『The Professional feat. IO』

『The KING』から匂い立つThugな日常

The Professional feat. IO/ANARCHY

今回はかなり危険な香り漂う楽曲を紹介させていただきます。

京都MUKAIJIMA TOWNからの刺客ANARCHYの『The Professional feat. IO』です

一介の不良少年からリアル・ギャングスタ、『The KING』に登り詰めたヒップホップ・ドリームの実践者。

『The Professional feat. IO』でANARCHYが描くのは刺激と欲望に満ちた彼らの日常です。

IO from KANDYTOWN

ANARCHY【The Professional feat. IO】歌詞を解釈!欲深いこの街とは?の画像

12人のラッパーと共に作り上げた傑作アルバム『The KING』。

『The Professional feat. IO』はその中の1曲です。

タッグを組むのは世田谷発のヒップホップクルーKANDYTOWNのIO(イオ)

ANARCHYが昔気質のアウトローならKANDYTOWNは新世代の都市型バッドボーイズといえるでしょう。

そんなIOが綴るのは都会の夜を生き抜くプロフェッショナルとしての流儀です。

『The Professional feat. IO』で2人はどのような物語を紡いだのでしょう?

ここからは『The Professional feat. IO』の歌詞に込められた意味を解釈付きで紹介していきます。

コレがKINGのスタイル

常に少数者側の上級者

ANARCHY【The Professional feat. IO】歌詞を解釈!欲深いこの街とは?の画像

彼女が欲しがる高級ブランド
背伸びしても手に入れたいから
先振り込め報酬は
バカとハサミと金は使い方
目的地まではウーバー
赤信号も青になる また魔法使う常習犯
少数派側の上級者

出典: The Professional feat. IO/作詞:ANARCHY,IO 作曲:KM

今回は唐突ですがフック(サビ)の歌詞の内容から見ていきましょう。

ラップにおけるフックはJ-POPと同様、楽曲の持つテーマを司ることが多いです

またポピュラーミュージックのサビには大きく分けて2種類があるとされます。

1つは楽曲の進行と共に登場人物の心情が変化してゆくタイプ。

そしてもう1つは楽曲のテーマを強調するために何度も同じフレーズをリフレインするタイプです。

『The Professional feat. IO』ではフックの歌詞が変わらないことから後者だと推察できます。

そして言葉を変えつつ、ANARCHYが一貫して言及するのが最終行。

「自分はあくまでもマイノリティの代表、そして稼いだお金は仲間とシェアする」

これはKOHHBAD HOPといった人気ラッパーにも受け継がれているANARCHYの哲学です

ご利用は計画的に

我儘な彼女=Bitchに贈る高級品はANARCHY流の成功の証でしょう。

彼は幼少期の貧困体験からお金の持つ大切さ、そして怖さを誰よりも知っています

だからこそANARCHYは貯金をせず湯水のようにお金を使うのです

全身の刺青への投資(推定〇百万?)はヒップホップドリームの象徴且つ、ブランディングも兼ねています。

そしてもっとも大切にしているのは稼いだお金を仲間とシェアし、人生を謳歌することです。

一流ビジネスマンのように、タクシーではなくUberを呼んでスマートに仲間をエスコート。

そしてANARCHYが通れば彼のオーラに気圧され、道はモーゼ十戒のように開きます。

一聴すると単なる享楽主義を歌っているようで実は深い意味が込められているのです。

良い子の皆さまはくれぐれも真似はせず、ご利用は計画的に...。

The Professional from Minority

Bボーイズムとサタニストの共通項?

ANARCHY【The Professional feat. IO】歌詞を解釈!欲深いこの街とは?の画像

あの雲が通り過ぎたら始めるよ
たしなむ程度にジャックダニエルを
新しいタトゥー何入れようか
悪魔が抱えた裸の女
オリジナル生めば発明家
履きつぶして愛着湧いたチャックテイラー
弱点は最大の武器ラップでは
毎日書く恥ずかしいラブレター

出典: The Professional feat. IO/作詞:ANARCHY,IO 作曲:KM

ANARCHYは自身の主張をしばしばサタニスト(悪魔信仰)に例えます。

サタニストの実情について日本で語られることはあまりないでしょう。

彼らは大罪として虚栄自己欺瞞美意識の欠如などを挙げています。

その多くはBボーイズムとも重なるところがあるのです。

3行目と4行目ではサタニスト的世界観を刺青のモチーフに想定しています。

もちろんANARCHYは悪魔崇拝者ではありません。

ラッパーとしての美意識に共感する哲学を取り入れているのでしょう

またファッション・アイコンとして自身が消費されていくことへのささやかな抵抗も忘れません。

ハイブランドで身を固めつつも彼の足元には昔から愛用しているコンバースのスニーカーが...。

同時にラップで愛を伝えてしまうことに羞恥を感じている自身をさらけ出します。