【スピッツ/プール】
プールの概要
スピッツの2作目のアルバム「名前をつけてやる」に「プール」は収録されています。
タイトルが象徴するとおり、歌われている内容は夏の出来事です。
プールサイドで起きる主人公と君の恋。
刺激的な恋のように見えますが、スピッツの描く恋模様は蜃気楼のようにフワッとしています。
それは神秘的な歌詞のせいだけではありません。
メロディー、歌詞、歌声の全てが合わさって、ひと夏の夢物語を作り上げています。
そして主人公は「自分は蜘蛛になった」と物語の中で歌っているようです。
蜘蛛になるとはどういう意味なのか、彼らが奏でる爽やかな恋物語を解説していきます。
アニメ『ハチミツとクローバーII』の挿入歌として使用
本曲はアニメ「ハチミツとクローバーII」の挿入歌に抜擢されています。
このアニメは珍しいことに、挿入歌が決まっていません。
挿入歌にはスガシカオとスピッツの曲が多く使用されており、毎話変わっていきます。
ファンならば次はどんな曲が流れるのだろうと、毎回楽しみが増えますね。
本曲が流されるのは2話目になります。
気になった方は、アニメのほうも一度視聴してみましょう!
タイトルに込められた意味とは?
タイトルには「プール」とありますが、曲中にはプールという単語は出てきません。
出てくるのは、バタ足や水しぶきといった言葉だけです。
しかし歌を聴いていると、この曲のタイトルが「プール」になった理由が自然と分かってくるでしょう。
草野さんの歌声がもたらす、水に浮いているかのような浮遊感。
それでいて歌詞に散りばめられた水や夏を連想させる言葉たち。
いろいろな要素が組み合わさって、私たちは何となくプールを想像してしまうのです。
この「何となく」というのが、聴く人に幻想的な雰囲気をもたらします。
聴いていると白昼夢を見ているような気分になる歌は、なかなかありません。
歌詞解説スタート
僕の中の蜘蛛が目覚める
君に会えた夏蜘蛛になった
ねっころがってくるくるにからまってふざけた
風のように少しだけ揺れながら
出典: プール/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
ネットでは夏蜘蛛は、彼女と僕が抱き合っている姿だといわれています。
2人の手足の本数が、蜘蛛の脚の数と同じになるからです。
確かにそう考えると歌詞2段目も、君と僕がベッドでイチャイチャしている姿だと容易に想像できます。
しかし、ここでは少し別の解釈をしていきましょう。
蜘蛛になったのは僕だけという解釈です。
蜘蛛には肉食性で獰猛なイメージがあります。
その肉食性の部分が、主人公の中で目覚めたという解釈です。
プールで遊んでいた主人公ですが、君をプールで見て一目惚れしてしまいました。
主人公はなんとか、君を自分のものにしようと作戦を立てます。
この君を狙っていろいろと画策する主人公の姿が、蜘蛛なのです。
主人公の立てた作戦に、君は見事にハマってしまいました。
それが歌詞2段目の「くるくるにからまって」です。
しかし、ここで気になる言葉があります。
「ふざけた」というワードです。
もしかしたら君は蜘蛛の巣に、わざとかかったのかもしれません。
そして蜘蛛の巣を揺らすことで、「早くこないと私は逃げてしまうよ」と誘惑しているのです。
風が吹いて揺れる程度の気づきにくいアプローチですが、主人公が気づくのを君は待っています。
君と主人公の恋の駆け引きが始まったようです。
ドブ川から出た主人公
街の隅のドブ川にあった
壊れそうな笹舟に乗って流れた
霧のように かすかに消えながら
出典: プール/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
一気に場面転換して、歌われているのは街のドブ川です。
ここでは蜘蛛という単語は使われておらず、誰が主語なのかが重要になってきます。
例えば君を主語にしてみましょう。
この場合、君はドブ川からボロボロの笹舟に乗ってやってきたことになります。
冒頭の幻想的な雰囲気と比べると、君が主語なのは考えにくいですね。
では主人公が主語の場合はどうでしょうか?
汚れたドブ川から水が澄んだプールへと辿り着く、主人公の様子が想像できそうです。
彼はもともとドブ川にいましたが、意を決して外の世界へ飛び出します。
「壊れそう」、「笹舟」とあるように、主人公が歩んできた道は安定したものではありませんでした。
しかも「流れた」とあるので、行き先を自分で決めたわけではありません。
そして最後3段目の歌詞には僕の精神面が描かれていますね。
消えてしまいそうな薄弱な気持ち、つまり新しい世界へのほんの僅かな希望と不安が描かれています。