甦る記憶
ここでは彼との最初の出会い、そして幸せ過ぎて頭の中がお花畑だった頃を思い出しているようです。
聞こえてくるのは彼の甘い言葉。
思い出すのは彼のアタシだけに見せるかわいい笑顔。
アンタはいつだってそう
フライデーナイトフライでハイやれるよ愛だって
持ってるよ 俺持ってるこれ ゴムじゃないんだぜ
フライデーナイトフライでハイやれるよまだまだ
持ってるよ 俺持ってるよ 結婚しよう
出典: NE-TAXI/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
面白くて退屈なんてしている暇がなかった彼との日々。
ちょっと遠い未来まで見えていたはずなのに…。
でもそれは彼女の勘違いだったようです。
いつだって彼はただのお調子者で、軽い男だったのです。
だけど、終わってしまった恋というのは不思議なもので、良い瞬間ばかりを思い出してしまうものなのでしょう。
それが振られた恋ならなおのこと。
さっさと新しい恋を
「男の傷は男で癒す!」
辛い失恋をした後は、新しい恋を探す気にもなりません。
でも、あんなヤツ早く忘れてしまいたい!
そう思って、「彼を忘れるために」無理矢理とりあえずの恋をしてみる。
しかし結局そんなことをしても虚しくて、みじめになるだけなのです。
古傷はもう痛まないの
若くはないけどお金はあるから流行りの先端追ってよ
痛くもないから痒くもないから昔の男を追ってよ
出典: NE-TAXI/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
この2行は一見とても矛盾をしているような歌詞に思えます。
彼女は「時代の最先端を追ってよ!」と言いながら「過去を追ってよ!」と言っています。
しかし過去と未来はつながっているのです。
新しい恋がしたいと言いながらも、その恋の相手にはつい過去の恋の相手である彼を重ねてしまっているのです。
失恋の古傷は痛まないけれど、過去のものとなった彼との恋の爪痕は消えていないのでしょう。
かさぶたになってはがれそうになったら、わざとはがして再び傷にして、またかさぶたになって…。
そんなことを繰り返して決して傷が消えないように大事に大事にしているのかもしれません。
彼のことなんか、忘れたいけど、忘れたくないから。
伝えたかったこと
最後に彼に伝えたかったことって一体何だったんだろう…。
私は何をそんなに彼に伝えようと頑張っていたんだろうか…。
恋を突然失った時、相手に伝えたいことが多すぎて結局何も伝えることができなくなることもあります。
彼女は彼に何を伝えたかったのでしょう?
そしてその意味とは?
それは、ただ、彼女の日常の中にある小さな幸せのようなものだったのです。
ここではまたテンポが16ビートから8ビートへと変化しています。
それによって思い出を呼び起こすような、スローモーションで甦るような、そんな感覚に入り込みます。
他愛もないことだったのよ…。
ねぇタクシー 本当はねベランダに咲いた花の事を
ねぇタクシー アイツにも教えてあげたかっただけなの
ねぇタクシー 本当はねベランダに咲いた花の事を
ねぇタクシー アイツにも教えてあげたかっただけなの
出典: NE-TAXI/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
好きな人とはどんなに小さなことでも、他愛のないことでも、共有したいと思うのがごくごく自然なことです。
他人にとってはなんてことないありふれた事でも、ふたりにとっては大切な思い出となるのです。
彼女はそんな日常のありふれた他愛もないものを共有したいと思っていただけなのではないでしょうか。
しかし、彼にはそれが「重い」と感じたのです。
そもそも恋愛に求めるものがお互いに違いすぎたのでしょう。
彼女にとっては「それだけで幸せ」な事が、彼にとっては「そこまで求められても…。」な事だったのです。