楽曲について
amazarashiの楽曲『帰ってこいよ』。
ただひたすらに故郷への想いを謳い上げた情深いリリックが魅力的な楽曲です。
2020年3月17日にYouTubeにて公開され、開始4か月にして89万回再生を突破しています。
またこの楽曲は、2020年3月11日に発売されたアルバム【ボイコット】の収録曲。
私たちがなかなか表に出せない心の憂いの数々を1つ1つ詳らかにした楽曲達が並びます。
今回はそんな中でも「望郷」に視点を置いた『帰ってこいよ』について歌詞を解釈していきます。
自身も青森から上京経験のある秋田ひろむさんが描きだす歌詞に込められた意味とはどのようなものなのでしょうか。
故郷から未来へ
田舎と淋しさ
稲穂が揺れる田舎の風は 置いてきぼりの季節の舌打ちか溜め息
駅の待合室でうらぶれて 誰彼構わず 憂鬱にする 憂鬱にする
どうせ出てくつもりなんだろ この町ではみんなそう
出典: 帰ってこいよ/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
田舎から都会へ、仕事や未来を求めて旅立つ人は少なくありません。
ここの歌詞で謳われているのは、そうしてまた田舎が廃れていくことへの憂い。
田圃の間を抜ける風さえも淋しさを表出しているかのようだといっています。
視点としては、巣立っていく人々を見つめる故郷。
歌詞の1つ1つの単語から、具体的な田舎の情景が浮かびます。
それだけではなく、閑散とした人の温もりを失ったような故郷の姿まで感じられるリリック。
「出ていかないでくれ」とは言えないけれど、快く送り出すには阻む感情があるのです。
本心は「どうか頑張って」
決意は揺るがないか 迷いなどはないか
故郷を捨てるつもりか 気に病むな、それでいい 振り向くな 立ち止まるな
花、そぞろ芽吹くとも、芽吹かざるとも
出典: 帰ってこいよ/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
ここではそんな巣立っていく姿を陰ながら応援している様子が窺えます。
ただ未来にある目標だけではなく、それに向けての心持ちをも心配しているのです。
この生まれ育った場所を置いていくことに懸念しようものなら叱りつける。
それほどに深層心理では「未来へ旅立って欲しい」という素直な想いがあるのでしょう。
何も気にせずに足を踏み出して欲しいといっているのです。
そして注目すべきは歌詞3行目のフレーズです。
決して成功だけが全てではなく、失敗しようともそこに後悔は必要ないというメッセージ。
この楽曲で中心となるのはまさにこの想いです。
「たとえ、上手くいかなくとも帰る場所はここにある」といっています。
忘れないでいて
月日の流れ
幼い頃に遊んだ校舎の壁が ひび割れた分僕らも傷ついた
ガードレール ゴールポスト 漁港のはしけ この町は何もかも錆び付いて
美しい思い出なんてあるものか 記憶の中じゃ泣いて挫けてばかり
この町が嫌いだとみんな言うが 早く出ていくんだと決まって言うが
出典: 帰ってこいよ/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
月日が経つにつれて、自分たちも変化していきます。
大人になるということは、様々な憂いを感じるようになり、現実感が襲ってくることなのです。
故郷も自分も、昔のように眩しく無邪気なままではいられない。
ここで育ってきた過去を辿っても、いつだって後悔していたといっています。
何者にもなれなかった怒りや失望を、どこか自分の故郷に押し付けてしまっているのでしょう。
だからこそ、外に出ていくことで何か変わるかもしれないという漠然とした想いもあるのです。
巣立っていく1人1人が振り返ることなく、故郷を出ていく。
そんな後ろ姿を見て、溢れる感情を綴った歌詞だと解釈出来ます。
いつだって帰る場所はここに
帰ってこいよ 何か成し遂げるとも、成し遂げずとも
出典: 帰ってこいよ/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ