くような」しかも「頼りない」声で君の名前を呼んでみたという一節で、「え?」っと思ってしまいます。
彼女の「見えない壁」を突破することが出来ない自分の気持ち。
蚊の泣くような声で一人、彼女の名前を口にする。
好きなのにわかってもらえない、男としてとても辛い心情が吐露されています。
では、動画をお届けしますね。

ライブです。
本当に「つよがっている」のは、彼女なのか?
様々な解釈が...
素晴らしい歌、みなに愛される歌の歌詞には、シチュエーションには様々なものがあります。
ですが、根底に流れるものは、必ず愛情や友情、苦しみや悲しみ、我々が持っている普遍の感情を呼び起こすものなのは間違いありません。
ですから、どんな状況の人にでも「自分流に解釈して」も共感できるという歌が、やはり、みなに指示されていくわけです。
かといって、普遍的な状況ばかりを選べば、何の変哲もないラブソングになってしまいますから、ソングライターはそこをなんとか打破しなければなりません。
と考えると、桜井和寿は、共感を得るギリギリのところで常に戦っているファイターに見えます。
そして「感情を揺さぶる」のがとても上手いソングライターです。
次の一節、どれだけ自分が彼女の事を思っているかを歌っています。
話す相手もおのずと狭まっていくんだよ
ちっちゃな願いをいつもポケットに持ち歩いているんだ
出典: つよがり/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿