「少し歪んだ応援歌」の真相
アイツの幸せ喜べますか? あのコのもの欲しがってませんか?
果たして自分は特別ですか? it's me, why don't you kill me?
グロテスクな僕を愛せますか? 本当は泣きたいんじゃないですか?
今を生きるパスはお持ちですか? it's me, why don't you kill me?
出典: グロテスク feat.安室奈美恵/作詞:Ken Hirai 作曲:Matthew Tishler and Daniel J Plante
自問を繰り返すサビ部分。
自分の中の醜い部分を、つらつらと二人が歌います。
【it's me, why don't you kill me?】は、【私よ(僕だよ)、殺してみない?】と訳せます。
もちろん、これは自分に問いかけるフレーズ。
本音と建前で生きる世の中で、キラキラと輝くJ-POPを歌う彼らが放つ言葉だからこそ、より強いメッセージ性を感じますよね。
【本当は泣きたいんじゃないですか?】は、周りの目を気にして本音を全て押し殺す自分に向けた、唯一の救いの言葉。
心に突き刺すまるでナイフのような言葉の中に、「本当にその生き方でいいの?」と嘲笑うように、でも優しく問いかける自分の姿が見えるはず。
人の幸福を喜べない自分に今を生きる権利はあるのか
アイツの幸せ喜べますか? あのコのもの欲しがってませんか?
果たしてあなたは特別ですか? it's me, why don't you kill me?
グロテスクな自分愛せますか? 本当は泣きたいんじゃないですか?
今を生きるパスはお持ちですか? it's me, why don't you kill me?
出典: グロテスク feat.安室奈美恵/作詞:Ken Hirai 作曲:Matthew Tishler and Daniel J Plante
2番のサビはもちろん、最後の大サビも同様のことが言えます。
これまでと違うのは、大サビでは確実に「自分」に問いかけているということ。
【果たしてあなたは特別ですか?】【グロテスクな自分愛せますか?】の部分から、自分の根幹を揺るがしてきていることが分かりますね。
表裏や本音と建て前があるのは人間の定め。
そんな人間の性を平井堅は「グロテスク」と表現しました。
グロテスクな自分を認め、愛せていますか?という普遍的な問いが投げかけられています。
浮き彫りになる自分のグロテスク
拍子抜けするほどあっけない謝罪
「す」の一文字入力すればすいませんと予測変換
心ない指先の謝罪 Someone said「I hate you」
空が青く澄み渡るほど 風が優しく流れるほど
私のため息が浮き彫り Someone said「I hate you」
出典: グロテスク feat.安室奈美恵/作詞:Ken Hirai 作曲:Matthew Tishler and Daniel J Plante
携帯電話で「す」と入力と真っ先に表示される「すいません」という言葉。
指一本ですぐに入力可能な「すいません」は心からの誠心誠意の謝罪とは言いにくいですね。
そんな自分に向けてまたどこかから聞こえてくる【I hate you】。
心を伴わない謝罪をツールを使って伝えた自分に嫌気が差しているのでしょう。
どこまでも青く澄み渡る空。
優しい風が頬を撫でます。
美しい光景に似合わないため息が浮き彫りになります。
そんな自分にも嫌気が差しやはり聞こえるのは【I hate you】の声でした。
失ってしまった瞳の奥の光
素直に生きる あなたは言う
その目の奥に光がない
出典: グロテスク feat.安室奈美恵/作詞:Ken Hirai 作曲:Matthew Tishler and Daniel J Plante
建前で本音を隠し、本当の自分を取り繕っても、隠し切れないものがあります。
ここでいう「あなた」は自分以外の他者とも考えられますが、客観的に自分を見つめる自分自身とも取れます。
自分を一番よく知っているのは、他でもない自分自身。
自分の中の素直な部分が、建前で取り繕う自分の目には光が見えないと訴えています。
人の不幸は蜜の味?
アイツの不幸せは好きですか? あのコと本音で喋れてますか?
心であざ笑ってないですか? It's me ,why don't you kill me?
グロテスクな私愛せますか? 本当は嬉しいんじゃないですか?
明日を生きるパスはお持ちですか? It's me ,why don't you kill me?
出典: グロテスク feat.安室奈美恵/作詞:Ken Hirai 作曲:Matthew Tishler and Daniel J Plante
人の不幸は蜜の味、と昔から言うように、もしかしたら本心ではアイツの不幸を望んでいるのではないか。
自分自身の中に生まれる、自分に対する猜疑心。
あのコと喋っている時、本当に嘘をついていないだろうか。
同情するような振りをして、実は心の中ではあざ笑っているのではないか?
自分に対して生まれる疑念は後を絶ちません。
自分自身でさえ信じる事のできないグロテスクな自分を、愛することができるでしょうか?
やはり本当は人の幸せより不幸の方が嬉しいのではないか。
そんな自分に、明日を生きるパス、つまり資格はあるのだろうか?
【It's me ,why don't you kill me?】
自分の中から、こんな自分はもうやめにしない?という声が聞こえています。