大人になった少年の物語
そう見ると、この楽曲は大人になった少年が物語のことを俯瞰して振り返った時のことを歌っているのでしょう。
「無邪気に人を裏切れる」というのはそれこそ子供でなければ出来ない話であり、大人になると何らかの遠慮が働きます。
その遠慮がなく、親友の愛した女性をはじめあらゆるものを欲しがるのは無邪気な少年でなければ出来ないことです。
これが果たして意図してこうなったのか、はたまた偶然の産物でこうなったのかは定かではありません。
しかし、この歌が単なるノスタルジックな振り返りに終わらないこと。
また前向きでも後ろ向きでもない中立的な視点の物語であるのは、興味深い所です。
あくまでも道の途中
中立的な達観した視点ではありますが、歌詞の中における主人公はあくまでも「道半ば」の人であることを忘れてはなりません。
癒えることのない痛みを抱えて、孤独なレースを続けていき、更に自分でさえもどうなるか分からない明日へ向かうのです。
この曲が制作された当時のMr.Childrenをはじめ全員がまだ駆け出しの若者で明日がどうなるか先の見えない時代でした。
芸能界全体としても全く先が見えない時代であり、日々めまぐるしく変化していった激動期だったのです。
その中で歌われたもの曲は当時の日本人全員が無意識に思っていた深層心理を見事に当てたのではないでしょうか。
バブルが弾けて不景気のしわ寄せが来て、どう明日を向いて生きていけばいいのかということが全く分からなかった時代です。
若者はおろか先人の大人たちでさえも絶対的な正しさを持てず、どう日本を導けばいいのか分かりませんでした。
そのような漠然とした不安をここまで綺麗に歌い上げたからこそ見事な大ヒットを産んだのです。
時代を象徴する名曲
いかがでしたでしょうか?
このように見ていくと、本作がとても不安定な90年代という平成初期の時代性を象徴する名曲であることが窺えます。
メロディに象徴されるノスタルジックな雰囲気。
それと同時にどこか漂う漠然とした期待と不安を歌い込んだ歌詞が見事な一体化を果たしました。
ふと立ち止まって今までの人生を振り返りつつ、決して綺麗事ばかりではない壮絶な物語がそこには感じられます。
しかし、それでもまだ道の途中であり、果てしない闇の向こう側を目指して走り続けなければいけません。
そのような泥臭い人間讃歌の物語として、未来永劫語り継がれていくのではないでしょうか。
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