今年も海へ行くって
いっぱい 映画も観るって
約束したじゃない
あなた 約束したじゃない
会いたい……
出典: 会いたい/作詞:沢ちひろ 作曲:財津和夫
2人は生前にたくさんの未来の話をしました。
やってみたい経験、行ってみたい場所、食べてみたい料理。
まだ経験したことのない出来事が2人を待っていたのです。
「いつか2人で行こうね」と約束したはずの願いは叶うことはありませんでした。
1人で体験しても意味がありません。
2人だから、あなたとだから行きたい場所で、あなたとだから体験したい出来事だったのです。
「約束を守ってよ」「まだ何個も残ってるのだから消化しないと」。
言葉では約束が叶わなかったことを憂いていますが、心境は違います。
「約束を守るために会いたい」「あの場所へ行くために生き返って欲しい」。
主人公の想いはただ1つ、「もう1度会いたい」だけなのです。
主人公の心模様が読み取れる
自分と向き合う時間
波打ち際 すすんでは
不意にあきらめて戻る
海辺をただ独り
怒りたいのか、泣きたいのか
わからずに 歩いてる
出典: 会いたい/作詞:沢ちひろ 作曲:財津和夫
主人公は海に行き、黄昏れているようです。
誰もいない海辺には静寂の中にただ波の音だけが響きます。
周りの環境に気を取られずに自分の心と真っ直ぐに向き合うことができるのが海辺なのです。
主人公も自分の心と真正面から向き合ってみました。
そこで心の中は乱れ、淀んだ渦になってしまっていたことに気づきます。
2度と会うことのできない悲しみと約束を守ってくれなかったことへの怒り。
この怒りは本当に憤慨しているのではなく、怒ることで死んでしまったことを実感しないようにしているのです。
自分でも何を思って、何がしたいのかが分からなくなっていきました。
大切な人を失ってしまった虚無感と失望感に、主人公の心は抜け殻のようになってしまったのです。
増していく想い
声をかける人を つい見つめる
彼があなただったら
あなただったら
出典: 会いたい/作詞:沢ちひろ 作曲:財津和夫
街中を歩いている時や誰かと話をしている時。
何をしている時でも、頭の中では相手のことを思い出してしまっています。
似たような人を見る度にもしかしたらと胸を弾ませ、当然のように見知らぬ人により心は傷ついていくのです。
心が何度傷ついても、「もしかしたらあの人は生きているのかもしれない」という希望が捨てられません。
それほどまでに簡単に受容できるような出来事ではないのです。
なぜなら主人公の想いが今もなお、少しも色褪せることなく募っているからでしょう。
それどころか会えないという現実が、想いをより強く、大きなものに変えてしまっているのです。
この歌詞からは主人公の止めどない想いから期待してしまう切ない心が伝わってきました。
主人公の願い
遠くへ行くなと言って
お願い一人にしないで
強く、抱きしめて
私のそばで生きていて
出典: 会いたい/作詞:沢ちひろ 作曲:財津和夫
ここでは主人公の叫びと心からの願いが綴られています。
それでも叶うことのない想い。
この世から去ってしまった人に、生きている人の想いが届いているかは分かりません。
しかし届いていたとしても、もう叶うことのない願いを叫ぶ主人公には胸を締め付けられます。
叶わないかもしれなくても、届かないかもしれなくても、主人公は自分の想いを叫び続けるのです。
それが今の自分が想い人に対してできる最大の気づかいだから。
亡くなってしまった人を忘れなければ、自分の心の中に生き続けてくれます。
この先ずっと忘れないために、心に刻み込むように想い人への気持ちを声に出しているのではないでしょうか。
【会いたい】歌詞意味考察〜まとめ〜
大切な人への想いが伝わる楽曲
この楽曲は大切な想い人を亡くしてしまった主人公の心情が綴られた1曲でした。
歌詞の意味を読み解くと、主人公の深い愛情と悲しみが伝わってきます。
いなくなってしまった現実を簡単には受け入れられず、会えない時間を重ねるほど想いは増してきました。
頭の中を巡るのは楽しい記憶や輝かしい思い出たち。
その幸せだった日々を鮮明に思い出すことで、主人公は相手のことを感じようとしていたのです。
2人で交わした約束はもう叶うことはありません。
しかし主人公は心の中では分かっていても、それを認めないのです。
その約束が叶わないことで、約束は生き続けます。
主人公は大好きだったあの人のことを忘れないために、約束のことを繰り返し歌っていたのではないでしょうか。