あなたでは私を満たせない
六弦を奏でる指は
わたしだけ守るには幼く
くちづけは花びらに埋もれ
砂を噛むようにベルが鳴る
踊り子は悲しみを纏い
つぶれた足舐めては歌った
出典: 雲路の果て/作詞:こっこ 作曲:こっこ
「六弦」とはCoccoも弾くアコースティックギターのことでしょう。
歌詞に出てくる「あなた」もアコースティックギターを弾く彼だったのだと思います。
彼を象徴するものが「六弦」であり、ギターばかり弾く彼には自分を守れなかったといっているようです。
また、3行目も同様。彼とのくちづけはここで表現されているように“埋もれて何も残らないもの”だった。
そんな皮肉めいた言い回しだと捉えることができます。
この表現は、傷ついている主人公自身に“彼とはうまくいかなくて当然だった”と言い聞かせているようです。
しかし最後の2行にも注目です。
この2行から伝わってくるのは主人公自身の本質の部分ではないでしょうか。
傷ついて血だらけ、本当ならもう踊ることだってできない足になってまで踊り子は踊り続けます。
悲しみというドレスを脱ぎ捨てることができず、もうやめたいと思っても滴る血を舐めてまで踊るのです。
そこまでして踊ることに魅了され取りつかれているのがわかります。
そしてこの感覚が主人公自身にも当てはまるのではないでしょうか。
本当は終わってしまったとわかっているけど、苦しくても彼を想うことをやめられない。
そんな気持ちが伝わってくるようです。
でもあなたのことばかり考えてしまう
ひかり舞う届かない海で
あふれる夜にあなたが見えるよ
出典: 雲路の果て/作詞:こっこ 作曲:こっこ
どれだけの暗闇があろうとも、やっぱりあなたのことを考えてしまう。
そんなやるせない想いがあるようです。
本当は忘れたいのに忘れられない。むしろ寂しさを感じるほど彼のことばかり考えてしまいます。
気持ちとは裏腹な正直な想いが伝わってきますね。
「もしも」あなたを好きにならなければ
今も一緒にいられた?
小鳥が声を殺していれば
あの時翼が折れてたら
あなたがわたしを抱いていたら
今でも溶けあっていられた?
出典: 雲路の果て/作詞:こっこ 作曲:こっこ
ここでも「もしもこうだったら」と繰り返し仮定のことを綴っています。
鳴くことが当たり前の小鳥が鳴かなかったとしたらーー。
心配でそばを離れることなどなかったかもしれません。
大空を自由に飛ぶ羽が折れていたとしたらーー。
どこかへ飛び立つ術がなく、ずっと同じ場所にいられたかもしれません。
そしてあの時あなたがもう一度私を愛していてくれていたらーー。
今でも2人はうまくいっていたかもしれない。
今となってはどうすることもできないですが、そんな淡い期待に想いを巡らせているのでしょう。
もっとこうすればよかったと後悔するのは簡単です。
難しいのはその時にどうなるかを想定して正しい方へ進むということです。
物事はそう簡単にはいきません。相手がある恋愛ではなおのこと。
それは主人公もわかっているはずです。
だからこそ「もしも」と仮定の話で今の気持ちを癒すしかないのでしょう。
過去に失ってしまった「あなた」を取り戻す術もなく、ただただ過去にすがるしかないのです。
なんとも切なく、悲しい主人公の行き場のない想いが伝わってくるのではないでしょうか。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
今回注目した【雲路の果て】。Coccoが創り出す失恋した女性の後悔と諦めの切ない歌でしたね。
「もしも」に隠された意味は諦めなければいけない自分への言い聞かせと、後悔でした。
どうすることもできない現状、起きてしまったことを嘆く切ない楽曲だったのではないでしょうか。
言葉の深さや表現センスの良さがわかるCoccoらしい1曲だと思います。
安易に「恋愛ソング」「失恋ソング」とはいえない何かがあります。
それは彼女の持っている心の深い場所からくる想いなのかもしれません。
「執着」とも表現できるかもしれませんね。
悲しい過去を未だに昇華できずにいる主人公の苦しみが感じられました。
読者のみなさんはどのように解釈されたでしょうか?
【雲路の果て】についてこれまで以上に興味をもっていただけたら嬉しいです。
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最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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