49thシングル「君こそスターだ/夢に消えたジュリア」
今回ご紹介する「夢に消えたジュリア」は、2004年、49thシングルとして発売された「君こそスターだ/夢に消えたジュリア」の2曲目に収録されています。
サザンオールスターズはこのシングルのリリースの前年、2003年にデビュー25周年を迎えています。
お祭りムードの中、デビューシングル「勝手にシンドバッド」の再発や、記念野外ライブツアーなどを行い、精力的に活動を行いました。
その盛り上がりもあってか、このシングルもオリコン週間シングルチャート1位、月間チャート1位も獲得。
この年には「彩 〜Aja〜」、そしてこのシングルの後にもう1作「愛と欲望の日々」と3枚のシングルがリリースされましたが、「君こそスターだ/夢に消えたジュリア」が一番のヒットとなりました。
表題曲のどちらにも、大型のタイアップがついたことも影響しているのは、と思います。
リリース時には「君こそスターだ」がTOYOTAのCMソング、そして翌年の第77回選抜高等学校野球大会の入場行進曲、2008年にはauのキャンペーンソングに起用されています。
2004年はアテネオリンピックが開催され、TOYOTAのアテネオリンピック応援ソングにもなったことも、このヒットに大きく影響しているのではないでしょうか。
また、「夢に消えたジュリア」は、JALのCMソングに。
前作「彩 〜Aja〜」、そして後にリリースされた「愛と欲望の日々」に比べて2曲ともテレビでの披露回数が極端に多かったのも、売り上げを伸ばす効果があったのでないかと思います。
14thアルバム『キラーストリート』にも収録
30曲収録の2枚組アルバム
「夢に消えたジュリア」は、14thアルバム『キラーストリート』にも収録されています。
このアルバムは2005年にリリースされ、前作のアルバム『さくら』からは実に7年ぶりのオリジナルアルバムとなりました。
このアルバムは2枚組、全30曲を収録と、かなりのボリュームとなったようです。
ベストアルバム以外でこの曲数のものって、なかなかないですよね。
7年間ずっと待っていたファンも、これなら納得できたのではないでしょうか。
このアルバムには、シングルで発表された曲が12曲含まれています。
こうなったのは、アルバムのレコーディングに時間がかかり過ぎたからだということ。
シングルとして発表した曲は、本来シングル用として制作されたわけではなく、アルバム制作の先が見えないので仕方なくシングルカットした、という経緯があったようです。
アルバムは出ないし、新曲も全く出ない、という状況は避けたかったのでしょう。
シングル曲としては、先に挙げた2004年に発売されている3作の表題作の他にも、「涙の海で抱かれたい 〜SEA OF LOVE〜」や「BOHBO No.5」などが収録されています。
アルバムのタイトルチューン、「キラーストリート」は、DISC1にインストが、DISC2にはメドレー形式で歌詞のついた同曲が収録されるという珍しい形式をとっています。
テーマは”グループサウンズ”!?
この曲のPVは、昔あった音楽番組『夜のヒットスタジオ」のようなイメージですね。
「夢に消えたジュリア」自体、1960年代後半にかけて大流行したグループサウンズ、歌謡曲を意識して作ったと桑田佳祐は語っているようです。
それをそのままPVで表現しちゃったんでしょうか……。
今の10代や20代の方には想像もつかないかもしれませんが、当時の音楽番組といえば確かにこんな雰囲気のセットでした。
ちなみにこの「君こそスターだ/夢に消えたジュリア」のリリース時には、カセットテープでのリリースもされているんです。2004年にですよ。
若い世代は、カセットテープの存在すら知っているかどうかもわからないという時代です。
徹底的に、グループサウンズの時代を表現、とでもいうんでしょうか。ちょっと面白いですね。
魅惑のPV
「夢に消えたジュリア」の歌詞
ではここからは、「夢に消えたジュリア」の歌詞を見ていきましょう。
帰れ僕の青い鳥 枯れた楡(にれ)の梢に
君がいない 嗚呼 世の中は朝日さえ昇らない
腕の傷はおととしの命懸けたロマンス
濡れた蕾 薔薇の滴
永遠(とわ)の愛に彷徨う
燃えろ夏の十字架 南の空高く
夜の闇を照らす星座(ほし)は涙のシャンデリア
まるで虹のように夢に消えたジュリア
いとし君よ何処(いずこ) こんなにもやるせない
「Lord have mercy.」
出典: 夢に消えたジュリア/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
去っていった”君”は、まるで青い鳥のようだったのでしょう。
”僕”の幸せそのものだったのかもしれません。
”君”のいない世の中は、”僕”にとっては永遠に続く夜。太陽さえも、”君”と一緒に去っていってしまったかのようです。
永遠を誓った約束も、宙に浮いたままになってしまいました。
南の空に見えるのは、南十字星。
星の瞬きが、まるで涙の雫にも思えてきます。
いつの間にか、”僕”を置いて、姿を消してしまったジュリア。
空に架かる十字架=南十字星を見て、思わず神にすがってしまいます。
「主よ、どうかお慈悲を。」と。
まるで幻想のように……
恋の終わり告げるように ちぎれた僕のロザリオ
海を渡る二羽のカモメ 遠い夏の幻想(まぼろし)
灼けた肌をからめ口づけしたサマータイム
身も心もすべて君に捧げた恋だった
揺れる胸を抱いて君と踊るジルバ
魔法に酔わされて囁いた秘め事は
「Oh, my Jesus.」
出典: 夢に消えたジュリア/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
軽やかに海上を舞うカモメに、かつての二人の姿を重ね合わせます。
もう今となっては幻のようにも感じてしまう儚い思い出。
仲良く睦あって、キスをして。
全て”君”一色になるほど、夢中で恋していたのです。
思わず、「ああ、神様」とつぶやいてしまうほどに。
それもすべて、幻想となって消えてしまいそうです。