Aメロは2拍4拍のスタンダードなビートで進みますが、Bメロはキメの多いフレーズです。

ボーカルの合間に入るトリッキーなリズムギターが印象的なパートです。

イントロもそうですが、不協和音の使い方が絶妙ですね。

この辺りはハチ米津玄師)のギタープレイに影響を受けているような印象を受けます。

苦しいけど強がってしまう

心の(こころん)レシピは かまちょ味(み) 寂(じゃく)ジャンキー
だんだん強がって ドロドロに伏す
ドクドク呑み込んで 苦しんで泣いて吐き出せないの ベノベノム
さよなラ

出典: ベノム/作詞:かいりきベア 作曲:かいりきベア

ここでは自分の心の中身を「レシピ」と例えています。

「かまちょ」は主にSNSで使われる言葉で「構ってちょうだい」の略です。

「ジャンキー」は薬物依存者を指す言葉ですが、「何かに夢中になる人」としても使います。

つまり心の中では「構ってほしい」と思う一方、寂しさにも夢中で酔っているのでしょう。

孤独と強がりがブレンドされ、自分の中に毒が生成されていくわけです。

そうして主人公は混沌とした感情の中、突っ伏して外界をシャットダウンします。

正直に言えば、主人公もその毒から抜け出したいと思っているのです。

しかし毒はそう簡単に吐き出せません。

さて、ここも全体的に言葉遊びが豊富なパートですね。

「ドクドク」はもちろん「毒」と掛かっています。

そんな混沌とした頭の中、さよならの言葉もとち狂ってひらがなとカタカナが混じります。

ちなみに、venomには「悪意」や「蔑視」という意味もあります。

周囲への悪意や周囲からの蔑視も主人公は飲み込んでしまったのかもしれません。

1番 サビ

転調してテンションアップ!

かいりきベアfeat.flower【ベノム】歌詞の意味を徹底解説!主人公はどんな毒を抱えている?の画像

サビではキーがE♭mからFmに一音上がり、一気に曲のテンションが変わります。

メロディも非常にキャッチーで分かりやすく、サビ前の静から一気に動へと移るのです。

歌詞もメロとは違い、どちらかというと語呂を意識したようなものになっています。

主人公はみんなに気づいてほしくて……

あらま
求愛性 孤独 ドク 流るルル 愛をもっと頂戴な ねえ 痛い痛いのとんでけ
存在感 血ドクドク 零るルル 無いの?もっと愛 愛 哀 哀
叫ベベベノム めっ!

出典: ベノム/作詞:かいりきベア 作曲:かいりきベア

サビはかなり押韻と言葉遊びに特化した歌詞です。

「孤独」と「毒」、「血がドクドク」と「毒」など、やはりここでも全面的に毒を押し出します。

「愛をもっと」と「無いの?もっと」など、韻の踏み方にも注目です。

カラオケで歌う時などは押韻を意識するとメリハリが出るかもしれません。

さて、内容ですが、まず「求愛性孤独」という言葉が出てきます。

これは先ほど出てきた「構ってほしい」と「孤独がいい」の混ざったものでしょう。

それが体内をドクドク流れている、と取ると話がつながります。

周囲に愛を求めれば求めるほど、主人公の心の中では葛藤が起こって痛みが増します。

そしてその結果、主人公は痛みを自分の体から解放するためにある行動に出ます。

MVに描かれた女の子は、左手に包帯をしていますね。

そしてその横にはカッターナイフ。

心の痛みを解放するため、そして自分の存在を周囲に気づかせるため、主人公は自分を傷つけます。

ドクドクは血が流れる様子を表しています。

同時に、「自分は血さえも毒されていて、それが毒抜きになる」という歪んだカタルシスなのでしょう。

そしてさらに「愛」と「哀れみ」を求めてその行為を繰り返すわけです。

最後の「めっ!」は可愛いと評判ですが、そんな自分を叱る意味で言っているのかもしれません。

ちなみにMVでは、「めっ!」の部分だけキャラクターの顔が動きます。

「気づいてなかった」という人は注目してみてください。

2番 Aメロ Bメロ

最高点ゼロだ 僕らの人生
断然テンションLOWだ 屈めよ屈め
ロンリーNIGHT テッペン回って 狼狽ない脳内HOPE
もう一回オーバードーズ刑だ アガれよアガれ

心の(こころん)中身は 無理オブ無理ジャンキー
どんどん強がって バラバラに伏す
ドクドク呑み込んで 苦しんで泣いて逃げ出せないの ベノベノム

出典: ベノム/作詞:かいりきベア 作曲:かいりきベア

いつも沈みっぱなしの人生だから、最高点はゼロということでしょう。

「テッペン」は24時のことです。

一人で夜を過ごすうち、気が付いたら日付が変わっているわけです。

「狼狽」は「うろたえること」です。

脳内の「HOPE(希望)」が狼狽しない……つまり主人公は少し前向きな気持ちになっていたのかもしれません。

しかし主人公の心がそれを許しません。

オーバードーズというのは、体に害が出るほど薬物を過剰に摂取してしまうことです。

また「求愛性孤独」の毒に入り浸り、前向きな気持ちを消し去ろうというのでしょうか。

一方、ここはストレートに違法薬物を連想することも出来ます。

MVでは注射器や右手のガーゼがそれを連想させます。

ただし次のBメロでは「心の中身がジャンキーだ」とあります。

やはり違法薬物というよりは、孤独に酔うことがやめられないのでしょう。

2番 サビ~ラスト

哀ではなく愛が欲しい

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