「Rainbow」と新しい女性像
今でも共感を呼ぶ楽曲
2013年7月10日発表、安室奈美恵の通算11作目のアルバム「FEEL」。
このアルバムに収録された「Rainbow」の歌詞について解説いたします。
いつものように英詩がいっぱいありますので和訳したものを添えましょう。
このアルバム「FEEL」からavex内の新たなレーベル「Dimension Point」へ移籍した安室奈美恵。
2013年の作品ですが今でも色褪せないサウンド・プロダクションが見事です。
完璧なエレクトロニック・ミュージックでかっこいい楽曲ですが、歌詞の主人公の姿も潔いもの。
制作陣は主人公の生き方に新しい女性像を求め、安室奈美恵がその要望に応えた形になります。
旧い愛の乗り越え方に悩んでいる女性に贈られた楽曲です。
提示された新しい女性の生き方に共感が得られるでしょう。
それでは実際の歌詞を見ていきます。
昨日の想い出に別れを告げる
旧い恋は一晩で色褪せる
Pictures in boxes
Your t-shirts, I threw them out
昨日に just saying good bye
Maybe someday 胸の痛みも go away
だから I will be all right
出典: Rainbow/作詞:Lukas Nathanson Scott Effman Lauren Dyson TIGER 作曲:Lukas Nathanson Scott Effman Lauren Dyson TIGER
独特な緊張感のある歌い出しです。
「それぞれ箱に収めた写真たちも
あなたが着ていたTシャツも、私は放って捨てるわ
昨日にさよならを告げたばかり
いつの日にか胸の痛みも消えてゆくの
だから私はきっと大丈夫」
昨晩に別れ話があったばかりなのでしょう。
一晩を経ただけで旧い恋は色褪せてしまうのかもしれません。
別れ話を引き摺ってしまう人もいれば、この主人公のようにすべて忘れてさっぱりできる人もいます。
恋愛に関しては正解というものがありません。
どのように旧い恋と決着をつけるかも人それぞれでしょう。
しかし安室奈美恵がこのようにかっこよく歌い切ると話が変わってくるのです。
この主人公のようにさっぱりしたやり方で別れを告げるのが正解のように感じます。
彼女の影響力やカリスマ性に改めて気がつく一瞬です。
強がるのではない、強い女性
「Pictures」「boxes」「t-shirts」
それぞれの単語が複数形である点にふたりの関係の歴史を感じます。
そうした長い期間の恋愛であっても、終わってしまった途端に古着のようにみすぼらしく思えるのかも。
放って捨てるのは写真やシャツだけではありません。
印画して染み付いたりした様々な想い出までも同時に捨て去ってしまうのです。
いつまでも過去にしがみついてはいたくないという女性像は懐かしい時代の歌謡曲などとは違います。
安室奈美恵が切り拓いてきた新しい時代の女性像が歌詞に投影されているのです。
強がる必要もないくらいに強い女性の姿が描かれていきます。
リスナーが安室奈美恵に追い求めてきた凛とした姿そのままの女性像です。
ドライブのスピード
あらゆる未練を過去へ置き去る
I drove away from the parking lot
飛ばす freeway no rewind
思い出はもう left behind
出典: Rainbow/作詞:Lukas Nathanson Scott Effman Lauren Dyson TIGER 作曲:Lukas Nathanson Scott Effman Lauren Dyson TIGER
エレクトロニック・サウンドが全開で展開されます。
安室奈美恵のボーカルもビートを刻むような歌い方になるのです。
歌詞を和訳しながら見ていきましょう。
「私は駐車場から車を走らせたわ
高速道路を飛ばす 後ろには戻れない
思い出はもう 片隅に置いてゆくの」
ドライブするスピードに呼応するようなビートが気持ちいいでしょう。
歌詞も昨日の想い出に急いで別れを告げるようにクルマを走らせます。
音楽のようには巻き戻しができないのが本当の人生です。
過ぎ越した時代は過去に置いていきます。
もう既に彼の姿が見えなくなっているかのように恋人の存在感が希薄になっている点に注目してください。
別れの理由や彼の人物像などがまるまる歌詞に描かれていません。
とにかく未来志向で前へ進んでゆく女性の姿だけが強調されます。
想い出を捨て去ることは歌詞で歌われるほど簡単なことではありません。
記憶の総体がその人の総決算でもあるはずです。
しかし、この曲「Rainbow」はあらゆる後ろ向きの思考や未練を斥けます。
エレクトロニック・ミュージックの機械的なビートがそうした歌詞をサウンドで裏付けするのです。
大いなる自然の営み
Wind blowing me through the window
Sun shining through all the rain clouds
I guess it's the way that it goes
出典: Rainbow/作詞:Lukas Nathanson Scott Effman Lauren Dyson TIGER 作曲:Lukas Nathanson Scott Effman Lauren Dyson TIGER