彼女にとって、彼は何よりも大切な人でした。
彼がいなくなったら世界が終わってしまうのではないかと不安になるぐらい、頭の中は彼のことでいっぱいでした。
失いたくないから、どうしたら彼を失わずに済むかを常に考え、常に気を遣っていたのではないでしょうか。
今思えば、とても未熟だなと実感しているようですね。
なんで 離れたんだろう
なんで 言えなかったんだろう
なんで あなただけが大切だったのに
出典: なんて恋したんだろ/作詞:吉田美和 作曲:中村正人
前のセクションは「How(なんて〜だろう)」でしたが、ここからは「Why(なんで〜だろう)」へと変わります。
最後の夜の話の中で導き出された最良の答えが「別れ」でした。
しかしその時、彼女は本音をぶつけていません。
本当は離れたくないですし、「別れたくない」と言いたかったのです。
彼が何よりも大切で離れたくないのであれば、わがままを言って別れを阻止する選択肢もあったでしょう。
しかし彼が大切で、彼を困らせたくないと思うとわがままを言えません。
「彼だけが大切だったのになぜ思いを伝えられなかったのだろうか」
彼女はこの疑問の答えを知っています。それが「本物の恋」の定義を揺るがすものであることも知っています。
友達は永遠、恋人は…
友達のままいられたら、何かが違ったのかもしれません。
関係がゼロになることはなかったでしょう。
友達と恋人の違い
後になって かなりこたえた
あなたを失うってことは
世界で一番の友達も失うってこと
出典: なんて恋したんだろ/作詞:吉田美和 作曲:中村正人
別れてから時間が経つと同時に、失った存在の大きさに気づきます。
この歌詞では彼=一番の友達だと歌っていますが、どういうことでしょうか。
友達は、絶交でもしない限り永遠に友達でいられます。例え住む場所が違っても、国が違っても友達です。
しかし恋人はそうもいきません。
別れてしまえば、友達に戻ることは難しいでしょう。
離れる時間が長ければ、恋人同士でいられなくなるのが一般的です。
ここから読みとれるのは、彼と彼女は友達の関係から恋愛に発展した可能性です。
何でも話せる友達だった彼。恋人にならなければ、この先もずっと良い友達でいられたのでしょう。
しかし彼は友達ではなく恋人になりました。そして恋人の関係は終わりました。
つまり、彼と別れる=一番の友達に戻ることもない、二人の関係性は「無」に帰すという意味ではないでしょうか。
自分を愛する必要もあった
なんて 深い愛で
なんて ただ一途で
なんて あなただけがすべてだった恋をしたの
なんで 離れたんだろう
なんで 言えなかったんだろう
なんで あなただけが
あなただけが 大切だったのに
出典: なんて恋したんだろ/作詞:吉田美和 作曲:中村正人
彼のことだけを愛して、周りに目もくれない恋でした。
それを彼女は「深い愛」と表現しています。
彼との間に亀裂が生じないように気遣うことは、もしかすると「愛」と呼べるのかもしれません。
彼女はそれこそが「愛」だと思っていたのでしょう。彼女は彼の全てを優先して、愛しました。
しかし彼女は、彼女自身の感情を愛していたでしょうか。
彼女が心の中に抱えている思いをもっと大切にできたら、素直に話ができたのです。
あまりにも彼が大切すぎて、彼女自身の思いを大切にできなかった、という意味にも読み取れます。
素晴らしい恋だったという事実
自問自答したくなることはあれど、彼女の価値観を変えるような恋だったことに間違いはありません。
ただ、彼が大切すぎたのでしょう。
何よりも彼を優先したい恋
あんな恋がまたできるかな
人をすきになるってすごいってこと
教えてくれるような
出典: なんて恋したんだろ/作詞:吉田美和 作曲:中村正人
思いを伝えきれなかったのは、彼が大切すぎたから。
自分の思いを無視してまで相手のことだけを考えたいと思える、特別な恋でした。
彼を好きになったことで、自分の思いよりも大切にしたい存在を知ったのです。
彼を好きになった経験は彼女の価値観を覆すぐらい、衝撃的だったのでしょう。