歌詞を見ると、対立する言葉が並んでいるのが分かります。
何やら攻撃的な内容です。
歌詞の主人公は破壊衝動に駆られているようにも見えます。
この歌詞が表すのは主人公のいら立ちや葛藤でしょう。
PSYCHO-PASSシーズン3の主人公は2人。
慎導灼と、炯・ミハイル・イグナトフという監視官です。
しかし実は2人共、家族が謎の死を遂げているという過去があります。
監視官でありながら、その謎を追うという2人。
普段の任務では冷徹に犯罪者を数値で裁きます。
一方で本心は、肉親が死んだことに対する悲しみや憤りが消えません。
しかし復讐を誓えば、自分たちも犯罪予備軍に成り下がってしまいます。
それでも捨てきれない人間としての心。
本当の心情をあらわにできない2人には、強い葛藤があるのです。
社会への失望
現実は何時も アタマの外に
獣のような目で見据えた世界には
闇も光も何もない
出典: Q-vism/作詞:Who-ya Extended 作曲:Who-ya Extended
この歌詞では現実世界への失望が描かれています。
ここでいう主人公の視点は、「人間」としての正直な視点でしょう。
この世界では、感情のままに暴走することを悪とみなします。
見かけはそうでなくても、数値が示せばそれは悪。
誰もが己の内に飼う、怒りや恨みを制御しなくてはなりません。
つまりそれが出来ない人間は犯罪者同様なのです。
ここでの主人公の立場は、感情的で感傷的な人間。
つまり社会から見たら犯罪係数の高い、犯罪予備軍の人間ということです。
そのため歌詞でも、非常に危険で荒っぽい表現をしているのでしょう。
しかし自分を感情に任せたところで、救いはありません。
最後の1文がそれを示しています。
そこにあるのは虚無。
社会への失望が窺えます。
矛盾だらけの社会
監視官としての責務
繰り返したセオリー通りの孤独
出典: Q-vism/作詞:Who-ya Extended 作曲:Who-ya Extended
歌詞を見るとどこか主人公の寂しさが窺えます。
作中で出てくる監視官はいずれも冷徹に裁きを下す存在です。
それが作中の社会における決まりであり、正義といえます。
しかしそれは生き物としての人間と相反する部分もあるでしょう。
監視官という役割は、徐々に人間性を失わせます。
これがこの歌詞で意味するところの寂しさでしょう。
家族や仲間を失った過去のことも、同時に示唆しているかもしれません。
色相すら偽って
見渡せば具現化したドグマが立ち塞がる
出典: Q-vism/作詞:Who-ya Extended 作曲:Who-ya Extended
またこのような歌詞もあります。
ここで偽装すると表現されているのは、数値や顔色のこと。
つまり個人的な感情や感傷を抑え込んでいるということです。
そうしてまで、正義のために銃を振るう主人公。
全ては「社会がそう在るから」。
それに尽きます。
ちなみに「ドグマ」とは宗教的な教典のことです。
ここでは社会の行き過ぎた制裁を意味しているのでしょう。
立場と本音に板挟みにされる主人公。
息苦しさが窺えます。
自分の運命を呪う
涙だって毒牙で刺す奇想
出典: Q-vism/作詞:Who-ya Extended 作曲:Who-ya Extended
この歌詞はまさに、作中における社会のことでしょう。
誰しも、悪意だけで感情を高ぶらせるわけではありません。
時に人のため、家族のために自らを投げ出すこともあります。
つまり悲しみから生まれる憎悪もあるのです。
しかし作中ではそんな人にも情状酌量の余地はありません。
色相や数値が全てです。
そんな人の血が通わない制裁を、主人公は疑問に思っています。
歌詞では「信じられない発想」といった様子です。
殺伐すら祈りだった
背後に見たピースをもう一度だけ
for escape my fate
出典: Q-vism/作詞:Who-ya Extended 作曲:Who-ya Extended
そんな社会が出来上がったのは他でもない、人のため。
より良い治安を作るためのシステムです。
結果的にここまで機械的なものになってしまいました。
しかしそれすらも、より良い生活のためだと信じてやまない人がいるのです。
主人公は監視官としての立場があります。
しかし今このまま、前に進むことにはためらいがあるようです。
自分の運命から逃れたいという気持ちが表れています。