復興支援ソング「花は咲く」

「花は咲く」復興ソングとして込められた歌詞の意味を教えますの画像

「花は咲く」はNHKによる東日本大震災の被災地、そして被災者の方々の復興支援のために制作されたチャリティーソングです。 作詞の岩井俊二、作曲の菅野よう子は二人とも被災県の出身で、歌唱も被災地の出身やゆかりの深い著名人が多く関わっています。 オリジナルのバージョン以外にも多くのひとに歌われ、2015年にはコンピレーションアルバム「ハナハサク」が発売されました。 そのアルバムに収録されているもの以外にも、多くのアーティストがこの歌を歌っては自身のアルバムに収録しています。 被災によって亡くなったひとの目線で作ったという「花は咲く」。 この歌にはいったいどんな思いが込められているのでしょう。

時の流れ

命の芽吹き

真っ白な雪道に春風香る
わたしはなつかしいあの街を思い出す

出典: https://twitter.com/kokeyama/status/708630685259411456

冬から春へと季節が流れていく、時の流れが描かれています。 震災の起きた3月はまさに冬から春へ移り変わるころですが、それ以外にも春は命が芽吹く季節です。 すべてを凍り付かせる冬から、新たな命が生まれる春へ。 真っ白な色のない世界から、緑や花の色があふれる世界へと様変わりしようとしています。 その中で「わたし」は「あの街」の姿を思い浮かべます。

叶えたい夢もあった変わりたい自分もいた
今はただなつかしいあの人を思い出す

出典: https://twitter.com/kokeyama/status/708630685259411456

「あの街」には叶えたかった夢も、変わりたいと思っていた自分もいたのでしょう。 それは大事なことでしたが、今となってはただ懐かしいものとなっています。 そして過ぎた過去に自分が抱いていた思いより、「あの街」にいた懐かしい「あの人」のことが気がかりだと言っているのです。 「なつかしい」という言葉は、時を隔てた向こう側のことを指しているようでなんだか遠く感じてしまいます。 歌の中の「わたし」にとって「あの街」や「あの人」との間には、時だけでなく超えることのできない大きな隔たりがあることをこの言葉で表現しているのかもしれません。

誰かの歌が聞こえる誰かを励ましている
誰かの笑顔が見える悲しみの向こう側に

出典: https://twitter.com/kokeyama/status/708630685259411456

聞こえてくる「誰か」の歌は、悲しみに暮れる「誰か」を励ましています。 「悲しみの向こう側に」というのは「悲しみを乗り越えた先に」ということでしょう。 そっと寄り添い励ましてくれる「誰か」に応えるように…。

やがて笑顔になれるだけの気持ちの余裕ができるようになるだろうと未来の姿を見ています。

花は花は花は咲く
いつか生まれる君に
花は花は花は咲く
私は何を残しただろう

出典: https://twitter.com/kayaryuulove/status/662265429595787265

悲しみの積もる冬はやがて春になり、花咲く季節がやってきます。 花は咲き、実を結び、種子を残します。 そうして流れゆく時間の先に生まれてくる子どもたちへ、「私」は何か残せただろうかと自問しています。

夜明け

夜空の 向こうの 朝の気配に
わたしは なつかしい
あの日々を 思い出す

出典: https://twitter.com/goro0607/status/855847430020931584

間もなく夜が明け朝がやってきます。 暗い夜は悲しみか苦しみか、辛さか寂しさかそれとも恐れか。 けれどそんな夜もやがて明けます。 空の端が白んで、頭上を覆っていた真っ黒なスクリーンにも藍色や紫、だいだいと色彩の変化が生まれます。 少しずつ明るさを取り戻していく様子に、「わたし」は過ぎ去った日々を思い出しています。

傷ついて 傷ついて
報われず 泣いたりして
今はただ 愛おしい
あの人を 思い出す

出典: https://twitter.com/happyy_grant/status/770946642946035712

決して楽しかったばかりではなく、傷ついたこともうまくいかずに泣いたこともたくさんありました。 そんなことですら「今」となってはいとおしく感じるのでしょう。 「今はただ 愛おしい」は「傷ついて~泣いたり」した「あの日々」と「あの人」の両方にかかっているのではないでしょうか。 辛いこともあった日々もかけがえのないものとして残っているのではないでしょうか。 そしてその日々の中でともに生きていたのだろう「愛おしい あの人」を思い出しているのでしょう。