「八月の陽炎」ってどんな曲?
大正製薬「コパトーン」のCMソング
伊藤あさひや秋田汐梨が出演する大正製薬「コパトーン」のCMのために書き下ろされた楽曲です。
夏と部活をテーマに描かれた映像に彩りを添えるちょっとした甘酸っぱさが印象的です。
日焼け止めの商品ということで、夕暮れや陽炎といったものが意識されています。
どちらかというと「夜」のイメージが強い彼らの楽曲ですが、「八月の陽炎」は昼と夜の間のイメージです。
美しさと荒々しさと
サウンド面で印象的なのは、イントロからずっと鳴り続けるギターのアルペジオ。
美しくもちょっと不安げな響きに、青春の不安定な心がにじみ出ています。
対して、間奏の荒々しいギターの歪んだ音もまた、青春の揺れる心を表現しています。
荒々しいギターの後に、グッと静かになってまた響くアルペジオが夕暮れの空に溶け込みます。
歌詞を紐解く
十代のむき出しの心
歌詞全体から感じられるのは、まさに青春。
誰もが経験する十代という魔法の時間を言葉にしたような歌詞です。
まだむき出しでちょっとしたことでも傷つき感動できる心の歌ともいえます。
自分のものなのに上手くコントロールできない心、言葉にできない感情、そんな経験あるのではないでしょうか。
大人になってしまう前の大切な時間を歌った歌詞を紐解いていきましょう。
しっくりこない感じ
言葉はファッションではないからさ
飾れど重ねど、どうも上手くキまらないもんだな
正しさと間違いのあいだに 悲しさと勘違いの愛に
何度も折り合いをつけてきた
出典: 八月の陽炎/作詞:はっとり 作曲:はっとり
”どうも上手くキまらない”というフレーズに、この歌の気分が集約されているように思います。
自分なりに良いと思って飾ってみても、いつもどこかしっくりこない…。
何が良くないのか分からないし、良くないとも思わないけど、何かが違う感じだけが残ります。
周りがみんな素敵でカッコよく、かわいく見えちゃって、自分だけがイケてないように感じる。
そんな気持ちに何度も折り合いつけてきたけど、本当は誤魔化してるだけだと知っています。
イライラするような、落ち込むような、複雑な十代の心が表現されています。
「分かってるよ!」って叫びたくなる、あの感じです。
あの頃を思う
待った無しの人生でいつも待ち合わせて
少しの居場所を分け合った
運命は作り話と言った彼女が女神にみえた八月の陽炎
出典: 八月の陽炎/作詞:はっとり 作曲:はっとり
とても切なく秀逸な歌詞だと思います。
”少しの居場所を分け合った”ということは、いまは分け合っていない=別れたということでしょう。
巻き戻せない人生という時間の中で、一瞬時間を共にした人への思いにふける。
まさに陽炎、思い出の中でゆらゆらと漂っている彼女の姿を追っています。
”運命は作り話”と言った彼女は、きっとどこか冷めて達観したような人だったのかもしれません。
でも、何か痛みを知っている彼女だからこそ、”運命は作り話”と言ったのでしょう。
だから、そんな彼女に主人公は心惹かれ、いまは一緒にいないのに陽炎を追ってしまうのです。