「ホームにて」の全編を覆いつくす、なんともいえない優しいメロディ。

まるで都会の慣れない生活にズタズタになった心をほっこりさせてくれるイメージを感じます。

「ホームにて」に登場する主人公は、男性なのか女性なのか、設定がはっきりしていません。

しかし、ふるさとに残した家族を人一倍思う、熱い感情の持ち主だということはわかります。

主人公は地元の高校を卒業すると同時に集団就職で東京にやってきたのでしょう。

家計を助ける。田舎からやってきた多くの同志と同じ目的をもってやってきたのです。

主人公の心には密かな希望もありました。

田舎を離れて初めてやってきた花の大東京。

いったいこの先、どんな楽しいことが待ち受けているのか。

ワクワクする気持ちを抑えきれずに上京してきたのでした。

しかし、そんな夢はあっという間に消え失せたのです。

東京に待っていたもの。それは今まで感じたこともない「現実」でした。

誰も挨拶してくれない。誰も話しかけてくれない。誰も親切にしてくれない。

仕事で失敗したらものすごく怒られる毎日。

そんな辛い時でも誰も助けてくれない。

ああ、これは憧れていた大都会・東京の現実なのか。

主人公はいたたまれない気持ちで毎日を過ごすしかありませんでした。

ふるさとは優しい母のよう

しかし、しばらくしたら何人かの友達もできました。

なけなしのお金で夜のネオン街にも駆り出されました。

今まで見たこともない夜の世界。

ネオンライトが途切れることなく活気にあふれる夜の世界。

でも、主人公はそんなきらびやかな場所が全く性にあいません。

ああ、早く帰りたい。帰って思いっきり羽を伸ばしたい。

主人公は初めて行った夜の街でも、思うことはふるさとのことばかりでした。

ただ、何度か足を運ぶうちに主人公は夜の街にも慣れてきました。

そしてもし、主人公が女性の設定だったとしたら…。

もしかしたら主人公はネオンきらめく夜の世界で働いていたのかもしれません。

ただ目的はただ1つ。

家計を助けるためだけだったのです。

たくさんの誘惑と人間のエゴを垣間見せるネオンの世界。

主人公がそこでもまれてしまったのは避けられない事実だったのでしょう。

ふるさと行きの乗車券は何物にも変えられず

都会での生活は、主人公に孤独という現実を嫌というほど味わわせました。

人知れず涙を流した夜は数え切れません。

絶望と葛藤のはざまで何度、ため息をついたことでしょう。

かすかに期待していた都会での暮らし。

しかし、そこには心を満たしてくれる何物も存在していませんでした。

ただ、唯一主人公の心に希望と太陽を注いでくれるものがありました。

それがふるさとです。

大好きな母を思わせるふるさとです。

都会で受けたたくさんの心の痛手も、ふるさと行きの切符を握りしめることでどこかへ吹き飛んでくれました。

そんな切符はもうたくさん、東京の部屋の机の引き出しにあります。

でも、ふるさとがあり続ける限り、主人公は元気に東京に戻れるでしょう。

ふるさとは、どこまでも広くて大きい青空にそっくりでした。

まるでなんでも優しく包み込んでくれるお母さんそのものように。

ふるさとに帰れる人、帰れない人

年末年始、だれもがふるさとに帰省できるわけではありません。帰れる人、帰れない人がいます。

手土産を一杯もって家族の元に帰る人もいれば、事情があって帰りたくても帰れない人、それぞれの事情があるのです。

「ホームにて」は、ふるさとに帰る人の喜びと、都会に残る人、両方の心情を描いた楽曲ではないでしょうか。

誰もが空色のキップを持って、空色の汽車に乗って、ふるさとに帰りたい…そんな心がしんみりする楽曲です。

あの人もカバーしている「ホームにて」

【ホームにて/中島みゆき】気になる歌詞の意味を徹底解釈!手嶌葵や高畑充希もカバー♪の画像

2015年1月に放送された向井理主演「新春ドラマ特別企画 わが家」の主題歌に、高畑充希が歌う「ホームにて」が起用されました。

ミュージシャン槇原敬之も、大阪から上京してきたとき「ホームにて」を聞き涙したそうです。そして自らがカバーしてテレビ番組で披露しました。

ジブリ映画『ゲド戦記』(2006)、『コクリコ坂から』(2011)の主題歌を歌った手嶌葵も「ホームから」をカバーしています。

多くのファンのみならず、多くのミュージシャンからも愛される歌、それが中島みゆき「ホームにて」なのです。

でも中島さんの曲にはまだまだ名曲がたくさんありますよ。

1998年2月4日リリースの中島みゆきの35枚目の両A面シングルです。もう1曲は「命の別名」。共に、テレビドラマ『聖者の行進』の主題歌に起用されました。ミスチルの桜井和寿率いるBank Bandにもカヴァーされるなど、長い間幅広い層に支持され、出会いや縁を歌ったその歌詞から結婚式の定番ソングとして定着しました。

こんな曲もどうですか?

NHKのドキュメント「プロジェクトX~挑戦者たち」のオープニングテーマとして話題となった「地上の星」と両A面として発売された「ヘッドライト・テールライト」。ゆったりと優しい曲調に、少ない言葉ながら胸を刺す中島みゆきの歌詞を解釈してみました。

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