伝えたい想いがあるから
サウンド、歌詞、ミクちゃんの繊細な歌声、美麗なイラスト。
それらが混ざり合って、「東京アクアリウム」という楽曲の世界観を作りあげています。
登場するのは2人の人物。
すなわち、歌の主人公と、「君」と呼ばれる人物です。
歌の主人公は「こちら」としか自称しておらず、性別・年代も聴き手の想像に任されています。
さらには「君」も、実際に登場するわけではありません。
主人公が思い浮かべた「君」の姿が登場するのみです。
主人公が「君」に伝えたいメッセージは、どんな想いを含んでいるのでしょうか。
ふさぎこんだ気持ち
希望を見出せなくて
明日に希望なんて失い
生きてく意味なんて亡い
枕潰して潜る布団の中のCOSMO
出典: 東京アクアリウム/作詞:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。 作曲:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。
透明感も感じるサウンドに反し、歌詞は沈んだ言葉から始まります。
主人公はずいぶん落ち込んでいる様子です。
布団にもぐりこんで、枕に頭を隠してしまいます。
布団をかぶると、不思議な感覚にとらわれることもあるものです。
町の喧騒や周りの音が小さくなって、目も閉じれば暗闇の中で静かな時間を過ごせます。
主人公はそれを、宇宙に例えているのです。
宇宙をただひとり彷徨っている錯覚か、あるいは本当にひとりになりたかったのでしょう。
MVではミクちゃんが、宇宙飛行士が被るヘルメットに似たものを身につけています。
沈み続けてはいられない
未来なんて興味失い
ただ吸って吐く人生
息苦しくて覚めた
宇宙から顔を出した
出典: 東京アクアリウム/作詞:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。 作曲:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。
気持ちの落ち込んでいる主人公は、将来に明るい展望を持てないでいます。
将来の夢がある人は輝かしく見えますが、全員がそうならなければいけないわけではありません。
なんとなく生きていても、時間は過ぎていくものです。
これまでの主人公は、ずっとそうやって生きてきたのかもしれません。
しかしここで、転機が訪れます。
だんだん息苦しくなってきたのです。
ここで主人公が感じた閉塞感には、2つの意味があると思います。
1つ目は単純です。
前の歌詞で、主人公は暗闇の中にこもってしまいました。
ずっと顔を埋もれさせていたので、身体的に息苦しくなったのです。
そして2つ目は、より抽象的。
気持ちが落ちこんだまま生きてきたことに、苦しさを感じたというニュアンスです。
人は気がかりなことがある時、気がかりの正体から目を背けようとすることがあります。
正面切って立ち向かうには勇気が必要に見え、自分の手には負えないと思うからでしょう。
見ない振りをしていれば、一時は気楽に過ごすことができます。
ところが、それは問題を本質から解決したことにはなりません。
問題を先送りしたに過ぎず、気がかりはまだそこに居残っているからです。
いずれ無視しきれない瞬間が訪れて、勇気を出さなければならなくなります。
主人公にとって、気がかりと向き合うべき時がやってきたのです。
そして主人公の気がかりとは、「君」に関わることでした。
想いを放ちはじめる
ノイズに埋もれるメロディー
胸につめた祈望の音は
夜の海の中に消える
壊れかけの蓄音機
出典: 東京アクアリウム/作詞:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。 作曲:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。
おずおずと発信しはじめた想いは、すぐに明瞭なものにはなりません。
雑念やいろいろなもの(ノイズ)が混ざって、まだ微かなものです。
その上、歌の形をとったメッセージは、「君」に届いていない様子。
ずっと黙りこんでいたので、まだ感覚がつかめないのでしょうか。
主人公は自分を蓄音機に例えていますが、ぎこちなく動く機械が想像できるかのようです。
淡い手紙
君に想いを送る
元気でやってますか もう随分経つけれど
こちらは暑いもので 海に沈んでく太陽
出典: 東京アクアリウム/作詞:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。 作曲:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。