何か悲しいできごとがあって涙している主人公。
魂の帰る場所が見当たらなくなってしまいました。
主人公は一日中さまよい歩いたのでしょうか。
下を向くと、汚れてボロボロになったスニーカーが目に止まった主人公。
「街」は主人公に対して、ふんぞり返って偉そうに見えたのでしょう。
そこには主人公がいなくても「機能」する、リアルな「何か」があります。
それが腹立たしくて、路上に唾を吐く主人公。
さて、この主人公の年齢は何歳くらいでしょうか?
人によって意見はさまざまだと思います。
おそらく10代後半から20代全般でしょう。
少年から青年へ、少女から女性へと変化する時期です。
「学校」という庇護から離れ、「社会人」として生きはじめる時期も、まさにここです。
人生の転換期に遭遇し、主人公は心のジレンマを簡単に取り除けないのでしょう。
短いが光るフレーズ
Bメロ
Give me a chance(4回繰り返し)
出典: 雨のパレード/作詞:福永浩平 作曲:福永浩平
Bメロは極めてシンプルな歌詞です。
「Give me a chance」のみ。
短いが故に、多くの解釈できるこのフレーズ。
日本語に直せば「僕にチャンスをくれ」です。
しかし、他にも訳があると思います。
例えば「はちきれそうな僕を、どうか助けてくれ」。
「助ける」にあたる英語歌詞はありません。
一般的にはこう訳すべきではないのでしょう。
ですが、主人公は苦しみもがいています。
それを踏まえると、歌詞に「Help」がなくても、「助けが欲しい」と訳したくなります。
当たらずといえども遠からず、といったところでしょうか。
Aメロ(2回目)
頼りない希望へ必死にすがった
確実に迫る明日に
都合の良い嘘をついた
いつだって心惹かれてたフューチャー
あの頃の僕たちはさ
空も飛べると信じてた
出典: 雨のパレード/作詞:福永浩平 作曲:福永浩平
今、自分が持っているだけの「希望」にすがった主人公。
「希望」の分量は少ないです。
「明日」が来ることを盲目的に拒否し、誤魔化しながら生きている主人公。
理不尽な毎日に納得していないようです。
話はそれますが、この年代は「不条理」なことや「理不尽」なことに対して、嫌悪感を示します。
「大人」になり切れず、まだ「少年時代」が忘れられないのです。
やがて「社会人」になり、そういった嫌悪感はなくなります。
むしろ、本人が「不条理」なことを率先してやっていることもあります。
「大人になれない」男性と「大人」な男性、どちらが良いか分かりません。
『Shoes』の主人公は、ちょうどその端境に立っているのです。
2回目のBメロは1回目のBメロと同じ歌詞ですので、掲載は省きます。
サビ
涙が乾かないうちに
このままどこか行こうぜ
いまならさ
どこまでも行ける気がするんでしょ?
夏の星座がどういうもんか
今夜確かめてみようぜ
そしたらさ
あの頃の僕らみたいにまた飛べるかな?
出典: 雨のパレード/作詞:福永浩平 作曲:福永浩平
主人公はここで、誰かに向かって呼びかけています。
高校時代の仲間にでしょうか?
はたまた、純粋だった頃の自分自身に対してでしょうか?
何も怖くなかった頃、夜を徹して「冒険」へ繰り出した主人公たち。
信頼できる仲間も一緒だったのでしょう。
「冒険」の果てで目にした「夏の星座」に心奪われる主人公。
すべてが美しい瞬間ですね。
2番Aメロ
くだらない言い訳を口にしそうだ
壁を強く殴ってみても
なぜか痛くはないもんだ
なんにでも答えがある訳じゃないな
誰しもが手探りならば
僕らは何に従えばいい?
出典: 雨のパレード/作詞:福永浩平 作曲:福永浩平
人生に対して真摯に向き合っているからこそ、「答え」が欲しくなる。
しかし、「世の中の不条理」に向き合ってみてはじめて、「なんにでも答えがある訳じゃない」ことを悟った主人公。
「何に従えばいい?」というフレーズは、意味深です。
そのままの気持ちで主人公が言っているのか、それとも精一杯の皮肉を込めて言っているのか。
おそらく、どちらも混じった感情なのでしょう。
誰に、どこに縋(すが)れば生きていけるのか?という素直な感情。
そして、誰も自分をひれ伏すことはできない、という闘争心剥き出しの感情と。