自らの選択

岡本真夜の6枚目のシングルサヨナラ」は、恋と夢の両立が困難になったことから別れを選択する曲です。

恋を諦めて、夢を選んだ楽曲ともいえます。

ですが両立が難しくなっただけで、相手のことを嫌いになったわけではありません。

相手のことをまだ好きなのに、それでも自分から一方的に恋を終わらせたのはなぜなのでしょうか。

一方的な別れ

話し合いもなく

別れの手紙と 合カギ入れて
ポストに落とした
勝手にサヨナラ 決めてゴメンね
許してほしいの

出典: サヨナラ/作詞:岡本真夜 作曲:岡本真夜

合カギ」を渡されていることから、2人が長期間交際していることがわかります。

貴重品も置いてある自宅のカギを、交際してすぐに渡すとは考えにくいからです。

恐らく長い交際期間を経て、相手からの信頼を得たのでしょう。

つまり「合カギ」とは、2人の信頼の証ともいえます。

ですがその信頼の証でもある「合カギ」は、手渡しでは返却されませんでした。

手紙で一方的に告げられる別れとは、2人の間に話し合いもなかったことを意味しています。

別れることに対して、相手にも言い分があったはずです。

相手に反論の余地も与えないような別れ方は、誠実な対応とはいえません。

「合カギ」を渡すほどの信頼関係を築いていた2人には、似合わない恋の終わりです。

もちろんこういう別れ方が誠実とはいえないことを、自分でもわかっていました。

だからこそ、相手に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになっています。

それでも、主人公にはこのような別れ方しかできませんでした。

心が揺らいでしまう

あなたの顔を見たら きっとね
泣いてしまいそうだった
別れられなかった

出典: サヨナラ/作詞:岡本真夜 作曲:岡本真夜

この歌詞から、決して嫌いになって「あなた」と別れるわけではないことがわかります。

直接会って別れを告げたら決心が揺らいでしまうほど、まだ「あなた」のことが好きなのです。

別れたくないけど、どうしても別れなければならない…不誠実な別れ方を選んだのはまさに苦渋の決断でした。

なぜなら、どうしても「あなた」と別れなければならない理由があったからです。

心の距離

夢との両立

夢を追えば追うほどに
遠ざかる背中 つらくて
一緒にいるのに すごく寂しかった

出典: サヨナラ/作詞:岡本真夜 作曲:岡本真夜

この歌詞は、夢と恋の両立が困難なことを表しています。

主人公が夢に一生懸命になればなるほど、「あなた」と心の距離が開いていくようでした。

どうやら主人公の目指している夢は、とても厳しい世界のようです。

そのため、普通に生活している「あなた」には理解しえないことが沢山あったのでしょう。

目指している世界があまりにも違いすぎると、相手の夢を理解するのはどうしても難しくなってしまいます。

お互いに好きだけど、なぜかギクシャクしてしまう…そんな歯車のかみ合わなさを感じていました。

日常のささいな出来事

その日 うれしかったコト
その日 悲しかったコトも
話せなくなった
話さなくなってた

出典: サヨナラ/作詞:岡本真夜 作曲:岡本真夜

この歌詞は、そんな日常のすれ違いが徐々に大きくなっていったことを意味しています。

好きな相手とは些細な出来事も共有したくなるものですが、段々とできなくなってしまいました。

なぜなら、主人公の夢と「あなた」の生きている世界が違いすぎるからです。

あまりにも違いすぎる世界は、話題を共有することも困難にさせます。

ここで、3行目と4行目のニュアンスの違いに注目してください。

3行目の主人公は、「自分の話は通じないだろうな」と予想して話をしませんでした。

つまりあまりに違いすぎる世界、そういった状況が主人公の話を止めさせたともいえます。

ですが4行目の主人公は、そういった状況があったとしても自ら話すのを止めてしまいました

これは、自分の意思で話さないことを選んだともいえます。

かみ合わない歯車を諦めてしまったようでした。

つまりこの段階でもう主人公は、無意識の内に恋よりも夢を選択していたのです。