「愛がすべてさ」と言い切れるのは、並外れた強さを持つ人だけと思うかもしれません。
果たして、そうでしょうか。
恋人はもちろん、家族や友人、恩師など。
人間は誰しも、周囲の人の愛情に包まれながら生きているもの。
それは、自分自身もまた、身近な誰かを愛情を包んでいるということに他なりません。
「愛がすべてさ」と言い切れる強さは、誰もが心の中に秘めています。
リスナーの心の内にある強さを引き出し、そっと奮い立たせてくれる。
そんな優しさを持った歌が、「ff(フォルティシモ)」なのです。
日本屈指のライブバンド
「ff(フォルティシモ)」と重なる姿
1976年に仙台で結成されたHOUND DOG。
当初からライブ活動に軸足を置き、79年には初の東北ツアーに出ます。
80年にシングル「嵐の金曜日」でレコードデビュー。
81年、大友康平は仙台市近郊で始まった「ロックンロールオリンピック」をプロデュース。
94年まで続いた伝説のイベントは、国内の野外ロックフェスの先駆けの1つとなりました。
82年には、5thシングル「浮気な、パレット・キャット」がスマッシュヒット。
化粧品のCMソングに起用され、初のタイアップを獲得します。
83年、日本武道館で初のワンマンライブ。
ヒット曲が乏しかったにも関わらず、1万人を動員しました。
メンバーチェンジによる解散の危機を乗り越え、84年には西武球場のステージに立ちます。
ちなみにこの年は、春から夏にかけて全国40カ所のツアーで13万人を動員。
秋には第2弾のツアーをスタートさせ、全国70カ所で15万人を動員しました。
紆余曲折も経験しながら、日本屈指のライブバンドとして着実にファンを増やしてきたHOUND DOG。
ライブを重視する姿勢は、ヒット曲を連発するようになっても変わりません。
88年には、東京ドームで日本人アーティストとして初の単独公演を実現。
それは86年から足掛け3年がかりのツアー最終日、何と207本目のステージでした。
さらに90年には、前代未聞の日本武道館15daysという、今なお破られていない大記録を打ち立てます。
夢に向かって突き進む「ff(フォルティシモ)」の歌詞は、彼ら自身の姿と重なっているように見えるのです。
ステージの迫力をお茶の間に
ギターソロを含むテクニカルな演奏と、豊かな声量が不可欠な「ff(フォルティシモ)」。
驚かされるのは、ライブ演奏のクオリティーの高さです。
レコーディング音源と比べても、劣るところがありません。
「ff(フォルティシモ)」がヒットし、テレビの音楽番組に出るようになったHOUND DOG。
ライブで見せる迫力のパフォーマンスをそのままお茶の間に持ち込み、視聴者を驚かせました。
インターネットなど存在しなかった当時。
ロックバンドのステージを見たことがある人は、まだまだ限られていた時代です。
拳だけではなくマイクスタンドも振り上げてみせる、激しいアクション。
アグレッシブで華やかな立ち居振る舞いは、HOUND DOGのお家芸と呼べるものでした。
ブラウン管の中の彼らの姿は、見る人の視覚と聴覚を満足させたのです。
1985年という年
ロックシーンの夜明け
アイドルを中心とした歌謡曲や、昔ながらの演歌が根強い人気を誇っていた1980年代の邦楽シーン。
ロックナンバーの「ff(フォルティシモ)」も、週間チャートの上位に食い込んだわけではありませんでした。
85年に発売されたシングルの年間売り上げランキングを振り返ってみます。
ベスト10を占めたのは、ほぼ歌謡曲。
いわゆるロックバンドのカテゴリーに入るのは「悲しみにさよなら」(9位)の「安全地帯」のみです。
こうした状況を考えると、「ff(フォルティシモ)」は「大ヒット」と呼べるものでした。
テレビCMのテーマソングにも起用され、抜群の知名度を築き上げます。
邦楽のマーケットで、ロックがビッグビジネスとして成り立つことなど考えられなかった当時。
「ff(フォルティシモ)」は、そんな常識を打ち破った曲の1つといえます。
事実、85年は日本のロックシーンが大きく動いた年です。
レベッカのシングル「フレンズ」が、週間チャートの上位に到達。
「ff(フォルティシモ)」も加わった日本のロックは、まさに夜明けを迎えようとしていました。
80年代後半は、さまざまな音楽性、ビジュアルを売りにしたロックバンドが次々とブレイク。
HOUND DOGも89年、12thアルバム「GOLD」で初のチャート1位を獲得しました。
まとめ
音楽の力
聴く人を楽しませるだけではなく、元気にさせることができる。
それが、音楽の力です。
苦しいとき、悲しいとき、悩んだとき。
OTOKAKEで紹介した曲に出会うことで、輝きを取り戻してほしい。
そんなライターの思いが伝わってくる記事です。
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