主人公は、「君」に手紙を出すことにしたようです。
しばらく連絡を取っていなかったのでしょう、「久しぶり」とでも言いたげな書き出しです。
さらには日没の情景から、時間の経過が感じ取れます。
手紙の内容や文章を考えるために、丸1日を費やしたのでしょうか。
主人公の気遣いや迷いが込められているのかもしれません。
手紙の返事は……
君は幸せですか こちらは幸せですとか
無言のポスト見つめ 嘘で首を絞めつけた
出典: 東京アクアリウム/作詞:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。 作曲:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。
主人公の手紙は続きます。
現在幸福を感じている人は、わざわざ幸福について考える暇を持たないことがあります。
そう考えると主人公は、現状幸せではないのでしょうか。
「君」はどう思って暮らしているのか、相手のことも気にかけています。
しかし、そこには1つの厳しい現実が横たわっていました。
「君」からの返事はないこと。
あるいは、手紙を書いたけれど出せなかったことです。
主人公は手紙を書いたかもしれません。
しかし、投函しなかったのではないでしょうか。
主人公が実際にしたのは、空のポストの前で空想することだけです。
もしも、「君」と文通することができたら。
「君」はどんな返事をくれるだろう?自分は、どんなことを書いて送るだろう……。
心楽しい想像であると同時に、主人公は痛いほど分かっていました。
これは主人公の想像に過ぎず、まるっきり「嘘」なのです。
自分の空想と現実の落差を思い知らされ、主人公はまた落ち込んだ気分になってしまいました。
届かない想い
弾け消えていくメロディー
胸につめた祈望の音を
雫の数だけ奏でて
言の葉 湖のオルゴール
出典: 東京アクアリウム/作詞:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。 作曲:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。
主人公の想いがあふれだします。
しかし、それが「君」に届くことはありません。
表現はされているのに、一番届いて欲しい人には伝わらず消えてしまいます。
歌っているうちに、主人公の目からは涙が溢れてきました。
主人公にとって、「君」がとても大切な相手であったことが分かります。
主人公の願いとは?
奏でた音に気づいて
梳くいあげて欲しいの
君の息の音色を
早く注いで欲しいの
出典: 東京アクアリウム/作詞:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。 作曲:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。
主人公と「君」は、長らく顔を合わせていないようです。
今さら「君」のことで思い悩んだり、手紙を書こうかと空想したり。
主人公は「君」に、一体何を求めているのでしょうか?
その願いの内容がここに書かれています。
本当は、直接想いを届けるほどの積極性はなかったのかもしれません。
もしも「君」が気付いたら……というような、控え目な態度が見え隠れします。
歌詞内に音楽的な言葉が多数登場することから、「息」は楽器を奏でることを連想させます。
同時にここでは、「生命力」や「君自身のぬくもり」という意味も含まれているかもしれません。
つまり控え目な言葉の中には、「君に会いたい」という強い願いがあるのです。
想いの終わり
気持ちを込めた言葉
残りわずかになるメロディー
胸につめた祈望の音を
ひとつひとつを願っては
「君に届きますように」
出典: 東京アクアリウム/作詞:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。 作曲:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。
ただ歌にしているだけだった思いに、さらに強い気持ちが加わりました。
歌詞のひとつひとつ、言葉のそれぞれに、願いを込めて歌います。
それは「君」への強い思いでもあると同時に、歌が終わりかけていることの暗示でしょうか。
いくら「君」への想いが強くても、言葉の数には限りがあります。
伝えたいことをすべて伝えたら、その後に言葉が残らないからです。