やい やい
遊びに行こうか
やい やい
笑えや 笑え
らい らい
結んで開いて
らい らい
羅刹と骸

一つ二つ三つで
また開いて

五つ六つ七つで
その手を上に

松の樹には首輪で
宙ぶらりんりん

皆皆皆で
結びましょ

出典: 結ンデ開イテ羅刹ト骸/作詞:ハチ 作曲:ハチ

タイトルにもある“羅刹”とは一体何なのでしょうか。

実は羅刹というのは毘沙門天の眷属とされる魔物のことです。

人を誘惑し、また誘惑に乗った人(ある時は誘惑にのらない人も)を食べてしまうという恐ろしい魔物です。

一緒に遊びましょうと誘うように登場したのはこの羅刹かもしれません。

そして羅刹を一緒に遊んでしまった人は、食われて“骸”、いわゆる死体になってしまったのではないでしょうか。

曲の雰囲気も確かに不気味な感じがしましたが、深めて考えてもやはりちょっとばかり闇のある楽曲な感じがしますね。

宴はますますたけなわで……

下らぬ余興は手を叩き、
座敷の囲炉裏に焼べ曝せ

下賤な蟒蛇墓前で逝く
集り出す親族争いそい
「生前彼ト約束シタゾ」
嘯くも死人に口は無し

や や や や 嫌嫌嫌

かって嬉しい花いちもんめ
次々と売られる可愛子ちゃん

最後に残るは下品な付子(ぶす)
誰にも知られずに泣いている

出典: 結ンデ開イテ羅刹ト骸/作詞:ハチ 作曲:ハチ

羅刹が参加していると思われる宴は、時を経てますますたけなわになってきているようです。

しかし盛り上がる宴では何だか良からぬ話ばかりが出ているようで、あまりこの輪に加わりたいとは思わないかも……。

こんな状況とメンツで花いちもんめをしようというのはスゴイですよね。

ただきっと言い出しっぺは“自分は可愛いから売れ残らない”と自身がある可愛子ちゃんなのでしょう。

みじめに残る子はいつも誰にも知られず泣いているわけです。

売れ残って泣いたことのない可愛子ちゃんは、きっと次も無邪気に花いちもんめをしようと呼びかけるでしょう。

こうしたふとした部分に“無邪気が持つ鋭い針”が描かれているように思います。

やい やい
悪戯しようか
やい やい
踊れや踊れ
らい らい
結んで開いて
らい らい
羅刹と骸

三つ二つ一つで
息を殺して

七つ八つ十で
また 結んで

高殿(たたら)さえも耐え兼ね
火傷を背負い

猫は開けた襖を
閉めて行く

出典: 結ンデ開イテ羅刹ト骸/作詞:ハチ 作曲:ハチ

この作品の最初の方に登場した片足無くした猫は、骸ではありませんし、この宴に参加したことを後悔して逃げ出したのではないでしょうか。

このブロックでは“猫は明けた襖を閉めて行く”と書かれています。

猫はあまりにも無邪気で凄惨な宴の場にどうしても居ることができなくなったのかもしれません。

魔物たちが棲んでいるのはむしろ現実世界の方?

結局皆様他人事(結局皆様他人事)
結局皆様他人事(結局皆様他人事)
結局皆様他人事(結局皆様他人事)

他人の不幸は
知らんぷり!

やい やい
子作りしようか
やい やい
世迷えや世迷え
らい らい
イロハニ惚れ惚れ
らい らい
羅刹と骸

一つ二つ三つで
また開いて

五つ六つ七つで
その手を上に

鳥が泣いてしまわぬ
内にはらへら

一つ二つ三つで
また明日

出典: 結ンデ開イテ羅刹ト骸/作詞:ハチ 作曲:ハチ

どんなに無邪気であろうが、誰かが傷つけられているならそこから救い出すのが本当の道徳でしょう。

しかし、どんなに傷ついている人がいても、歌詞にあるように自分の身に火の粉が飛びそうな出来事や、触らぬ神に祟りなしというような場面では、人は見てみぬふりをしてしまうのかもしれません。

もしかしたらこの楽曲は、現実の狭い世界で起きている派閥同士の争いやスクールカースト、いじめなどを抽象的に歌っているのかもしれません。

悪鬼羅刹の如く、その喉猛らせ、
暴れる蟒蛇の生き血を啜る。
全ては移ろうので御座います。
今こうしている間にも、様々なものが。
はて、何の話をしていたかな?
まあ、そんな与太話は終わりにしましょう。
さあ、お手を拝借。

一つ二つ三つで また明日

出典: 結ンデ開イテ羅刹ト骸/作詞:ハチ 作曲:ハチ

この楽曲の最後の部分は、まるで現代のワイドショーや報道番組のことを言っているようです。

世間にもたくさんの羅刹はいて、その羅刹がはびこる現代社会で普通の人間は細々と暮らしていかなければならなくて……。

羅刹によって起こる陰惨な出来事を、マスコミは一時的に盛り上げて伝えるけれど、数日もすれば忘れて次のニュースへ……の繰り返し。

羅刹の棲む世界なんて、誰かが傷つく出来事なんて“そんな与太話”程度にしか思われないのかもしれません。

こうして見てみると、この楽曲は現代社会の闇を描いているメッセージ性の高い楽曲と言えるのかもしれませんね。

おわりに

2018年3月14日に最新シングル「Lemon」の販売が開始になった米津玄師さん。

彼の原点ともいえるボカロP時代の作品には、今に繋がる“米津さんぽい世界観”が溢れています。

ボカロP時代の楽曲を知らない人も、昔からのファンも、色々な楽曲の根底にある彼の美意識や価値観を自分なりに掘り下げてみると新しい発見がありそうですよね。

そして2018年もさらに飛躍していくであろう米津さんの姿は、本当に頼もしいですよね!

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