孤独で不器用な“ヨーコ”

ダウン・タウン・ブギウギ・バンド【港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ】歌詞の意味を解説!あの娘はどこへ?の画像

横須賀好きだっていってたけど
外人相手じゃカワイソーだったねエ
あんまり何んにも云わない娘だったけど
仔猫と話していたっけねエ
前借り残したまんま
一と月たったらおサラバさ
アンタ あの娘の何んなのさ!
港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ

出典: 港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ/作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童

米軍基地のある横須賀ですから、外人の客も多いはずです。

下を向いてしまう彼女を想像した主人公の胸は、少しだけ痛んだでしょう

酔客の相手をするのが仕事なのに、人あしらいは苦手で不器用なところがあるのでしょうか。

3番の歌詞では踊りが上手いと初めて褒められていたのに、4番では同情を誘う孤独な姿が出てきます。

自分のことを話そうとしないのは、夜の世界ではよくあることかもしれません。

男たちの相手で疲れた心と体を癒やしてくれるのは、拾ってきた小さな相棒だけです。

仔猫の話を聞いた主人公は、少しだけホッとしたでしょう

それと同時に愛おしい感情も込み上げてきたはずです。

そんな気持ちを現実に引き戻すように、男のきついひと言が最後に飛んできます。

彼女が踏み倒したお金をこいつから回収できるかもしれない。

男はそう思ったのではないでしょうか。

あと少しで逢えたのに…

本心を言い当てられた主人公

ダウン・タウン・ブギウギ・バンド【港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ】歌詞の意味を解説!あの娘はどこへ?の画像

たった今まで坐っていたよ
あそこの隅のボックスさ
客がどこかをさわったって
店をとび出していっちまった
ウブなネンネじゃあるまいし
どうにかしてるよあの娘
アンタ あの娘に惚れてるね!
港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ
港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ

出典: 港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ/作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童

いよいよ主人公は“ヨーコ”に近づいてきました。

それなのにあと少しというところで、すれ違ってしまったのです。

何軒もの店を渡り歩いてきた彼女ですから夜の世界に染まっているかというと、そうではありません。

よくありそうなことで機嫌を損ねて、またどこかへいってしまったのです。

戻ってくるのかどうかは、誰にも分かりません。

横浜から横須賀へと流れてきて何軒も店を変わり、これから先行くあてはあるのでしょうか。

彼女は元々夜の仕事に向いているわけではなくて、事情があってこの世界に入ってしまったのでしょう。

毎晩好きでもない酒を飲んで好きでもない男たちの相手をして、疲れ果てて夜明け頃に部屋へ帰ってくる。

昼過ぎまで寝て二日酔いで目が覚めたら少しだけ仔猫の相手をして、日が暮れたら嫌々店へ出勤する。

そんなことの繰り返しに、きっとうんざりしているのではないでしょうか。

主人公は、たまたま彼女がどこかの店で相手をした男のひとりに過ぎないはずです。

それでも主人公にとっては、そんな彼女のどこかに忘れられない魅力があったのでしょう。

何軒も彼女を探し歩くうちにこの店の男から、ついに本心を言い当てられたのです。

感情の赴くままにあてもなく流れていく“ヨーコ”に、彼はもう一度逢うことができるのでしょうか。

“語り”で進んでいくストーリー

バンドの演奏はBGM

ダウン・タウン・ブギウギ・バンド【港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ】歌詞の意味を解説!あの娘はどこへ?の画像

ここで描かれているのは、どちらかといえば場末のうらぶれた雰囲気の世界です。

登場人物はどれも一癖ありそうな夜の住人たちばかり。

彼らが口にする彼女の話は、あまりいいものではありません。

1番ではまったく無関心。

2番では悪口を言われ、3番で少しだけ褒められて、4番では同情される。

最後の5番では呆れられてしまう。

彼らの語りから“ヨーコ”がどんな女の子なのかが、だんだんと浮き彫りになってくるのです。

この曲を聴く人にはそれぞれの場面が目に浮かび、少しずつ彼女のことが分かったような気がするでしょう。

肝心の主人公と“ヨーコ”はひと言も発することはありません。

周囲の人達の語りによってストーリーが進んでいくところドラマ映画のようで、これが作詞のセンスです。

そのBGMとしてダウン・タウン・ブギウギ・バンドの演奏があるのです。

間をつなぐリードギターの演奏も、雰囲気を盛り上げる効果がありました。

メロディーを付けた歌詞があるのはタイトルを歌うサビの部分だけで、これらは作曲や編曲のセンスです。

名コンビとなる阿木燿子と宇崎竜童、そしてダウン・タウン・ブギウギ・バンドの見事な仕事ぶりだと思います。

「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」がヒットしたのは、当然だったのではないでしょうか。

学生時代に出逢った二人

宇崎竜童にとって最大の幸運とは?

ダウン・タウン・ブギウギ・バンド【港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ】歌詞の意味を解説!あの娘はどこへ?の画像

この曲の前年に「スモーキン・ブギ」をヒットさせた、ダウン・タウン・ブギウギ・バンド

リーゼントにサングラス、白のツナギという外見はインパクトがありました。

しかしあまりにもアクが強すぎて、少し軽く見られているところもあったように思います。

その彼らが更にインパクトのある「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」を大ヒットさせたのです。

場面が目に浮かぶ阿木燿子の歌詞と、宇崎竜童の語りはあまりにも斬新でした。

公私共に良きパートナーでもある二人は、その後ヒット曲を量産することになります。

宇崎竜童が学生時代に同級生の阿木燿子と出逢ったのは、素晴らしく幸運なことだったのでしょうね。

山口百恵に提供した名曲

ダウン・タウン・ブギウギ・バンド【港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ】歌詞の意味を解説!あの娘はどこへ?の画像

「横須賀ストーリー」