繰り返す言葉の力強さ
あのね あのね ずっと 大好きだよ
大好きだよ ああ ありがとう
出典: アイノカタチfeat. HIDE (GReeeeN)/作詞:GReeeeN 作曲:GReeeeN
それほど言葉数の多くない歌詞の中で、「大好きだよ」という言葉は5回登場しています。
曲の終わりに「大好きだよ」を繰り返してもいます。
こうした言葉の選び方は、一見拙い表現にも思えますが、
むしろ、この曲に描かれている愛の力強さを表しているのではないでしょうか。
MISIAの深みのある声がこの言葉をメロディーに乗せることでその力強さがより胸に響きます。
不寛容な時代に
MISIAの「アイノカタチfeat.HIDE(GReeeeN)」には大切な相手のすべてを受け入れる最大級の愛を歌った楽曲でした。
誰かの行動に対して不寛容な態度を取りがちな現代だからこそ、こうした愛の歌が求められているのでしょう。
小柄な体からは想像し難い豊かな声量と5オクターブの音域をもつMISIAは、
単に歌の上手いシンガーという枠にとどまらない、慈善活動家としての一面も持っています。
聞く人の心を揺り動かす、まさに歌姫と呼べる存在です。
そんなMISIAだからこそ、この「アイノカタチfeat.HIDE(GReeeeN)」を高らかに歌い上げ、
聞く人の心に届けることができるのです。
ドラマのエンディングに流れる「あのね」という優しい問いかけが、一層の感動を呼び起こしてくれるでしょう。
ドラマ「義母と娘のブルース」から読み解く「アイノカタチ」
人気ドラマとなった「ぎぼむす」
最初に紹介したとおり、公開前から注目のドラマだった「義母と娘のブルース」。
綾瀬はるかと上白石萌歌とのあたたかい親子関係、そして竹野内豊や佐藤健との大人だからこその甘酸っぱい関係…。
人気キャストによる熱演もあり、「ぎぼむす」は多くの話題を集めた人気作となりました。
もちろん、ドラマのクライマックスを彩る「アイノカタチ」という楽曲もその大きな魅力のひとつだったことは間違いありません。
「義母と娘のブルース」は決して派手な物語ではなく、穏やかな人間ドラマです。
どこかぎこちなくもお互いを大切に思い合う亜希子とみゆきの母子。
そしてそれを取り巻く、個性的で憎めない優しい人々。
まさに愛に満ちた物語が、主に女性の視聴者の共感を集め、人気ドラマとなった理由なのです。
母と子の「愛の形」
ドラマはみゆきが高校生となり、高校を卒業するまでの物語が描かれます。
他人である亜希子とみゆきが出会い、みゆきが自立するまでの10年間。
それはふたりにとって「愛」を知り、本当の家族になるまでの物語でした。
それだけでなく、愛を知ることは自分自身の欠けていた人間性を得ることでもあったのです。
ドラマの最終話。
みゆきの進路のことで揉めたふたりは、互いの本心を打ち明けます。
幼い頃の自分をみゆきに一方的に重ねていたこと。
みゆきの喜びや悲しみを自分のことのように感じる。
それを自分の身勝手だと語る亜希子に、みゆきはそれが愛だと告げます。
そして自分も同じように、亜希子がやりたいことをするのがうれしいと話すのです。
血の繋がりもなく、性格も違う亜希子とみゆき。
けれど亜希子の中には確かにみゆきへの愛が。
そしてみゆきの中にも亜希子への愛が育っていたのでした。
ここで歌詞に立ち返ってみましょう。
いつのまにか心の中にあった「愛の形」。
それは最初はそれほど大切なものではなかったのかもしれません。
けれど共に時を過ごし、思い出を重ねたり同じものを食べたり。
笑ったり、時には泣いたりしていくたびに。
心の中にある愛は、他の存在では代えられない特別なものになっていったのです。
それはまさに、亜希子がみゆきと共に過ごした時間の中で育まれた母子の愛でした。
そして、その愛は決して母から子にだけのものではありません。
同じように心の中にある存在が大きくなって、かけがえのないものになっていった。
それは、娘であるみゆきから母の亜希子へ贈る愛でもありました。
他人だった亜希子とみゆき。
それが長い時間を経て、お互いを大切に思う母子になっていく。
そう考えると優しく一見子供っぽい印象の平易な言葉の歌詞は、母から子へ贈る愛の歌でもあり。
子供から母に贈る精一杯の愛の歌でもあると受け取ることができます。
そして、同じことがどんな親子にもいえるのではないでしょうか。
血が繋がっていれば自動的に愛が生まれてくるわけではありません。
生まれたそのときから、親と子は別の人間です。
そこから長い時間をかけて、心の中に愛の形を育んでいく。
親が子に与えるだけでなく、時には子供に多くのことを教えられる。
そうして親子の愛の形は、互いに埋め合い他のものでは代わりにならないような深くあたたかい愛になるのです。
「アイノカタチ」を聴き、「義母と娘のブルース」を観た時。
今まさに子育てをしている人も、今は子供が手を離れた人も。
子育てに悩みながら懸命に愛を注ぎ、ひとつづつ時間を積み重ねてきた日々。
それを思い出して涙した方も多いのではないでしょうか。
家族にとっての「愛」。
その在り方をドラマと共に伝えてくれたのが、「アイノカタチ」という一曲だったのです。
ドラマの世界を広げるばかりでなく、多くの親に、そして子供に愛の在り方を伝えてくれた「アイノカタチ」。
だからこそ「アイノカタチ」は多くの人の心をあたため、感動を呼び起こす普遍的な一曲となったのです。
まとめ
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