咲いていた花は「ひな菊」、飾らない清楚さのある花ですね。
それを使って作る首飾りには純粋な愛が宿るでしょう。
歌詞には、花の名前と花を編む様子が描かれています。
でも歌詞をよく見るとこれは花を編む娘が語っている歌詞ではありません。
「首飾りを作る娘を見ている」という視点で綴られているようです、しかも過去形。
開花した花を首飾りを作っている本人なら「編んでいます」と表現したでしょう。
この後に「あなたのため」と続けることもできますね。
実際の歌詞にある「いた」は首飾りの製造工程を見ていることを表しています。
野に咲く花で娘が作った首飾り。それは誰のために作ったのでしょうか。
娘を見ている人物はそれがとても気になっています。
「やさしさ」も一緒に編み込まれた首飾りを受け取れる人は、誰なのか。
明け方に見た夢を記すように歌は進行していきます。
「妖」の要素も忘れずに
おお 愛のしるし 花の首飾り
私の首に かけておくれよ
あなたの腕が からみつくように
出典: 花の首飾り/作詞:菅原房子 補作詞:なかにし礼 作曲:すぎやまこういち
愛が形となった「首飾り」。それはまだ娘の手の中にあるのでしょう。
首飾りを手にした女子たちは、それを望んでいる人物がいることを知っているのでしょうか。
それを編んだ本人から受け取るのであれば愛は真実となるでしょう。
愛と優しさでできたものを手にしたい、しかも差し出した「首」にかけて欲しいのですね。
大地に咲く花を使った首飾りなら、自然で純真な愛であることは確かです。
でもここで歌詞には妖しげなリリックも組み込まれています。
ただ首にかけてもらったのなら、そのままお互いが目を合わせて微笑むでしょう。
歌詞はそれが「からまる」ことを願っているのです。抱き締めるやハグするとも違う表現ですね。
花の命も編み込まれた首飾りには、より強い愛が宿るのでしょうか。
美しい娘の手で作られた愛は、決して離れることの無い妖しさと優しさをまとっています。
ここでも歌詞は夢で見た出来事を思い出しているのでしょうか。
第2章が始まります
1番は花の中で楽し気にさざめく女子たちを、夢の中で見ているような歌詞でした。
そしてこの後は第2章ともいえる物語が綴られます。
愛はどこに行ってしまうのか。歌詞を見ていきましょう。
残したままで
花つむ 娘たちは
日暮れの 森の 湖に浮かぶ
白鳥に 姿をかえていた
出典: 花の首飾り/作詞:菅原房子 補作詞:なかにし礼 作曲:すぎやまこういち
形となった愛を受け取ることを願う人物。
少女たちにとっては王子のような存在かもしれません。
湖と白鳥。歌では「しらとり」と歌いますが、この物語をイメージさせます。
激しい戦いの末、王子は悪魔を討ち破るが、白鳥たちの呪いは解けない。絶望した王子とオデットは湖に身を投げて来世で結ばれる。
メッセレル版以降、オデットの呪いが解けてハッピーエンドで終わる演出も出てきたが、原典とは異なる。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/白鳥の湖
三大バレエの1つ「白鳥の湖」の結末だけを載せました。
湖に住む白鳥たちは、王子の手によって幸せを手にすることもできるのです。
娘のままでいると王子に見つけてもらえないかもしれない。
でも白鳥になれば王子が助けてくれるのです。
このような物語を花を編んでいた娘は知っていたのでしょうか。
例え知っていたとしても、そこには通じ合う2人がいなければお話も続きません。
1番の歌詞に出て来た首飾りを求めた人物は、王子だったのでしょう。
夢から醒めたように本当の愛を求めてたどり着いた湖。
そこで見たものは「白鳥」と残された「首飾り」でした。
思いを残したまま違う「姿」になってしまった愛する人を救えるのでしょうか。
差し伸べて
おお 愛のしるし 花の首飾り
私の首に かけて下さい
はかない声で 白鳥は云った
出典: 花の首飾り/作詞:菅原房子 補作詞:なかにし礼 作曲:すぎやまこういち
自分が手にしたかった愛が形になった「首飾り」。
ここでは愛を伝えるツールではなく、より重要な役目を果たすものとなっています。
「首飾り」を作ったのは白鳥になる前の少女たち。
本当なら人間のままで、自分の思いを打ち明けるはずだったのでしょう。
ところが「白鳥」に変わってしまったので、愛を告げることができなくなってしまったのです。
元の姿に戻るためには思い合っている人からの愛が必要なのでしょう。
でも鳥ですから言葉にすることはできません。
小さな声で「かけて欲しい」を伝えた様子が切なく描かれています。
白鳥の細い首に編まれた花を、差し伸べるようにかけたのでしょう。
願うことしかできない2人の愛はどのような結末を迎えるのでしょうか。