羊文学「恋なんて」
塩塚モエカの透明感ある歌声が特徴的なスリーピースロックバンド、羊文学。
そのオルタナティヴな音像の中で歌われるのは日本に生きる若者たちの日常です。
今回はその中から「恋なんて」という楽曲をご紹介します。
恋を題材として、日常の様々なシーンを切り取った描写が特徴的な曲です。
早速、冒頭の歌詞から順に、その意味を解説していきましょう。
「恋なんて」
ベッドに横たわる
君が僕に嘘をついた日、僕はベッドの中にいて
何度も読んだ小説の最後のページを手繰ってた
出典: 恋なんて/作詞:塩塚モエカ 作曲:塩塚モエカ
主人公は、その日「君」に嘘をつかれました。
その嘘というのはきっと、彼の心を乱すものだったのでしょう。
そして、それだけ心が乱される存在ということを考えると、それは恋人であると考えるのが妥当です。
ベッドに横になりながら読んでいるのは、お気に入りの小説。
それの最後を何度も繰り返し読む。
彼の癖なのかもしれません。
考え事をしながら、ただ目で文字を追っているのでしょう。
関係の最後
君はさ、もういらないって言ったね
僕はさ、よくわかんないや
出典: 恋なんて/作詞:塩塚モエカ 作曲:塩塚モエカ
彼の心を乱したのは、1行目に書かれた彼女の言葉でした。
そして、2行目ではそれに対しての主人公の返答が書かれています。
2人の間の気持ちのすれ違いがここからよく伝わってきます。
おそらく彼女がもう「いらない」と言っているのは、主人公のことなのでしょう。
恋人からの言葉
ねえ、本当のこと言ったら
ねえ、あなた泣くでしょう
出典: 恋なんて/作詞:塩塚モエカ 作曲:塩塚モエカ
ここで書かれている言葉は、2人称の表現が変わっていることから、恋人からの言葉であると推測できます。
「いらない」という言葉で主人公を表現した彼女。
恋人には新しく好きな人ができたのかもしれません。
しかし、それを直接彼に伝えれば、傷つくのは目に見えている。
だから、その理由を言うことは避けているのでしょう。
彼への優しさが伝わってきます。
君との思い出
忘れたいのに忘れたくない
そのあとはずっと眠って君の歯ブラシを捨てたよ
置いて行ったTシャツもゴミ箱に放り投げたけど
外したし、しばらくとっておこうか
君に、怒られちゃたまんないし
出典: 恋なんて/作詞:塩塚モエカ 作曲:塩塚モエカ
ここではまた主人公の言葉に戻ってきました。
元恋人となった彼女とは、もう会うことがないだろうと、部屋にある彼女の持ち物を捨てている主人公。
その痕跡を部屋から無くすことで忘れようとしているのでしょう。
しかし、その中で「Tシャツ」を捨てようとした時、彼はふと我に返りました。
いつか気まぐれに彼女が恋人として戻ってきてくれるかもしれない。
そんな淡い希望が、この歌詞パートから伝わってきます。
急にいなくなってしまったその存在を、完全に頭から消してしまうのは難しい。
彼は忘れようとしながらも、どこかで戻ってきてくれることを期待しているのでしょう。