連れ出してくれるのは

Bob Dylan【Mr. Tambourine Man】歌詞和訳&意味解説!彼がくれる元気の源とはの画像

音楽につられて連れ出されるという描写は、ハーメルンの笛吹き男を彷彿とさせます。

童話では笛の音でしたが、ここではタンブリンの音とタンブリンマンの歌によるもの。

彼の演奏や歌には、それほどまでに魅力的な力があるということなのでしょうか。

全てが麻痺した状態で

このまま、遠くへ?

後のフレーズでは、タンブリンマンに呼びかけている曲の主人公が、自らの状態を訴えかけます。

My senses have been stripped, my hands can’t feel to grip
My toes too numb to step, wait only for my boot heels
To be wandering

出典: Mr. Tambourine Man/作詞:Bob Dylan 作曲:Bob Dylan

主人公の状態は、かなり「思わしくない」様子です。

俺の感覚はすべて剥ぎ取られた
両手は握った感じがしないし
両足は麻痺しちまって歩けない
俺のブーツが勝手にさまよい歩き始めるのを待ってるだけなのさ

出典: Mr. Tambourine Man/作詞:Bob Dylan 作曲:Bob Dylan

本当に、タンブリンと歌だけで奏でられる音楽につられて旅に出られるのでしょうか。

感覚がなくなった中で

ここで気になるのは「感覚」「麻痺」という言葉です。

例えばただ疲れて動けない状態だったり、怪我をしていたり。

そういった状態であれば、「(疲労や痛みで)動かせない」と表現するでしょう。

しかし主人公が動けない理由は「感覚」を失ったから。

かろうじてタンブリンマンへ呼びかける気力は残っているようですが、それも怪しい話です。

この歌詞に綴られた言葉が、タンブリンマンに届いたという描写はありません。

つまり、主人公の頭の中だけに言葉が渦巻いているという可能性もあるのです。

ある一つの仮説

それほどまでに感覚が失われた状態にあるとは、どういうことなのでしょうか。

実はこの曲には、ドラッグのことを歌っているのではないかという説があります。

タンブリンマンはその売人であり、「歌ってくれ」は「ドラッグを売ってくれ」の隠語のようなものだ、と。

確かに全身の感覚が麻痺しているのは、薬が切れてしまったからとも考えられます。

それだけではないと思わせる歌詞

この曲が発表された時代背景を考えると、ある意味ではそれも当たっているのかもしれません。

しかし、この幻想的ながらどこか諦観の漂う歌詞には、解釈はそれだけではないと思わされます。

彼がとらわれるもの

「疲労」と「退屈」