MVの中では砂浜に寝転がっていたかと思うと、まとめてトーストにされてしまう子ども(?)が登場。
トースターから飛び出したトーストを食べるのも子ども。
奇想天外な内容で実況するのもひと苦労です。
とにかく中毒性のある影山紗和子のアニメーション。
くるりがタッグを組んだのも分かる気がする天才的なクリエイターです。
くるりの繰り出す音楽も自在ですが、影山紗和子のアニメーションには規則性が見当たらない。
文脈やストーリーなどが常人には分かりかねる内容です。
それでも決して難解ではありません。
楽しさや快感原則に身を委ねていれば、自ずと画面に引きずり込まれる迫力があります。
「Confusion is Next!!」
混沌こそ未来だ
少女の絶妙なピンク色の長い髪が波のようにうねる場面が詩的です。
色々な動物が席を埋める食卓の風景も素敵。
食べ物がモチーフになっていることが多いと気付かされます。
食べ物といっても極彩色です。
アメリカ合衆国の身体に悪そうな色の食べ物を思い出させます。
食卓にコックの帽子を被ったネズミが座ってエビフライのようなものを食べようとする。
とにかく発想が豊かで解釈が追いつきませんし、特に何事かのメッセージを受け取る必要もないです。
混沌に身を任せる。
「Confusion is Next!!」の精神です。
カオスこそ未来。
雑食性のサウンドからオリジナルが生まれる
自由な発想がロック音楽の強み
くるりの演奏はブリティッシュ・ロックのプログレ風味であります。
しかし同時にアメリカ合衆国の偉人・異人フランク・ザッパの音楽をも想起させます。
それでいてくるりしか出せない音に仕上がりました。
ブズーキなどの民族楽器の使用はサイケデリック・ロックの伝統でもあります。
様々な音楽的ルーツが混在してこそ、オリジナルな音楽が生まれるのです。
ロック音楽は生まれながらにして混血児ですから。
ごった煮のような魅力がロック音楽の可能性を広げます。
The Beatlesがインド哲学にハマったように。
The Doorsがホーン・セクションを導入したように、自由な発想こそロック音楽にリアルなチカラを持たせます。
夜空には赤い目をしたうさぎたち
謎の生き物のオンパレード
MVの食卓の上の真っ暗な空に赤い目をしたうさぎたちが何羽も耳を伸ばしています。
食卓の上を遊び回る少女の後ろには謎の生物。
このアニメーションに出てくる生き物は皆、謎な存在です。
生き物でありながら、乗り物でもある存在が登場します。
やんちゃそうな少女が乗り回す不思議な乗り物。
レモンが浮かぶ夜空にダイブしていきます。
精緻な解釈は無駄です。
音楽とのシンクロを楽しみましょう。
オルガンとともに安息が訪れる
浜辺で日光浴する爺
岸田繁が演奏するオルガンとともに画面が白くなります。
演奏も混沌としたファズ・ギターの嵐を抜けて穏やかになるのです。
アニメーションの世界もへんてこりんな印象は変わりませんが、なにやら和やかな雰囲気。
浜辺で日光浴をするナイスな爺が登場します。
鯛焼きなのかヒラメなのか絵柄では判断できない魚も日光浴を楽しむのです。
アニメーションは背景だけが動いていきます。
これまでのけたたましさは背後に引くのです。
束の間の休息でしょう。