Aimer「花の唄」とは?

「花の唄」は、2017年10月11日に発売されたAimerの13作目のシングル花の唄/ONE/六等星の夜 Magic Blue ver.」に収録されている楽曲です。

映画『Fate/stay night [Heaven’s Feel] I.presage flower』の主題歌で、劇中の音楽を担当している梶浦由記の作詞・作曲のこの楽曲は、作品の世界観を見事に表現した歌詞となっています。

Aimerのオフィシャルファンクラブである「Blanc et Noir」の2周年を記念して「Blanc et Noir Radio」をファンクラブ限定で生配信を行った際、トリプルA面シングルである「花の唄/ONE/六等星の夜 Magic Blue ver.」を10月に発売することを発表し、いち早くその情報を聞いたファンたちが歓喜に包まれたことでも話題になりました。

「花の唄」のMVには〇〇が登場!超美麗映像に注目!

「花の唄」のMVは、「ソラニン」「陽だまりの彼女」、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」など、数々の大ヒット映画を生み出してきた三木孝浩が監督を務めたMVには、再注目女優の一人である浜辺美波が出演し、今話題となっています。

曲名にも出てくる「花」を効果的に使った幻想的な映像で、『Fate/stay night [Heaven’s Feel] I.presage flower』の物語の主人公である間桐桜に宿る光と陰の世界を見事に表現されたMV。

MVのストーリーも映画の世界観を色濃く反映したものとなっており、家族と過ごした平穏な日常から切り離された悲しみと絶望、そして、再び手に入れた愛おしい人のいる日常とそれを自らの手で崩壊させてしまったという桜の複雑な感情を凝縮されています。

そんな様々な感情を映し出した難しい設定の中にもかかわらず、浜辺美波が表情や動作、視線などで表現し、見事に演じきっている点にも注目です。

可愛らしい演技が印象的な浜辺美波の影のある表情は特に新鮮で、桜という少女の儚さや危うさのある美しさが憑依したようにも見えますね。

Fateシリーズのファンも、そうでない人も楽しめる、美しく幻想的な映像で、まだ見ていない方にはぜひ見ていただきたい作品です。

Aimer「花の唄」の歌詞情報

ここからは「花の唄」の歌詞の意味を紹介します。

映画を見ていない人は絶対見たくなる!?歌詞の世界観にも注目です。

今回はFateファンの方にも、Fateについてはよく知らないという方にも楽しんでいただけるよう、簡単にではありますが設定も含めて歌詞解釈をしていますので、映画の前の予習にもどうぞ。

退屈な花びらのような存在で、大切な人の隣にいられた日々はまるで夢のように

Aimer『花の唄』のMVは○○が出演!神秘的で美しすぎると話題のMVを公開!【歌詞情報あり】の画像

その日々は夢のように
臆病な微笑みと
やさしい爪を
残して行った

退屈な花びらのように
くるしみを忘れて
貴方の背中でそっと
泣いて笑った

出典: https://twitter.com/Silver_mnmn/status/918110879102640128

この映画のヒロインである間桐桜は、もともと遠坂家の次女として生まれ、幸せに暮らしていましたが、大人たちの都合によって間桐家へ養子へと出されます。

その後は間桐家の魔術に合わない、桜が持って生まれた魔術回路を「刻印虫による陵辱」という形で改変され、元は姉と同じ色だった髪や瞳の色も青みがかった紫色に変わり、さらには義理の兄からの虐待を受けて育ったことにより、心を閉ざし、暗く笑うこともないような少女になっていきます。

そのため、前回の聖杯戦争を勝ち上がった衛宮家を見張るという間桐家の目論見によって差し向けられたことによる機会ではありましたが、桜にとって、主人公である衛宮士郎と過ごし、次第に心を開いていってからの日々は「夢のように」穏やかな日々でした。

しかし、その穏やかな日々こそが、汚れた魔術師である本当の姿を隠したい、知られるのが怖いという本心から無意識のうちに「臆病な微笑み」を桜に張り付かせ、そして、優しく爪を立ててゆっくりと傷口を広げるように桜の負の感情を溢れさせていくのでした。

しかし、士郎といると、そんな暴走しつつある負の感情さえ忘れて「退屈な花びら」のような、話してもつまらないような可愛らしい普通の女の子でいられる桜。

そうして、士郎が「背中」を向けている間に「そっと泣いて」振り返った時には何事もなかったように「笑った」顔でいられるようにする、そんな毎日を過ごしていたというのが上に引用した冒頭の歌詞で歌われています。

物語の起の部分に当たる、始まりの歌詞です。続きが気になりますね。

箱庭の中で息を潜めて育った日々

帰らぬ日々を思うような
奇妙な愛しさに満ちた
箱庭の中で
息をひそめ

季節が行くことを忘れ
静かな水底のような
時間にいた

出典: https://twitter.com/Silver_mnmn/status/918110879102640128

「帰らぬ日々を思うような奇妙な愛しさに満ちた箱庭の中」とは、桜が遠坂家で過ごした帰らない幸せな日々を思いながら過ごした間桐家での日々を思い返す歌詞でしょう。

つまり、桜にとって間桐家に養子として出されてからの日々はあまりの過酷さから辛さや苦しさを感じる心は消え失せて、ただ、帰らない日々のことを思い出すばかりの「奇妙な愛しさ」に満ちていた日々だったということです。

遠坂家との接触を完全に禁止された桜でしたが、「息をひそめ」ただ間桐の主人にさえ従っていれば、二度と戻れない場所を愛しく思い返すことは許されおり、それだけが救いだったのでしょう。

そんな日々が桜にとって「静かな水底のような時間」だったというのは理解できない話かもしれませんが、自分に繰り返されることのあまりの壮絶さに「季節が行くことを忘れ」、逆に自分の心は無になっていったということを考えれば、光も届かず何かを感じることもない「静かな水底」という表現もしっくりくるのではないでしょうか。

「Fate/zero」で描かれた間桐家での幼少期の桜は、体や顔つきこそ子供ですが、無感情で空虚な瞳をし、抑揚のない静かな返事をしており、無の境地に達しているようにも見えました。

そんな姿が浮かぶようなこの歌詞、想像を絶する桜の苦悩が見られますね。

桜という少女の一途な想いと狂気の二面性

冷たい花びら
夜に散り咲く
まるで白い雪のようだね
切なく
貴方の上に降った
かなしみを全て
払いのけてあげたいだけ

貴方のこと傷つけるもの全て
私はきっと許すことは出来ない
優しい日々
涙が出るほど
帰りたい
貴方と二人で
見上げた
花びらが散った

出典: https://twitter.com/Virgin_B_tawaha/status/921700072827404288

「冷たい花びら」は冒頭の歌詞で出てきた「退屈な花びら」の対比であり、「退屈な花びら」が士郎の後輩として穏やかな日々を過ごすことができる桜の象徴だとしたら、「冷たい花びら」は士郎を強く想いすぎるが故に士郎を傷つけるならば、無慈悲に世界さえ全て飲み込んでしまおうとする狂気を孕んだ桜の感情の象徴です。

花びらという表現は「貴方の上に降ったかなしみを全て」「払いのけてあげたいだけ」なのに、ただ散っていく桜の花のように無力で士郎を救うこともできない自己嫌悪も表しているのでしょう。 そして、「貴方のこと傷つけるもの全て私はきっと許すことは出来ない」と、もしも世界が桜にとって唯一の光である士郎を傷つけようとするならば、きっと完全に狂気に飲み込まれてしまうということを示唆しています。

現にそうなりつつある自分と向き合い、士郎と二人で過ごした「優しい日々」に「涙が出るほど帰りたい」と思っても、もう後戻りができないところまで来ていることを実感します。

その象徴として、二人で見た桜の花びらが散った瞬間の風景が描写されているのでしょう。

昼の日の光の下咲く「退屈な花びら」は「夜を切り裂く」「冷たい花びら」へといずれ完全に変貌してしまう、そんな不吉な予感が確信へと近づくような歌詞ですね。