明日の朝発って 丸一日かけて
夢に見た街まで行くよ
こんなにステキな事 他にはないだけど
ひとりぼっち みんないなくて
元気にやっていけるかな
出典: バイバイ、サンキュー/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
誰かに語っているようにも自分に言い聞かせているようにも聞こえます。
ずっと行きたいと願っていた場所に行く。
それはこれ以上なく素晴らしいことです。
主人公には夢があってそれを叶える第一歩を踏み出そうとしています。
しかしそこにあるのは期待だけではありません。
今いる場所からとても遠い街。
主人公はその街で1人、暮らしていかなければなりません。
自分とずっと一緒にいた親しい人たちが誰もいない場所です。
主人公を取り巻く感情は不安です。
自分だけでも大丈夫だろうか、くじけたりしないだろうか。
1人でいる、それは主人公にとっては初めての経験なのでしょう。
どうなるかわからないからこそ不安が押し寄せてきます。
自分のいるべき場所とは
僕の場所はどこなんだ
遠くに行ったって 見つかるとは限んない
ろくに笑顔も作れないから
うつむいて こっそり何度も呟いてみる
出典: バイバイ、サンキュー/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
立っている場所が不安定だと人はとたんに不安になります。
何のコミュニティにも所属していなければ尚更です。
自分のいるべき場所はどこなのか、自分はいったい誰なのか。
人は時折自分探しの旅をします。
自分という存在は何よりも近くにいるはずなのに不思議とわからないもの。
新しい場所へ旅立つ理由の1つは自分が誰なのか知りたいからかもしれません。
そんなものが必ず見えてくるとは限りませんが。
新しい場所に行って得るものがあるだろうかと考える主人公。
彼の内面は不安に溢れています。
その不安を打ち払うように言い聞かせる言葉があります。
ひとりぼっちは怖くない…
出典: バイバイ、サンキュー/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
自分を理解してくれる人々はいません。
真っ白な関係性の中すべて自分で切り開いていく必要があります。
それを理解しているからこそ何度も言い聞かせる言葉。
「怖い」という彼の感情が伝わってくるようです。
気持ちをのせるのは難しい
旅立ったからこその手紙
手紙を書くよ 着いたらすぐに
ガラじゃないけど 青い便箋で
ピンボケでよけりゃ 写真も添えて
何より先に 手紙を書くよ
出典: バイバイ、サンキュー/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
先にこの曲は先輩に向けてつくった曲だと紹介しました。
それは1996年、スマホもなく、携帯電話もさほど流通していない時期です。
今は遠くにいても連絡が簡単な時代ですが当時はそうではなかった。
だから第一に手紙なのだろうか、と考えてしまいます。
しかし、この状況は今でも十分あり得るものです。
今なら第一に行うことはLINEかメールでしょう。
しかし慣れない街での日常を記すのに電子では心もとないと思うことがあります。
そんな時に手紙という媒体は最適ではないでしょうか。
白でなく、わざわざ色のついた便箋を使って、下手な写真も添えて。
遠くにいるという気持ちが沸き上がってきそうです。
いつだってはじまり
明日はとうとう出発する日だ
バイバイとかサンキューとか簡単だけど
明日はいつも出発する日だ
怖がってなんかいないよ
出典: バイバイ、サンキュー/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
ただの言葉を、口にするのは簡単なこと。
今までお世話になった人に対して感謝と別れを述べたのでしょう。
けれど言葉では伝えきれない思いがあります。
たった一言では足りなくてけれどもどういえばいいかわからなくて。
めったに会えなくなるからこそ伝えたいことがたくさんあるのでしょう。
簡単なことほど難しいものですから。
そしていつもという言葉。
朝は、いつだってはじまりの象徴です。
朝日が昇れば新しい1日がはじまります。
ちょっと遠くに行くだけでいつもと変わりやしない。
だから、怖いことなど何もないのです。
そう強がって大丈夫と笑います。
隠し切れない不安をにじませて。
心を寄せる場所こそが
自分という存在は1つしかありません。
けれども、自分の場所は1つである必要はないはずです。
疎外感を感じない場所ならばそれは自分の居場所。
今は見ぬ遠い街もいずれは自分の場所になるかもしれません。