ワールドワイドな世界観
2020年8月に動画サイトのYouTube上で公開された楽曲「Our Style」
元々の楽曲はニューヨークを拠点に活動するBrasstracksが2017年にリリースしたものです。
原曲の「「Fever」」は歌詞のないインストルメンタル曲ですがクールなナンバーとしてバズっていました。
WILYWNKAは自身のライブでのみ披露をしていましたが、ファンの声に答える形でネットにアップしたそうです。
YouTube上でアップするや否や2021年8月現在で300万回再生を超えるの程の人気楽曲となりました。
今回はそんな世界を巻き込むワールドワイドな楽曲の歌詞について考察をしていきます。
照らす日差しとテラスオープンカフェ
ゆっくりと始まる朝
ゆっくりと始めて
新しい朝を掴んだ
誰にも負けないこの気持ちで
家の鍵を取り外に出てるのさ
出典: Our Style/作詞: WILYWNKA 作曲: Brasstracks
スローなテンポで始まる曲はブラスのメロディに乗せてユニゾンで歌うのが印象的です。
シンプルなドラムのサウンドは曲に軽快さを加え、爽やかさを演出しています。
歌詞はキーが高めのWILYWNKAの歌声と相まって気だるい午前中の感じが出て良い雰囲気です。
ゆっくりと始まっているということは早朝ではなく昼に近いのでしょうか。
1日の始まりを“朝を掴む”と表現しているところに作詞のテクニックを感じさせます。
家の鍵を取りに外に出るということは起きた場所は自分の家ではなかったということですね。
誰にも負けない気持ちで外にでなければいけないということは外に敵やライバルの存在が伺えます。
もしくはそのような心意気で日々を過ごしているのでしょうか。
やわらかな歌詞とは裏腹に若くしてラッパーとして活躍するWILYWNKAの生き方が垣間見えます。
ライムがちりばめられた歌詞
道の真ん中
照らす日差しより膣とテキーラ
テラスオープンカフェで食べるピザ
Jesusありがとうね今日は感謝
出典: Our Style/作詞: WILYWNKA 作曲: Brasstracks
真ん中・テキーラ・ピザ・感謝。
文末の語尾の母音をそろえ、ラッパーらしいライムがリリックに彩りを加えます。
実は文頭でも照らす・テラス・ジーザスと母音をそろえているところに拘りを感じますね。
テキーラは夜を象徴させるもの。
対比の効果が生まれるよう、日差しという言葉を上手に利用しているのです。
道の真ん中とは王道や正道をイメージできます。
日の当たる決められた道ではなくても自分の好きな事をしたいという気持ちの表現ですね。
しかしオープンカフェで食べる食事でピザは一般的で王道のオーダーといえます。
王道でなくても食事などの日々の生活には感謝の気持ちを持っているという姿勢を表現しているのでしょうか。
Jesusは欧米では驚きや困った時によく使います。
韻を踏む役目とともに“感謝”というワードを強調するという上手い使い方です。
世界が終わるときに思うこと
正解は誰にもわからない
この時に何を求めたら?
正解なんて知らないよね。
頭の中では全てが点。
Ah damn
出典: Our Style/作詞: WILYWNKA 作曲: Brasstracks
Our Styleメロディ部分とラップ部分のメリハリがあってライブで盛り上がる理由がわかりますね。
曲も中盤にさしかかり印象的なリリックが並びます。
私が注目したのは“何かわからない”という部分と“全てが点”という部分です。
この時が分からない。
時とは時間の移り変わりや移り変わっていく幅の中の区切りのことですよね。
もちろん時が何かわからないという人はいないでしょう。
また何をする時間かわからないという意味にもとれません。
頭の中で要素は“点”として理解しているものの正解と結びつかない。
何かもやもやと鬱屈とした精神状態を象徴しているのでしょう。
ぼんやりと浮かんでいるものの明確にならないまま時間が過ぎていく。
そんな感覚を歌詞にのせているのではないでしょうか。
矛盾した表現
今すぐ世界が終わるのなら
一緒に死んでくれよ My man
それ聞けたら1人で死ねるぜ
Ah yeah
出典: Our Style/作詞: WILYWNKA 作曲: Brasstracks
死んでくれや1人で死ぬなど物騒な表現が続いてなんだか怖いですね。
人の死生観はその人間の本質が垣間見れて興味深いです。
世界が終わるということは生きている人間はいないことになります。
一緒に死んでと頼まずとも一緒に死ぬことになるでしょう。
“それ”とはその答えを聞けたらという意味にとれます。
一緒に死んでくれるという答えが聞けたら1人で死ねる。
この2つの矛盾が歌詞を難解で奥行きのある世界観にしていますね。
そもそも世界が終わらなくても人はいつか終わりを迎えます。
いきつく先が同じであれば一緒に死ぬかどうかは本来関係ありません。
しかし言葉の裏を読むと世界が終わるその瞬間まで一緒に生きて欲しいとも取れます。
一緒に生きていく、そう心でつながっているMy manの存在があればいい。
そうであればたとえ離れた場所で1人で死んでもつながりを持ったまま安心して終わりを迎えられる。
そんな悲しくも前向きな表現となります。
ちなみにMy manとは兄弟や近い友人の表現です。
はじめは矛盾に満ちた怖い表現に聞こえました。
しかしそう考えるとWILYWNKAの家族や友人との本質的な関わりを感じさせる良い歌詞ですね。