言葉は壁やガラスであってほしくはないのに
想いを伝えた代償はいつも割れた孤独なんです
正しさをおしえてくれたのは間違えて出会ったあなただった
出典: 八月の陽炎/作詞:はっとり 作曲:はっとり
何をやってもうまくいかなくて、いつも孤独だけが残る、そんな気持ちです。
自分なりに一生懸命に心を込めて伝えても、なかなか相手の心には届かない。
でも、そんな挫折のようなものを経験したからこそ、本当に必要な人に出会うことができる。
”間違えて”というのは、とても重要なフレーズです。
意味がないように思えたり、遠回りに思えることでも、実はその経験をしたから気付けることがあります。
経験は、無駄と思った時に本当に無駄になってしまうものです。
高く飛ぶためには一度しゃがんで力をためるように、苦い経験も飛ぶための力なのです。
受け入れられる歓び
いつもそうだった
分かっていないふりで じつは知ってたんだ
少しの居場所を譲ってくれてありがとう
出典: 八月の陽炎/作詞:はっとり 作曲:はっとり
物事の正解や道理なんて、本当はみんな知っているのかもしれません。
1+1が2になることはみんなが知っています。
けれど、なぜ1と1を足すと2になるのかを説明できる人は少ないでしょう。
本当のことなんて知っているけど、なんでそうなるのかなんて分からないし、分かりたくもない。
そんな不安定で揺れ動く自分を、丸ごと受け入れてくれた”ありがとう”です。
そのままの君でいいんだ、と居場所をくれた歓びでしょう。
現実と夢の間
サンセット 本当のことは一つだって知りたくないのさ
サンセット あこがれた通り僕は正直に僕を騙してる
茹だるような紫の影、君への想いも無理に冷ました夏
濡れたままのシャツ
出典: 八月の陽炎/作詞:はっとり 作曲:はっとり
すごくエモーショナルで切なくなるようなサビの歌詞です。
サンセット、夏の夕暮れはどこか寂しくて楽しかったことが遠ざかってしまうような気がします。
夕暮れから夜がやってくる、つまり夢の中から現実に戻される比喩ではないでしょうか。
本当のこと=現実なんて知りたくもない、だから夢から覚めてないように自分を騙す。
陽炎が出るほど暑いのに、君への想いを無理に冷ましてみても、シャツは濡れたまま。
きっと、君への想いは冷めてなくて、ゆらゆらと揺れる陽炎に重ねてみているのだと思います。
大人になった自分
地平線の向こう 八月の陽炎
きっとずっと十代の自分が居る
見たくない真っ黒のそれに生き先を尋ねてた
出典: 八月の陽炎/作詞:はっとり 作曲:はっとり
ここで、八月の陽炎というタイトルが登場します。
陽炎の向こうに十代の自分を見ているということは、主人公は少し大人になったのでしょう。
”真っ黒のそれ”とは、十代の頃の自分。
青臭くて、傷つきやすくて、純粋で、恥ずかしくて、だけど愛しい十代の自分です。
成長した自分は、十代のむき出しの心が照れくさく見えたりします。
だけど、一生懸命毎日生きていた青春に、自分の行き先を尋ねてみたくもなるのです。
青春という季節を過ぎて、歳を重ねたからこそ見える景色です。
過ぎた時間へのお別れ
サンセット 本当のことは一つだって知りたくないのさ
サンセット あの人みたいに僕は正直に僕を騙してる
茹だるような紫の影、君への想いも無理に冷ました夏
乾いてゆくシャツ
出典: 八月の陽炎/作詞:はっとり 作曲:はっとり
最初に登場したサビとは、最後の一文だけが違います。
しかし、この一文が違うだけで意味は大きく変わり、時間の流れを表現しています。
濡れたままだったシャツが、”乾いてゆく”。
つまり、君への想いに整理をつけて前に進みだした主人公の心もようの例えでしょう。
シャツというのは、君に夢中になった青春の象徴。
そのシャツが乾いてゆくというのは、青春が過ぎて時間も気持ちも次に向かっているということです。
そう考えると、前の三行は同じ歌詞でも視点が違っているかと思います。
最初のサビとは違って、少し成長して懐かしむように思い返しているのではないでしょうか。