最後に彼女の行く先は……

全てを見ている大きな存在は、それも見越しています。

強がって虚勢を張っている彼女は、もうそうやってしか生きていけません。

本当の彼女ではない、その人生。まさに「張り子」の人生です。猿芝居かもしれません。

それでも、死ぬまでその虚勢を張っていく覚悟で、彼女は生きていくのです。

その猿芝居を演じ切って命尽きた時、彼女がいくのは地獄でしょう。

多くの相手を手玉に取り傷つけてきたのですから。

でもほんとうはただの傷つきやすい、優しい人間だった彼女。

そんな彼女が地獄の責め苦を受けずに済むようにと閻魔様に救いを願うのです。

もう帰らないフラミンゴ

あなたフラミンゴ 鮮やかなフラミンゴ 踊るまま
ふらふら笑ってもう帰らない
嫉妬ばっか残して
毎度あり 次はもっと大事にして

出典: Flamingo/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

全てを見ている傍観者のような存在。もしかしたらそれは”彼”なのかもしれません。

全てわかっている上でわかっていないふりをする。

彼女と一緒の未来は描けないけれど、どこか遠くから彼女の行く末を案じている。

この部分では歌詞には「寂しさと嫉妬」と記載されています。

しかし実際には米津玄師は「寂しさ」とは歌っていません。

聴こえてくるのは「嫉妬」だけ。

一番最初のこのサビの部分では「寂しさ」と「嫉妬」が残されていました。

それが今や残されたのは「嫉妬」だけ。

これは憎しみあって別れたから「寂しさ」が失せたのか。

そうではなく、きっとお互いが心のどこかで同じ魂を持っていることに気付いたのではないでしょうか。

消えた「寂しさ」

口に出すわけでもなく、それを確かめ合うでもなく離れていった二人。

でも同じ魂を持った者だけが感じる何かがあったのかもしれません。

だから「寂しさ」は消えたのです。

表面上は二人、何も変わっていないふりを装いながら。

そして永遠に離れていったのでしょう。

また色を失った街

宵闇に爪弾き 花曇り
枯れた街 にべもなし はらへらり

出典: Flamingo/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

もう帰ってこないフラミンゴ。

”彼”の心は、また色を失っていきます。

MV

ここで、MVをご紹介します。ダークな色彩に包まれた、美しい世界です。

フラミンゴを思わせる真紅の衣装をまとった米津玄師

足を引きずり地下で彷徨います。

”彼”が傷ついた孤独な心をもって生きてきたことの表れでしょう。

光に向かって差し伸べた手には、真紅の爪が舞い踊ります。

”彼女”と、魂が触れ合っている証。

傷が慰められたかのように、足は自然に動くようになりました。

似ている魂を持っていた”彼と””彼女”。

他の誰にもわからない形で、”彼”と”彼女”の中には絆が生まれています。

それは、愛を通り越して憎しみかもしれません。

まるで交通事故のような魂の出逢い。

普通の恋人のような関係になるわけではなく。

人生のうちのたった一瞬すれ違っただけの存在。

それでも否応なく惹かれあった。

そしてどうすることもできないままに通り過ぎた。

憎しみさえ宿したまま。

衝突した車は、魂と魂のぶつかり合いの象徴でしょう。

その横を”彼”がすり抜けていく様は、実際には何も起こってないことを意味づけます。

二人の心の中だけで起こったことだということを。

周りから見れば何も起こっていない。

でも2人の心の中では激しい衝撃が訪れていたのです。

このMVでは、衝突の直後に画面が反転しています。

”彼”と彼女”に永遠の別れが訪れたのでしょう。

元の”彼女”のいない世界に戻っていくのです。

また蘇る乾いた心で”魂と魂の衝突”を他人ごとのように眺めながら。

”彼女”と魂が触れ合っている証の真紅の爪は消え去りました。

孤独な世界へ引き戻されます。

途方に暮れたような顔をして、頭を抱えて。

冒頭のシーンとループしているように見えますが、よくご覧ください。

左耳のピアスが変わっています。

このピアスは中盤に登場した女性のものと同じ。

”彼女”は去っても、魂の絆がここに残っています。

その絆は、途切れることはないのでしょう。 

終わりに

米津玄師【Flamingo】歌詞の意味を独自解釈!フラフラの「フラミンゴ」に翻弄された男の主張とはの画像

「美しい」ということにこだわる米津玄師の言葉選びの美しさは独特の中毒性のある魅力を放っています。

「Lemon」とは正反対ともいえる、少し毒を孕んだ内容の歌詞となっていました。

米津玄師はその音楽を通して、私たちにいろいろな世界を見せてくれるようです。

是非この機会に、ほかの米津玄師の曲にも触れてみてください。

「Lemon」のようなわかりやすい言葉で爽やかな曲が好きな方は「春雷」などはいかがでしょうか。