大きなひとりごと

楽曲のタイトルにもなっている「独白」は、言い換えるとモノローグのことです。

誰に聞かれることもない、単なる独り言という意味もあります。

この曲はまさに、歌の主人公「ぼく」から「君」への、壮大な独り言なのかもしれません。

会話に話し手と聞き手がいれば、大多数の人が聞き手を意識せずにはいられないものです。

話題を選んだり、相手を不快にしない言い回しを考えたり。

そして最大の懸念は、話したくない本音を避けながら話すことだという人もいるでしょう。

相手にどこまで自分を開示するか?会話は間合いを探りながら行われます。

楽曲「独白園」は、「ぼく」の世界観が溢れだした独り言の世界です。

歌詞にも登場する「箱庭」のように、ぼくの思いが閉じこめられています。

まるで「ぼく」の心の中を旅するかのように、尖って繊細な想いに触れることになります。

数々の言葉の奥に、本当の思いが隠されているのかもしれません。

地獄の門をくぐる

つらい毎日の中で

Welcome to the New HELL 切って張る True Days

出典: 独白園/作詞:GESSHI類 作曲:水谷和樹

「ようこそ、新たなる地獄へ!」

そんな衝撃的なフレーズから、曲が始まりました。

続くのは慣用句「切った張った」を思わせる言葉です。

「切った張った」は、非情であること、殺伐とした状態を意味します。

心穏やかでないことは確かです。

「トゥルーデイズ」は、直訳すると「本当の日々」となります。

おそらく現実世界や、現実で過ごす日々のことを意味するのでしょう。

主人公が過ごす日常は、あまり温かいものではなさそうです。

そして、ここでようやく恋愛めいた「出会い」が登場します。

恋の始まり

出会ったが THE END 想われて Heavy wight

出典: 独白園/作詞:GESSHI類 作曲:水谷和樹

恋の始まりは、幸せでもあると同時に悲劇的側面も持つものです。

恋愛には幸せなことばかりではありません。

心を揺さぶられたり、悲しく感じる出来事もついてきます。

時によっては「1人の方が楽だった」といいたくなることさえも。

ある意味「1人でいる幸せの終焉」とも表現できます。

その上、「ぼく」の恋の進展はとても急速でした。

続く歌詞から、想い人「君」と両想いになれたと分かります。

嬉しいはずのその事実さえ、ぼくにとっては重圧です。

片想いの時は、一方的に想いを寄せていれば良いので気楽に過ごせます。

しかし一度両想いになってしまえば、ある種の責任めいたものが生じます。

交際するのか、しないのか。

結婚はどうする?

一生共に過ごして、相手を守っていくことも考えるのでしょうか。

進展してしまった恋は、将来の責任にもつながっていきます。

それがぼくには重くてしようがないようです。

「君」から離れない

背筋凍らす誰の視線?(ぼく!)
晴れて重みで増す妄想レス
朝から晩まで君、戸惑う。
惚れた腫れたで痛む、恋苦しむ。

出典: 独白園/作詞:GESSHI類 作曲:水谷和樹

妄想と現実がぼくの中で混濁していきます。

ぼくは「君」が好きすぎるあまり、常に「君」のことを目で追ってしまいます。

この曲は全体がぼくの目線で構成されているので、君が視線を恐怖しているかは不明です。

少なくともぼくには、執拗すぎる視線を送っている自覚があるのでしょうか。

「君」のことが頭から離れない自分に戸惑う様子も見られます。

引用の4行目に登場する「惚れた腫れた」も、慣用句の一節です。

これは恋に夢中になっていることを意味しています。

あまりにも夢中になりすぎて、苦しさも感じているようです。

俗にいう「恋煩い」に似た状態かもしれません。

後戻りはできない

揺れ動く心千切れていく音。
元居た場所には戻れない序章。

出典: 独白園/作詞:GESSHI類 作曲:水谷和樹

「君」が好きだという、ぼく自身の思い。

そして両想いになったという事実。

のしかかる責任の重さ。

恋する幸せ。

ぼくの心には、今それらの思いや感情が絡み合っているのでしょうか。

大きな動揺を感じている様子が読み取れます。

難しいのは、相反する思いの全てが真実だということ。

幸せを感じている自分も、責任に押しつぶされそうになっている自分も本物です。

矛盾する思いはどちらも同じぐらい確かで、片方を否定することはできません。

それがぼくを戸惑わせます。

一度恋することを知ってしまえば、分からないふりはできません。

「知らない方が楽だったかも」

と後悔しても、忘れて以前と同じ毎日を送ることはできないのです。