SiMの『Same Sky』をピックアップ!
ジャパニーズ・パンクロック、ジャパニーズ・ハードコア。
「ジャパニーズ」とはいえ英詞が大半を占め、やはりパンク発祥の欧米へのリスペクトが強いのだと実感します。
あるいは日本語パンクに対するコンプレックスもあるのかもしれません。
日本語と英語がシームレス!
英詞と日本語詞が半々?だから何なの?
と、思ってしまうぐらい何の違和感もない、というより言語にとらわれない楽曲です。
メロディも、そして感情爆発のシャウトも、ただただ「SiMらしい」のひと言に尽きます。
何よりこのMVの英詞部分には和訳がつき、日本語部分には英訳がつく親切設計!
海外のSiMファンも言語の壁なく楽しめる曲なのです。
さて『Same Sky』。MVを観ると男女の関係を描いているようですね。
どんな物語が繰り広げられているのでしょうか。
『Same Sky』の歌詞の意味に迫ります!
一度失った信頼は取り戻せない
この曲の登場人物は「僕」と「君」。
男性と女性だと仮定して読み進めてみましょう。
彼女の目的は彼?
嗚呼、帰る術をとうに捨てた君は
夜が帰るのを待つフリで微笑みかける
出典: Same Sky/作詞:MAH 作曲:SiM
「君」は帰れなくなったわけではなく、自ら帰れない状況を作ったようですね。
夜が去っていけば次に訪れるのは朝。
彼女はまるで終電を逃したかのようにただそこにいて、時間が過ぎるのを待っています。
一見、暇つぶしのように見えるわけですが、この曲の主人公はただの暇つぶしではないことを理解しています。
彼女は目的があってそこから動かないのです。
“ah I know what you want from me,
(貴方がしたいことはわかっているわ)
close your eyes and kiss me”
(目を閉じて私にキスして)
命の音までも聞こえる程に
出典: Same Sky/作詞:MAH 作曲:SiM
実は彼女、主人公が現れるのを待っていたのではないでしょうか。
帰れない状況を作り、もうどこにも行けないから朝を待っている演技。
いざ彼が目の前に現れると、あたかも彼の求めに応じてあげるというような挑発的なセリフを吐きます。
彼女は彼とともに過ごすことで心臓の鼓動が高鳴り、「命」を実感するのでしょう。
もしくは「命を実感するの」と嘘を言って相手を喜ばせようとしているだけなのかもしれませんね。
嘘が壊したものとは
月灯りの下 二人結い交わした からっぽの言葉
you felt alive, I knew it's a lie
(君は生命を実感し、僕は嘘だと悟っていた)
just stop, stop talking
(もう、止めてくれよ)
出典: Same Sky/作詞:MAH 作曲:SiM
とてもロマンチックな光景が描かれています。
プロポーズにはうってつけという状況ですが、残念ながらそういうわけではありません。
もしかすると、彼女はプロポーズに近い言葉を彼に伝えたのかもしれませんね。
あなたがいないと生きていけない。あなたと一緒に生きていきたい。
「交わした」とありますから彼もそれを受け入れ、表向きは愛を誓い合ったということになるのでしょう。
しかし彼は冷静です。彼女の言葉には裏があることに気づいています。
彼がとてつもなく不幸な男のように感じますが、そうとも限りません。
嘘を糾弾しないまま偽りの愛を受け止めてくれる彼に、彼女も騙されているのですから。
お前だけ苦しいかのように
弱音吐くだけなら楽だろう
tick-tack-toe is over
(○×ゲームはもう終わりさ)
ひと滴の毒で愛を汚して
出典: Same Sky/作詞:MAH 作曲:SiM
彼女のことは「君」と歌っていますから、この歌詞の「お前」は彼自身を俯瞰しているのだと推測できます。
彼女の嘘を糾弾して騒ぎ立てることは可能です。でも彼はそうしません。
どうして心から愛してくれないんだい?と問いかけないのです。
おそらく、そこまでこだわる必要のない相手だと割り切ってしまったのでしょう。
丸バツゲームは9つのマス目の陣取りゲームです。
2人合わせてたった9手、あっという間に勝敗が決まります。
彼らのゲームは彼女が出す次の手が丸見えで、結末が予想できてしまうのではないでしょうか。
そんなことに時間や労力を割くのはバカバカしいと感じているのかもしれません。
「毒」とは、彼女の嘘のことだとすれば分かりやすいですね。
ひとつ嘘をつくと、その嘘を隠すために別の嘘をつき、嘘が連鎖していきます。
たったひとつの嘘が、二人の信頼関係をじわじわと壊していったのです。