シーラカンス
これから君は何処へ進化むんだい
シーラカンス
これから君は何処へ向かうんだい

出典: 深海/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿

シーラカンスという生き物について考えてみると、なぜこの魚が唐突に出て来たかわかります。

シーラカンスは深海付近に生息する、生きた化石と呼ばれる大型魚です。

進化のペースがゆっくりで原始的な形態なので化石と呼ばれているのです。

このような特徴から、シーラカンスは変わらない過去そのものと捉えることができないでしょうか。

シーラカンスの時間は、人類の進化の速度からみれば止まっているも当然なのです。

主人公はそれを知り、自分もシーラカンスのようになりたいと思ったのでしょう。

過去に住み続ける魚

歌詞で主人公は、シーラカンスの進化や向かう先への疑問を声高らかに歌っています。

しかし、彼の本音としては、この魚の時間は止まっていて目的もないと感じているのでしょう。

つまり疑問を歌いながら、魚のように君がいる過去に固執したいと叫んでいるのです。

前に進まなければいけないとわかっていても、君との思い出はずっと残したい。

そんな思いがあり、ずっと過去に居座り続けているようなシーラカンスを羨ましいと感じているのです。

深い森

ギリギリの心理状態

失くす物など何もない
とは言え我が身は可愛くて
空虚な樹海を彷徨うから
今じゃ死にゆくことにさえ憧れるのさ

出典: 深海/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿

歌詞は一気にダークになってきました。

主人公は暗く、光の差さない場所を見つめているのでしょう。

樹海という言葉が登場しました。

明らかに自殺をほのめかすワードです。

主人公は、なぜこれほどまでに追い詰められているのでしょうか。

わかっているのは記憶の深い部分にいる君だけです。

先述したように、君に対する思い入れは半端なものではないのでしょう。

先に逝ったパートナーを忘れられず、苦しんでいるのかもしれません。

心の樹海

彼は富士の樹海にいるのでしょうか。

4行目では、現在死について憧れていると言っています。

その表現から察するに、今樹海にいるわけではないのでしょう。

以前1度現地に行ってみて、やっぱり踏みとどまったのだと思います。

そして自分の生きることへの執着を嘲っているのです。

思い切れない自分を揶揄するとき、彼の心に樹海が現れるのではないでしょうか。

心には深海もあり、そして樹海もあり。

そこには壮大な空間が広がっているようです。

樹海よりは深海へ、人間よりは魚に

歌詞には深海と樹海という言葉が登場します。

海と陸上にある、それぞれ未知のスポットです。

主人公の心の中にその2つの場所があります。

樹海はわかりやすく死の象徴です。

では深海は生の象徴でしょうか?

そうシンプルではないと思います。

先ほど考察したように、過去の象徴です。

単純に生きることを指しているのではなく、過去に固執して生きることを深海にイメージしているのでしょう。

彼の気持ちは樹海へ向かうよりは、深海に向かいたいのだと思います。

だからシーラカンスに声を掛けているのでしょう。

死か、もしくは成長を捨て過去に生きるか。

比べてみると、両方とも明るくない未来だとわかります。

心の葛藤が辛すぎる。

でも死にたくはない。

彼は、深海で何も考えずにひた生きる道を選びたいのです。

シーラカンスに懇願

連れてってくれないか
連れ戻してくれないか
僕を
僕も

出典: 深海/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿