鬼束ちひろの転換期を支えた楽曲
女性ソロシンガーとして、あらゆる楽曲を提供してきた鬼束ちひろ。そんな彼女のシングル曲「流星群」をご存知でしょうか。
代表曲である「月光」や「眩暈」にも劣らない魅力を持った本作は、ある意味で彼女の転換期を支えた大切な楽曲であるといえます。
ミュージシャンとして、そして1人の人間として大きな変貌を遂げるために必要だったと思われる「流星群」は、今でもたくさんの人に聴いてもらいたい曲です。
歌詞や世界観、そしてCDジャケットの撮影を行ったある人の秘密までご紹介しますので、音楽ファンはぜひチェックしてみてください。
6thシングル曲
「流星群」は、鬼束ちひろの6thシングルとしてリリースされました。
デビュー曲である「シャイン」の発売が2000年の2月9日。そして「流星群」は2002年の2月6日に発売されています。
丸2年間という時間が経っているため、「流星群」は「シャイン」と比較されることが多く、ファンにとっても鬼束ちひろの変貌を実感できる曲となっているのです。
また、「流星群」はドラマ「トリック2」の主題歌も担当しています。
以前にも2ndシングル「月光」が、ドラマ「トリック」のタイアップとなっていることもあり、「流星群」の存在感はますます高まる結果となりました。
ミュージシャンとは、時間が経つほどに何かしらの変化が起こる職業です。
鬼束ちひろは「流星群」を出すことで、その変化を音楽業界に提示することに成功したのでしょう。
そのため鬼束ちひろは未だに多くのファンを持ち、新曲が出るたびに注目されることになっているのです。
さまざまな変化があった年
「流星群」が発売された2002年は、鬼束ちひろにとって特別な年の1つでした。
前年に発売された1stアルバム「インソムニア」が、日本ゴールドディスク大賞のロック・アルバム・オブ・ザ・イヤー受賞したことがまず1つ。
こちらのアルバムはオリコンチャートで初登場1位を獲得し、たった1ヶ月でミリオン記録をも打ち立てます。20歳5カ月でのランキング1位は、当時「宇多田ヒカル」に次ぐ若さでの快挙だったそうです。
「月光」「call」「シャイン」「螺旋」といった名曲が収録された「インソムニア」は、今でも鬼束ちひろ最大のヒットアルバムとなっています。
ライブツアー「CHIHIRO ONITSUKA 'LIVE VIBE' 2002」も行われ、同じ年に武道館ライブ「CHIHIRO ONITSUKA ULTIMATE CRASH '02」も披露されました。
まさに順風満帆ともいえる2002年、鬼束ちひろはアーティストとしての絶頂期にいたのかもしれません。
そんなときに発売された「流星群」は当然のように反響を呼び、彼女の環境の変化を最も素直に表した曲になったのでしょう。
このことから転換期を支えた「流星群」は、鬼束ちひろを語るうえで外せない楽曲として定着していきます。
曲のテーマは(微熱っぽい)体温
「流星群」のテーマとして、鬼束ちひろは「(微熱っぽい)体温」と語っています。
人との繋がりを意識した歌詞が特徴的なことから、人間らしい生々しさが隠されているように感じられるでしょう。
自分自身の体温を知るには、体温計を使うか、誰かに触れて伝えてもらうしかありません。
そのためこのテーマからは、誰かの存在が生きるためには必要だという、一種の確認のようなものを見つけることができますね。
前作「infection」とリンクする
鬼束ちひろの5thシングル「infection」が、実は「流星群」とリンクしていることにも注目です。
「infection」には、以下のような歌詞があります。
爆破して飛び散った 心の破片が
そこら中できらきら光っているけど
いつの間に私は こんなに弱くなったのだろう
出典: https://twitter.com/onitsuka_bot/status/849950292078612480
この「飛び散った心の破片」が、「流星群」では星に変わって降ってきていると語られています。
前作が鬼束ちひろ自身に、何かしらの影響を与えていることが見て取れるでしょう。
実際に何が降ってきたのかは、鬼束ちひろ本人にしかわかりません。
しかしリスナーである私たちも、2つの楽曲を聴くことでそこにある関係性を読みとることはできるでしょう。
「流星群」に本気で聴き惚れるのなら、ぜひ「infection」も合わせて聴いてみてくださいね。
ジャケットを撮影したのは写真家の蜷川実花
期待の写真家とのコラボ
「流星群」は、CDジャケットを写真家の「蜷川実花」が撮影したことでも有名となりました。
蜷川実花は演出家である「蜷川幸雄」さんのご息女で、鬼束ちひろの「流星群」を担当したときはまだ30歳だったとのこと。
前年の2001年には写真界の芥川賞とも呼ばれる「木村伊兵衛写真賞」を受賞していることから、音楽界と写真界のスーパースター同士が共演するという話題性もあったのでしょう。