現実では叶えられない夢を自分の妄想で叶える主人公。

楽しく妄想世界に浸っている筈ですが、サビに入ると同時に歌われているのは真逆の意味を持つ歌詞です。

まるで誰かの問いに返答しているかのような印象にも感じられます。

もしかしたら主人公は妄想に浸ってばかりの現状について何かを訊ねられているのかもしれません。

主人公にとっての恋人といえば、自分の妄想の中にいる彼女のこと。

妄想の世界というのは、主人公にとっては何もかもが思い通りに行く楽しい夢のような世界の筈です。

この恋人は妄想をする度に何度でも会える恋人なのに、なぜか回数も限定されています。

これは一体どういうことなのでしょうか。

妄想の中の恋人達の間に本当の「愛」はない

溢れた愛はノンシュガー 口に出すビター

出典: ノンシュガー/作詞:はっとり 作曲:はっとり

この曲の中で綴られている愛について思い浮かぶのは、主人公と妄想の恋人の姿です。

「ノンシュガー」は日本語に直すと「砂糖不使用」つまり「甘くないもの」という意味になります。

これが主人公と妄想の中の彼女の関係を指すならば、彼らの間にある愛が甘くないものであると捉える事ができますね。

2人が幸せな恋人同士だったとしても、それは全て主人公の妄想であり、都合の良い関係でしかないのです。

「ノンシュガー」の歌詞は、どれだけ甘い関係に見えてもそれは見せかけでしかない事を表しています。

2人の間には本当の愛は存在していないという事を示唆しているのかもしれません。

主人公の過去と現在

明かされる主人公の人生

天才失敗 もう凡人で好かれたい

出典: ノンシュガー/作詞:はっとり 作曲:はっとり

ここでの主人公は、何かしらの挫折をした事がある人間だと予想できます。

彼は天才と呼ばれる程の凄い実力を持った人物だったのにある失敗を機に挫折したのかもしれません。

いつの時代も天才と呼ばれる人々は、天才ゆえに孤独である事が多いものです。

かつて天才であった主人公もまたその1人だったのかもしれません。

しかし天才は孤独であると同時に、その才能ゆえに多くの人々からの注目を集める事ができます。

愛はなくても多くの人々から尊敬の眼差しを向けられていた筈です。

けれど凡人に成り下がってしまった元天才の主人公では誰の目も集める事はできない…。

愛される事を知らないまま凡人になってしまった主人公だからこそ強く誰かに愛されたいと願うようになったのかもしれません。

妄想の中の恋人を生み出してしまったのもきっとそんな主人公の願望があったからだったのでしょう。

堕落していく主人公

明けない夜はない?
どっか行こうよ、もう歪な完成も受け入れてかなきゃ

出典: ノンシュガー/作詞:はっとり 作曲:はっとり

ここでは主人公が再び妄想の世界に浸っている事がわかります。

しかし以前のような楽しさだけで満ちていた頃とは違う、不穏な空気もチラつくのです。

一度妄想の世界に疑念が生じ始めた為、主人公の妄想は以前と同じ姿を保てなくなってきているようですね。

主人公は最初に妄想していた女性とは別の女性とも恋人関係を築くようになってしまったようです。

さらに彼が現実世界をおざなりにして妄想にばかりふけている様子がMVに描かれています。

これは妄想ばかりに囚われ、堕落した人生を送る主人公の現状を示唆しているのかもしれません。

妄想の中で手にした本当の「愛」

主人公と彼女の中に残る互いへの愛

悲しくないよ 一度きりの恋人
溢した愛はノンシュガー 口に出すビター
悲しまないで はじめての恋人
「このままではダメね」口に出すビター

出典: ノンシュガー/作詞:はっとり 作曲:はっとり

多くの女性と恋人関係を築くようになってしまった主人公。

彼にとって一番最初に付き合っていた妄想恋人は、もう過去に付き合っていた人という扱いになっているようです。

最初のサビから2人の関係性には大きな変化がありました。

改めて見返すと主人公の中にあった筈の彼女への愛がなくなってしまった事を示唆しているようにも見えます。

しかし気遣う様子もあるので、彼女に対する愛情が全てなくなっているわけではないようです。

以前のような情熱がなくなっただけで、まだ彼女を好きな気持ちは残っているのかもしれません。

そしてそれはきっと主人公に見捨てられてしまった彼女の方も同じなのでしょう。

堕落していく主人公の姿に嘆いている、そんな彼女の姿が想像できます。

こうして現状に悲しむ事ができるのは、きっと彼女が主人公の事をまだ想っているから…。

妄想の産物でしかなかった筈の彼女の中に生まれた主人公への愛。

この愛、そして男の妄想劇はどのような終わりを迎えることになるのでしょうか。

全ての終わりに主人公が手にした「シュガー」の正体