哀愁漂うMVを紹介

「夢みる頃を過ぎても」のMVを監督したのはPennacky氏。

Yogee New Waves、前野健太、YeYeなどの作品も手掛ける注目の若手映像作家です。

映像の主人公は夜の街を行く少年。

彼の淋しげな表情は楽曲の内容にもリンクする部分があるのではないでしょうか。

夜の街へ繰り出した少年は、夜明けまで街の中で物思いにふけります。

夜景をバックに膝を抱えるシーンや道路の真ん中を歩く場面など、絵になる映像群はPennacky氏のカリスマ性を伺わせますね。

夜が明けて彼が辿り着いたのは海。

服のまま海に浮かぶその姿は、現実逃避を思わせます。

最後のシーンで人混みに消えていくその姿は「また変わらない一日が始まる」といったイメージ。

過ぎていく日々の虚しさを表現したような幕切れとなっていました。

時の流れの切なさを描いた歌詞に迫る

リリース前からツアータイトルにしてしまうぐらい、思い入れのあるであろうこの曲。

歌詞に込められたのは主人公に降りかかった悲しい物語です。

ここからは、いよいよその内容に迫っていきましょう!

想像の中では

明け方の街ではいつも
あなたのことを考えています
夢みる頃を過ぎても
幾度となく戯けて見せて
ねえ

出典: 夢みる頃を過ぎても/作詞:佐藤千亜妃 作曲:佐藤千亜妃

明け方になると、楽しかった昔の思い出が過るという主人公。

「夢みる頃を過ぎても」という言葉は、自分がもう子供ではないことを表しているのでしょう。

大人になってしまった自分は、昔のように馬鹿ばかりやってもいられません。

そんな中でも想像の中では楽しそうなあの頃の2人がいる。

思い出せばまた切なさが募りますね。

大人になれない彼

蝶になれない蛹もいるってさ
待ちわびてた旅立ちの日に
その羽が開かないと気づくとき
どんな気持ちで空を見ていたの

出典: 夢みる頃を過ぎても/作詞:佐藤千亜妃 作曲:佐藤千亜妃

蝶になれない蛹というのは「大人になれなかった友達」のことではないでしょうか。

主人公が青春を共にしたその人は、恐らく亡くなってしまったのでしょう。

大人になれないとわかったとき。

すなわち自分の命が長くないとわかったときの気持ちというのは、簡単に想像出来るものではありませんね。

聞いているだけでも胸が締め付けられるような思いがします。

明け方の街ではいつも
あなたのことを考えています
夢みる頃を過ぎても
屈託なく笑って見せて
ねえ

出典: 夢みる頃を過ぎても/作詞:佐藤千亜妃 作曲:佐藤千亜妃

メロ部分を経ると、主人公が昔を引きずっていることにも合点がいきます。

想像の中では、今でもとびきりの笑顔を見せるその人。

彼の時間はその時から止まったままなのです。

悲しみへの対処も

明日に落ちてく
夢から覚めて

あなたの横顔は歳をとるし
あげた花も枯れてしまうだろう
息継ぎが上手くなってきたから
苦しさは思い出せなくなるだろう

出典: 夢みる頃を過ぎても/作詞:佐藤千亜妃 作曲:佐藤千亜妃

この部分は彼の命が長くないとわかったときの描写ではないでしょうか。

彼が大人びていく姿や、花が枯れていく様子が近付いてくる終わりを感じさせます。

大人になれば、どうしようもない悲しみへの対処も上手くなるはず。

今感じている苦しさもいずれは忘れてしまうと言い聞かせる主人公。

しかし、大人になった今も彼を思い出している主人公がいます。

衝撃が大きいほどに、思い出というのは色褪せないものなのでしょう。

未知のことが多い子供時代には、その分記憶に残るものも多いですね。