心の隙間を埋めてくれるものを
探して何度も遠回りしたよ
たくさんの愛を受けて育ったこと
どうしてぼくらは忘れてしまうの
出典: 嵐の女神/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
次は、母親に翻弄されてきた人生が浮かび上がります。
ミリオンセラーを記録したシンデレラガール「宇多田ヒカル」。
一見華々しい人生を送ってきたように見えます。
でも心にはいつも、ぽっかりと大きな穴が開いていたのでしょう。
3行目では自分が愛されていると語っています。
しかしここには、もっと愛されたいという感情が隠れているような気がしてなりません。
切ないメロディーのせいでしょうか?
母親から受けたい愛情があり、それがあれば安心できるような、そんな気持ちが読み取れるのです。
最後の行は今はその愛情を受け入れることができていない証拠です。
子供の頃は愛されていたはずなのに、今はなぜ?
そんな気持ちなのでしょうか。
嵐の後の風はあなたの香り
嵐の通り道歩いて帰ろう
忙しき世界の片隅
出典: 嵐の女神/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
母親が嵐のように興奮してしまったら、子供は不安でたまらなくなるでしょう。
1行目は、興奮状態から覚めたら普通のお母さんに戻るという意味なのかもしれません。
涙を浮かべながらそんな生活を送る宇多田ヒカルの孤独な姿がイメージできます。
徐々に受け入れようとするけれど…
受け入れることが愛なら
「許し」ってなに?
きっと… 与えられるものじゃなく、与えるもの
どうして私は
待ってばかりいたんだろう
出典: 嵐の女神/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
ここでは愛について深く考えていますね。
3行目の歌詞は、愛を与えてもらおうとばかり考えていた自分に気付くシーンです。
でも子供なら、親に無条件の愛を与えてもらいたいと考えるのは当然のこと。
それが当たり前なのだからそれで良いのです。
しかし親の無条件の愛を受けることができない子供はどうすれば良いのでしょうか?
宇多田ヒカルが導き出した答えは、自ら愛を与えること。
愛を与えられなかった子供が大きく成長し、やがて自分から愛を与えようと考える。
とても切ないストーリーだと思います。
自分を愛してくれない人なんて、なかなか愛することはできないもの。
他人なら愛そうと思えないかもしれませんが、母親だったらなんとかしようとするのかもしれません。
とても切なく健気な最後のフレーズに涙が出てきます。
それでもなんとか宇多田ヒカルが母親を徐々に受け入れだしていることが分かります。
この先の歌詞で、宇多田ヒカルは母親を本当に受け入れることができるのでしょうか?
ストレートな歌詞に泣ける
お母さんに会いたい
出典: 嵐の女神/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
お母さんはいるはずなのにどうして会えないのでしょうか?
はじめて聴いたときは、この曲がお母さんへの追悼ソングなのかな?と思いました。
しかしこの曲がリリースされたのはお母さんの死から3年前の2010年。
すると、この曲はお母さんがまだ生きている頃に作られた曲なのです。
歌詞に登場する“お母さん”とは?
歌詞にたびたび登場する“お母さん”。
そのまま母親のことだと理解すると、意味が解釈できなくなってしまう箇所があります。
もしかしたら歌詞に出てくるお母さんは、無条件に自分を愛してくれた“お母さん”なのではないでしょうか?
そう考えると全体の意味が通り、しっくりくるのです。
“お母さん”は宇多田ヒカルの理想とするいわゆる“お母さん”。
いつも家にいて家事をしている、嵐を呼ぶことのない普通の“お母さん”なのではないでしょうか。
この1行の歌詞は、そんな昔のお母さんにもう一度会いたいという意味なのかもしれません。
ついに言えた!
分かり合えるのも生きていればこそ 今なら言えるよ
ほんとのありがとう
こんなに青い空は見たことがない
出典: 嵐の女神/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
感謝の気持ちをようやく伝えることができました。
この3年後には宇多田ヒカルの母親は亡くなってしまったのが皮肉です。
しかしこの言葉を生前に音楽で伝えることができて、本当に良かったですね。
受け入れがたい人に感謝の気持ちを言えた宇多田ヒカルは素晴らしいと思います。
母親を受け入れ感謝の気持ちを伝えた後の景色は、初めて見るくらい美しいものだったのでしょう。