今閉じているドアの鍵を開け、扉を開き、先に進むこと。
まずは鍵を開けなければなりません。鍵を開ける行為は「決断」を表しています。
そして解錠したら扉を開く。これは決断を「実行に移す」という意味でしょう。
優しい曲調で始まるこの曲ですが、出だしから「ウッ」と呻いてしまいました。
「決断だけで終わるな、実行するところまで考えろ」
なんとも厳しい歌詞です。たった1行の歌詞で、この曲の全体像を読み取ってしまいました。
人は決断を迫られたとき、その先に見える成功と後悔どちらも頭の中でシュミレートします。
他者とのしがらみ、物への執着が多ければ多いほど決断力を鈍らせる。
決断するなら、それらを手放す覚悟が必要だということです。
D♭onF G♭
どれもが 温かくて
D♭onF G♭ G♭onA♭ A♭
失い 難い いくつかの 光
B♭m G♭
手に入れる為に捨てるんだ
D♭ A♭
揺らした天秤が掲げた方を
出典: 同じドアをくぐれたら/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
次の一歩を踏み出すために、手放さなければならないものがあります。
手放すものの中には、誰かにもらった大切なものもあるかもしれませんね。
たとえば、海外留学に行くのであれば、日本ならではの部活動や学園祭を諦める。
転職するのであれば、今まで積み上げてきた人間関係が転職先では無意味になる。
子どもを産むなら、自由な時間が制限される。
私たちの生活では、さまざまな場面で「決断」を迫られます。
そして無意識のうちに、何かを手放し何かを得る決断をしているのです。
何を捨てるべきなのか迷ったら「天秤」にかけてみればいい。
天秤は2つの重さを比較するための道具で、重いものは下がり、軽いものは持ち上がります。
ジャッジする天秤が「掲げた方」を残すのが正しい、と勘違いした方はいませんか?
掲げる、ということは持ち上げるということ。つまり天秤が掲げるのは「軽いもの」「不要なもの」。
自分の中で天秤にかけ、軽いと判断したものは捨てていけ。
判断に迷う人に、助言をする歌詞です。
捨てずに「引き換える」
B♭m G♭
こんなに簡単な選択に
D♭ A♭
いつまでも迷う事は無い
D♭ D♭onF G♭
その涙 と引き換えにして
E♭onG G♭onA♭
僕らは 行ける
D♭onF G♭/D♭onF G♭onA♭
出典: 同じドアをくぐれたら/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
ひたすら重さを比べて取捨選択をしていく。
単純作業なのだから深く考える必要はないのです。
工場のベルトコンベアに乗ったものを天秤にかけ、重い方を戻して、軽い方をゴミ箱に。
確かに簡単なことです。
ここで注目したいのが「その涙」という言葉。「引き換え」と「捨てる」ことは同義なのでしょうか。
- 軽いものを捨てるために流す自分の涙
- 捨てられる者の涙
どちらも重たいもののように感じます。
だから「その涙」は捨てるのではなく何かと「引き換え」るのかもしれません。
捨てるには重すぎるのです。簡単に捨てられないもののひとつといえるでしょう。
最後まで捨てられなかったもの
A♭ B♭m
もう 気付いたろう
D♭onF G♭
僕に 君のドアは
G♭onA♭ D♭
見えない
A♭ B♭m D♭onF
同じドアを くぐれたら−
G♭ A♭ D♭
と願って たよ
A♭ B♭m D♭onF
さぁ 時は来た 繋いだ 手を
G♭ G♭onA♭ D♭
離すん だよ
A♭ FonA B♭m B
カラ になった手で それぞれの
鍵を受け 取ろう
G♭ A♭ D♭
出典: 同じドアをくぐれたら/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
ここで初めて「君」と「僕」の歌だと分かります。
2人の決断=鍵は違うもので、互いのドアを開けることはできません。
それどころか、互いのドアが見えないのです。
本当は同じ決断をして、ドアの向こうに広がる世界を共有したかったはず。
でも、それは叶いませんでした。
2人の手を塞ぐもの、最後まで捨てられなかったものは「繋いだ手」。
持ち物を捨てるため天秤にかける中で、繋いだ手は「重たい」と判断したのか。
それとも天秤にはかけなかったのか、分かりません。
ここで2人は改めて、天秤にかけたのではないでしょうか。
繋いだ手と、2人の決断。どちらが重かったのか、どちらが掲げられたのかは、歌詞の通りです。
D♭onF G♭
恐らく もう 戻れない
D♭onF G♭ G♭onA♭
いつか 忘れる 君と
A♭
居た場所
B♭m G♭
手に入れる為に捨てたんだ
D♭ A♭
揺らした天秤が掲げた方を
出典: 同じドアをくぐれたら/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
さまざまなものを捨てて、重いものだけを残していく。
こうした作業を続けて、鍵を受け取る準備をしてきました。
ドアを開けて前に進み、やっぱりやめた、ということは許されません。
もし戻れたとしても「君」と居た場所は空っぽです。
なぜなら、鍵を受け取るためにたくさんのものを捨てたから。
「手に入れる為に捨てたんだ」を1番に続き2番でも繰り返しています。
まるで自分自身に言い聞かせているように感じますね。
君にも僕にも「大丈夫」と言い聞かせる
B♭m G♭
そんなに勇敢な選択だ
D♭ A♭
いつまでも迷う事は無い
D♭ D♭onF G♭
その記 憶と 引き換えにして
E♭onG G♭onA♭ A♭
僕らは
B♭m G♭
振り返らないで 悔やまないで
D♭ A♭
怖がらないで どうか 元気で
B♭m G♭
僕は唄うよ歩きながら
D♭ A♭
いつまで君に届くかな
出典: 同じドアをくぐれたら/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
自分たちが今下そうとしている決断は正しいことなんだ!
無理にでも「僕ら」を納得させようとしている印象を受けます。
捨てられなかったのは涙だけでなく、2人が過ごした日々の記憶も同様です。
前に進むためのチケットとして、ドアの手前まで持っていくのでしょう。
ドアの向こうに進んだら、お互い別の世界が広がっています。
自分たちが勇気を出して、軽いものを捨てたからこそ踏み出せた道。
君自身の決断を信じて歩んでほしいと願います。
そして僕の歌声が聞こえている間は「僕と下した決断」も信じて欲しい。
そんな願いを感じ取りました。
最後は自分自身を信じるしかない
D♭ D♭sus4
もう 気付いたろう
D♭ D♭sus4
目の前のドアの鍵を
D♭ D♭sus4
受け取れるのは
D♭ D♭sus4
手の中がカラの時だけ
D♭ D♭sus4/D♭/
ただ一人だけ
D♭sus4/D♭/D♭sus4/
D♭/D♭sus4
出典: 同じドアをくぐれたら/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
悩みに直面し、決断を迫られたとき。
私たちは身近な人に相談をしたり、今ではSNSで意見を求めたりします。
十人十色のアドバイスを受け取って、どれがベストなのか考えます。
きっとそのとき無意識のうちに、頭の中でそれらの意見を天秤にかけています。
自分にとって重要なアドバイスだけ残し、不要なものは排除する。
いつしか手の中には、たったひとつ厳選された言葉だけが残ります。
でも、手の中は空っぽにしなければ鍵が受け取れません。
そこで、誰かのアドバイスや励ましを自分の中で消化して、体の一部にします。
つまり、多くの人に意見を求めても、最後に決断するのは自分自身ということ。
手を空にするのも、鍵を受け取るのも、ドアを開けるのも自分なのです。